なになになに?
もしかして「ジャンル:剣道」な小説にハズレはないの?……と思ってしまうわ。
最近読んだそれらのなかにはホント、ハズレ無しですもん。
ちうわけで、今作もアタリ!なのでした。
『ジェネラル・ルージュの凱旋』では救急センター長として辣腕を振るっていた速水の学生時代のお話。
それも医学に没頭していたのではなく、学生剣道に熱中していたというのですから。
あの速水が!ですよ?(笑)
意外と言えば意外でもありましたけれど、責任感に厚いところとか、それでその責任に押しつぶされそうになるところとか、のちの速水へと通じていくモノはありましたね。
もちろん剣道ばかりではなく高階や渡海とはじめとする先達の教えを受けていくなかで、医学に対するスタンスも形成されていったんだなぁ……と感じられたりして。
医療のジャンルではまったくないのですけれど、きちんとその後のお話に繋がっているという。
ああ、それと今作では速水のほかにもうひとりの視点を立ててダブル主人公としているのですけれど、そのもう一方の主人公が『ジーン・ワルツ』に登場した清川吾郎なんですよね!
てことはのちに曾根崎理恵さんと、ごにょごにょ……なわけで!
うーん……。
清川は意外とモテるタイプなんでしょうか?
でも当人がそれを気付かないで居るから、チャンスを棒に振っているタイプなのかもしれません。
今作でも女子剣道部の責任者である塚本さんとか、剣の才能に惚れ込んだ朝比奈さんとか、清川のことを気にしていたんじゃないかなーって思うんですけれど。
でも清川は「面倒な剣道部を率いることになった」戦友としか塚本を見ていなかったようですし、朝比奈に対しては同門の兄弟弟子という親しさでしかなかったように見えて……。
あのふたり、同じ剣の道を往く友人への信頼以上の気持ちがあったと思うー。
そんなふたりの視点を交錯して描いているうえに、さらには今作中で2年の月日を描いているところがスゴイ!
そこまで複雑にしているのに内容から急いだ雰囲気がまったく感じられなかったのデスヨ。
速水と清川が互いをライバルと認め、それぞれの剣道部を率いて戦った1年。
そこから教訓として得た自分に足りないモノを補うべく切磋琢磨し、再び互いの前に立ちはだかった2年目。
クライマックスでの興奮は、再び相見舞えるというカタチでこそのモノだな~と。
1度きりの勝負で終わらせないというのは、なかなか物語で描けるものではないですよ。
それも間延びした感も、冗長である感も無いような筆致で!というのは、やはり海堂センセのセンスなのかなー。
もちろん、ご自身も学生剣道をやられていたということもあるでしょうけれど(^_^;)。
1年目の勝負はなるべくしてなったなー、というカンジがあって予想もできましたけれど、2年目はどう決着するのかまったく読めませんでした。
速水と清川、どちらが勝っても納得できる展開だったので。
それだけふたりの努力と成長がすさまじかった~。
あ、でも速水が壁を越えるために行ったことを読んで『六三四の剣』を思い出したわたしは古い人間(笑)。
……火の位である上段を構えるのは速水も六三四も同じか。
やぱし剣道少年にとっては少なからず影響があるのでしょうか(^_^;)。
一連のシリーズとしてはもちろん、競い合うライバルを描いた青春剣道小説としても面白い作品でした。