獣がいる
そんな本なので、結構記述はストイックだったりする。特に山経の方は本当に淡々と、そっけないくらいに簡潔である。
獣がいる、その状(かたち)は禺(さる)の如くで四つの耳、その名は長石、その声は人がうめくよう。
とか
獣がいる、その状は虎の如くで牛の尾、その声は犬がほえるよう。その名はテイ、これは人を食う。
とか、こんな感じで次々と妖しげな生き物が紹介されて行く。普通、怪獣とか妖怪とかって、なにがしかの物語がついていそうなものだけど(そして海経の方には、いくつかそういう物語も語られているのだけど)、そういうものは一切無しでただ単に、「これは人を食う」とあたかも当たり前の事実のように書いてくれる。この語り口には不思議な説得力がある。
そして、そんな記述に混じって、
鳥がいる、その状は鴞(ふくろう)の如く、青い羽、赤いくちさき、人の舌、よくしゃべる
なんて書かれているから、どんな生き物かと身構えてみれば、鸚鵡(オウム)だったりする。そういや、アニメ版の十二国記に出てたなぁ。
獣がいる~、の文章はすっかり気に入ってしまったので、遊んでみたくなるな。
獣がいる、その状、鹿の身(からだ)に馬の首、人面。よく人語をしゃべるが、解さない。その名を……。
なんてね。
その耳は宙から来たる周波数3000ギガヘルツ以下の電磁波を聞く
2008.04.19 (Sat) | 碧猫 #fYTKg7yE | URL | Edit