どこにあるか定かではない『楽園』を目指す忌み子たちと、彼らを「悪魔」と呼び追い立てる教会の尖兵である狩人のお話。
胸に迫るお話でしたなぁ……。
共同体からはじかれた存在が安住の地を探し求めるロードムービー。
しかも居場所を探して旅をするだけならまだ救いがあるのに、彼らを共同体から追い出しておきながら利用しようとする輩がいるというトコロがキツイ皮肉で。
わたしたち人間はさー、自分たちがどこにもいけない閉塞感を、そうした突出した存在を攻撃することで心の平衡を保とうとするのですよね。
あいつらはわたしたちとは違う。
違うということはわたしたちを脅かすモノだ。
だからあいつらはわたしたちと一緒に生きていてはいけない。
わたしたちがあいつらを罰するのは当然のことなんだ。
仕方がないことなんだ。
許されないほどの弱さなんて無いとは思いますけれど、弱さを理由に権利を正当化することは醜いことだと思います。
そんな弱くて醜い人間たちに追い立てられ「楽園」を探し求める悪魔――人間より特別なことができるだけの存在、のハルカとユキジ。
世界に何年ものあいだ雪が降り続けるということまでも自分たち悪魔のせいにされ狩り続けられ、それから逃げ続けていく幼いふたりの姿が痛々しくって、もうねもうね……(T△T)。
作品外から見てみると、これがただの旅であったりしたらそれほど思いこみも無かったのかなー、とか思います。
この逃亡と願いの旅が、雪に閉ざされた世界で進んでいくということが鮮烈な印象を残しているのではないかと。
降り続く雪は人々から希望を奪っていき、温かい心を凍てつかせる。
愚かで醜い人々の心と、残酷なまでの雪の真白さが、強いコントラストを残すのです。
カバー&本文デザインの百足屋ユウコさんがまたイイ仕事をしてくれているんですよね~。
章タイトルのページでの挿絵の見せ方に気付いたときはゾワワッとキましたよ!
まさにこの作品ならではのデザインです。
ハルカとユキジの旅を暗示しているデザイン。
本編をきちんと理解していないと、こうはデザインできないと思いました。
スゴイ。
著者の張間センセは今作を執筆されたときは17歳とのことですけれど、次回作が楽しみ&勝負ですね。
いままで温めていた今作で受賞を果たして、さあ次の引き出しを見せてもらいましょう!という。
ただ、今作で感じられたセンスはとても惹かれるモノがありましたので、次回作を期待していようかと思います。