「ユート…、ユーリ…、ユーゴ…」
「私にも、あなたたちが見えるわ」
――四人の真実…!?
遊矢の記憶に触れ、真実を知り、彼らのもとに駆け付けた柚子。
「きっと、この空間のせいだね」
「遊矢…。あなたたち四人は本当の兄弟だった…」
「ああ…。あの日、ワールドイリュージョンが起きるまではね」
その遊矢の言葉を、無言で聞くEVE。
「ワールド…イリュージョン」
「あれは運命の日だった」
そして、遊矢はその日のことを語りだす。
――あの日の榊邸。
「これは…! ついにこの時が来たのか!」
突然の機器の反応に焦りを見せる遊勝。
そしてそれとは別に。
「フフフ。ウハハハッ! ついにできましたよ!」
「ムフフフ。フハハハッ! ついに完成したぞ!」
高笑いをしながら、花束の完成を喜ぶユーリ。
そして同じく弁当の完成を喜ぶユート。
「ムッ…」
「なんだそれは?」
と、お互い、花束と弁当に視線を向けた二人。
「決まっているでしょう。遊矢に送る花束ですよ。君こそなんですか、それは?」
「見ればわかるだろう。これは遊矢の大好物が詰まったBENTOだ!」
「そんなもので遊矢の気を引く気ですか?」
「お前こそ、そんな女子力を発揮して遊矢の気を引くつもりか?」
と、お互いにバチバチと火花を散らせる二人。
「僕はただ今日という日を遊矢と祝いたいだけです」
「それは私も同じだ。何しろ今日は遊矢の――…」
「「誕生日!!」」
というわけで、二人とも手作りでプレゼントを用意していたと。
「普通、今日のような日は弁当じゃなくケーキでしょう! 何を考えているんです!」
「ケーキなどRD観戦に持っていけるか! そっちこそ、そんなドでかい花束目立ってしょうがないだろ。恥ずかしくないのか!」
と、お互いのプレゼントに文句の言い合い。
「これで遊矢に非飛び地の注目が集まり多くのひとからも祝福を受ける! それが僕のプランです!」
と、二人で言い合いをしていると、時刻は既に11時。
ということで、焦りだす二人。
というのも。
「ユーゴは優勝カップをプレゼントすると言っていたからな! 早くしないとRDが終わってしまう!!」
「ユーゴより先にプレゼントを渡すのです!」
ということで、急ぎ家を出る二人。
一方、サーキットでRD中のユーゴ。
そしてそれを応援する遊矢。
「待ってろよ遊矢! 今日の優勝カップをお前の誕生日プレゼントにしてやるぜ!」
そう意気込むユーゴ。
そして、サーキットに急ぎ向かうユートとユーリ。
「全く! こんな時に父さんがいないとは!」
「父さんはどうしても外せない研究があるって地下の研究室に籠ったままだ」
遊勝の行動に嘆息するユーリ。
「今日という日くらい休めばいいものを…」
そんなことを言いながら、先を急いでいた二人。
だが、地鳴りのような音が聞こえてきて、その足を止めることに。
そしてその地鳴りは、RD中のユーリも襲う。
ユート達の感じたもの以上。
「何!!?」
それと同時に地割も起こる。
突然起こった大地震に悲鳴を上げ、逃げ惑う観客たち。
そして地割れの影響で、クラッシュしたユーゴ。
それに気づいた遊矢は慌てて、彼の元へ。
「ユーゴ! 大丈夫か!?」
「てて。俺は大丈夫だ…。だけど、この揺れは何だ?」
「また続いてる! これじゃRDは中止だ!! オレたちも避難しよう!」
そしてゲートまで来たユートとユーリ。
「こんなに長く続く揺れなんて初めてだ」
「一体何が起きているというのでしょう? ただの地震じゃないのかもしれませんね」
と、そんなことを言っていると、遊勝からの電話が。
『ユート、ユーリ、よく聞け。今から世界に大変なことが起きる! G・O・Dのカードが暴走した!』
「G・O・D…」
「確か新たな次元に繋がったワームホールから発見されたカードでしたね!」
『そうだ。そのカードを赤馬博士が群の施設に持ち出し実験を行っていた』
軍研究所。
零王に実験の中止を訴える遊勝。
「遊勝…、このカードのエネルギーをソリッド・ヴィジョンに使えば、どんなものでも作り出すことが可能になる」
そう言って、遊勝の訴えを聞こうとしない零王。
「このカードの正体はわかっていないんだぞ!」
「! これは私の研究なのだ! 君にはわかるまい…。結局世間は、ソリッド・ヴィジョンを作ったのは君だと思っている!!」
「零王…。あれは君の助けがなければできなかった」
「『助け』…。それだよ…。それだけでは不十分なのだ!! 私は研究者として自分だけの功績を残したい! それがこのG・O・Dの研究だ! 遊勝! 君は自分の功績が抜かれるのが怖いんじゃないのか!」
「零王…」
零王がG・O・Dの力に取り憑かれていると確信することになった遊勝は強硬策に。
『さっきG・O・Dのカードを軍の研究所からここに運んだ。このままでは膨大なエネルギーが放出され、恐らくこの世界は滅びる…』
((世界が…滅びる…!))
『それを食い止めるには、ワールドイリュージョンしかない…』
((ワールドイリュージョン!?))
『一世一大の大マジックだ! それで暴走するエネルギーを変換できれば…! 庭の研究室入口に緊急用ポッドがある。お前たちはそれを使って地下へ降りるんだ! 何としても!!』
その言葉を残して遊勝からの電話は途切れる。
と、そこで遊矢とユーゴが、二人を発見して合流。
そして四人で、遊勝の研究室に向かうことに。
ビルの倒壊も始まり、研究室へ急ぎ向かう四人。
しかし、倒れたビルの一部が頭上に落ちてくる。
これから三人を庇うために、遊矢が三人を押す。
遊矢自身も無事だったものの、その衝撃で気を失ってしまう。
その遊矢をユーゴが背負って運び、研究室の緊急用ポッドの所へ。
しかし、そこにたどり着くと、建物が倒壊した影響で緊急用ポッドが壊れていて、残っているのは一つのみ。
「父さんの元に行けるのは、一人だけか…。
さてさて」
「誰が行きますか?」
「そんなの決まってるだろ!」
三人の意見は確認するまでもなく一致。
気を失った遊矢をポッドに入れ、遊矢を研究室へ送る。
そして残った三人。
「みんな食え。遊矢に渡し損ねた」
世界崩壊を前に、弁当を差し出すユート。
「こんな時にか?」
「こんな時だからこそさ」
「最後の晩餐というわけですね」
「ああ」
「うまい」
「絶品ですね」
「そうか、よかった」
「世界が滅びるときに、こんなうまいもん食えるなんてな」
「ユートは将来立派な主夫になれたでしょうね」
「もう叶わないことさ」
明るく振る舞うが、会話の内容は諦念のこもったものに。
「…美しいんだな、世界の終わりって…」
「ならばもっと美しくしましょう。私も渡し損ねてしまいました」
そうして、ユーリは、花束のバラを三等分し、渡す。
そして、そのバラを放り投げる。
「誕生日おめでとう!」
「必ず生き残るのですよ!」
「遊矢!!」
そして三人は、遊勝が引き起こした、ワールドイリュージョンに巻き込まれた。
その際に、次元の狭間に放り出され。
詳細が分からぬまま、遊矢の中に宿った。
「時空を飛び越え記憶が混沌とした遊矢は我々の記憶を失っていた。我々は話し合い」
「遊矢の記憶を戻さないように決めました」
「俺たちはすでに消えた存在。それを思い出しても遊矢が悲しむだけだからな…」
柚子への説明に、そう締めくくった三人。
「だから遊矢は自分が四重人格だって思い込んでたのね」
「ありがとう。遊斗…。遊里…。遊吾…」
遊矢の守り続けた兄たちの思い…というところで次回につづく。
はい、というわけで、デュエルなし。
ですが、僕が気になっていた部分が語られましたので、非常に楽しめました。
うん、まぁ、ですが、何というか……。
もう少し捻って欲しかったかなぁ。
いや、序盤で、この話が明かされていたんでしたら、全然納得できたのですが。
ここまで引っ張ってでしたので。
もう一つ二つ捻りが欲しかった。
結局、原因はすべてワールドイリュージョンに起因するわけですね。
まぁ、遊矢の語り始めに際に、EVEが意味深な視線を遊矢に向けていたのが、若干気にはなりますが……。
それにしても、分かっていはいましたが、この3人。
ホントに遊矢のことが大好きですね。
正直、度を過ぎた愛情は、何か理由があるのではと疑ってしまうのが、僕の性質なのですが。
この展開、そして尺のことも考えれば、四兄弟の話は掘り下げられても、もう僅かでしょうし、そういう何か裏がある的な話はないんだろうなぁと。
ただただ兄弟仲がいいというよりも、全員が遊矢ラブって感じですので、こう何かしら裏があって然るべきなんじゃと思えて仕方がない。
まぁ、前述しましたが、もうこの辺は掘り下げられないでしょうから、僕ももうこれ以上は触れないと思いますけど。
そしてしれっと語られた零王の暴走。
まぁ、零王の気持ちも分かるんですけどね。
そして地味に遊勝がわりと自由人なのも、零王のプライドを傷つける結果になったんじゃないですかね。
ある意味、相性が悪かったと。
「零王…。あれは君の助けがなければできなかった」
言い方は悪いんですが、明確に零王の方が下だと言われているようなものかもしれませんし。
もう、色々と割り切って、「ソリッド・ヴィジョンを完成させたのは君だ」くらい言えば、零王も満足したんですかね。
いや、でも、そういう言葉だけで満足できる精神状態ではないから、G・O・Dに取り憑かれ、暴走したのでしょうが……。
これ知ったら、零児の胃も痛くなりそうですが……。
確信はしていないでしょうが、色々と察してはいそうな気もします。