池のワンブレイクで迎えた第8ゲーム。
池のフットワークはA。
そしてバックハンドはB。
そのスピンからなら突破口はと、思考を巡らす難波江。
難波江はスライスの構え。
それを確認した池は、浮くと読んで、ネットに詰める。
そこで難波江は池が動いた途端に構えを変え、スピンをダウンザラインに。
完全に騙された池は、これに反応できず。
これで0-30。
次取れば難波江のブレイクポイント。
(先に攻めたい。・・・・でもそれができない時は――・・。この時、考えつく効果的な戦略で騙す、逃げる、守る、躱す・・・・)
池のワイドへのサーブをフォアのクロスでリターン。
それを池はやはりフォアのクロスに強打。
オープンコートをカバーしようとする難波江だが、池はここで更に鋭角気味のクロスに決め15-30。
(この規格外の攻撃力を、僕が上回れないことは問題じゃない・・・・。問題は、このテニスを戦略でどう凌ぐか)
(確かに『火』はチリチリとついてきてる・・・・。・・・・でもこれじゃ足りねえ)
難波江は再び池がフォアとバックの分岐点となるラインを狙って打つ。
が、ここは池やはり回り込んでのフォア。
(難波江は冷静を手に入れた暴君・・。火は消さないように耐えればデカくなる・・)
先ほどはミスしたフォアをしっかり修正。
だがその分、一時的に攻撃力を下げて、攻める機会をうかがっている。
それからのバックハンドのダウンザライン。
しかし、難波江はそれを読んでいる。
池のショットの前に動きだし、カウンターショット。
しかし、これはネットに当たり、大きく跳ね、自分のコートに戻ってきてしまう。
いい攻めだったものの、無理があった分、惜しくも実らず。
一方の池も今の攻撃は中途半端だったことを実感。
(いや、一瞬でも攻撃を緩めたら逃さない・・・・。この地味な重圧を掛け続けることが最大の守備)
(そう簡単に燃えさせちゃくんねえよな)
激しい主導権争いに、試合を観ていたエーちゃんを気持ちを昂らせるが、そろそろエーちゃんの試合の時間も攻める。
ということで、キリのいいところで、ウォームアップに行くことになる。
この第8ゲームはここまでと違う展開となる。
池はサーブなのに必死に耐える展開を強いられる。
それは難波江が次々繰り出す技があまりに多彩だったため。
それは難波江がこのゲームをブレイクするために120%の力をつぎ込んでいたからこそ。
それには流石の池も攻めあぐねることになる。
サーブの優位が池から何度も難波江に行きかかる。
それでも池はその優位を完全に手渡しはしない。
デュースが4度繰り返され、最後は池がサービスエースを決め、キープ。
これで5-3となる。
ロニーコーチはブレイクされそうになってちゃダメだというが、これは池のサーブ強化の成果。
そして、このセット難波江にとっては後がない第9ゲーム。
ここは難波江が優勢を保ったまま、危なげなくキープ。
と、ここでエーちゃんはタイムアップ。
自分の試合のためのウォームアップのため、席を立つ。
そして通路に出た途端に、コート内に響き渡る大歓声。
第10ゲーム、何が起きた――というところで次回<#362 着火>につづく。
難波江は何だかんだ言って、しっかり食いついていますよね。
ブレイクされて流れは完全に池に持っていかれたかと思いましたが、第8ゲームでデュースを繰り返し、第9ゲームもしっかりキープ。
自力では届かない分を工夫しながらのポイント。
何だかんだ言って、こういう戦い方は嫌いじゃない。
というか、普通に大好きなので、難波江には更に頑張って欲しいのですが……。
次回サブタイが着火。
完全に池の展開になりそうですよね……。