王との激戦を終えたエーちゃん。
青井コーチのマッサージを受けて、リフレッシュ。
疲労があったものの、明日は試合がなく、ここで今日明日と適度に身体を動かせばほぼ完璧な状態に戻る。

そんなエーちゃんの元に、なっちゃんが慌てた様子で駆け付ける。
というのも、次のエーちゃんの試合相手が決まる試合で波乱が起きているため。

対戦カードは第4シードのアレクサンドル・キリレンコ(21)・世界ランキング137位。
一方は磯部駿助(24)・世界ランキング811位。
ここでリードしているのは、磯部さんの方。
うまくキリレンコの力を利用したショットでさらにリードを広げる。
既に試合は第2セット。
第1セットを6-4で取り、第2セットも5-2とリードする磯部さん。
さすがにこの展開はエーちゃんも予想外。
磯部選手はノーマークだったと、ここからでも情報収集に努める。
しかし、この試合攻めているのも、力があるのも、ペースを作っているのもキリレンコの方。
磯部はただ必死に耐えているだけ。
だが、キリレンコの勝負に出たダウンザラインは惜しくもアウトとなり、声を荒げることに。
この試合の一部始終を見ていたなっちゃん。
「さっきから見てたんだけどさ・・・・、キリレンコさんのリズムに磯部さんが合っちゃってる感じなんだよね」
と。
そうやって改めて見てみると、磯部さんは苦しみながらもリズムにノッっている感がある。
だとすれば、キリレンコにとっては非常に相性の悪い相手ということになる。
ここでさらに勝負にでるキリレンコは、ドロップ。
しかし、これは届かずに、ネットにひっかかる。
自らリズムを乱しての自滅。
これで磯部さんが勝利。
苦しんだ内容ながらも結果は完勝。
エーちゃんはテニスの怖さを改めて実感しながらも、次の試合、磯部さんのリズムに注意することを意識。
と、そんな中、隣のコートで岡田に対する声援がエーちゃんの耳に届く。
そこで、その試合のスコアを見ると、世界254位の南さん相手に、最終セットまでの連れ込む大接戦をする岡田の姿が。

南さんの果敢なフォアにも下がらず、ライジングで攻める岡田。
これは今のエーちゃんのスタイルに通ずるものがある。
ただでさえハイリスクなテニスにもかかわらず、岡田はフラットしか使わない。
だが、岡田の打点への入り方はエーちゃんより全然スムーズ。
これは今までの鍛錬の賜物ということもあるが、具体的には何が違うのかをエーちゃんは考えることに。
岡田は善戦するも、2-6、7-6、7-5で初戦敗退。
すると、コートから出る岡田を待っていたエーちゃん。
「岡田くん、お疲れさま! 惜しかったね」
「あ゛・・・・? 丸尾・・? 何の用だよ・・。1回勝って上から目線か?」
負けたこともあり、不機嫌な岡田。
だが、そんなことはお構いなしに、積極的に岡田のプレーについて聞きたいということをアプローチ。
そんなエーちゃんに根負けした岡田はシャワーを浴びて着替えた後ならと折れることに。
というわけで、場所を変えて改めて岡田のプレー――ライジングの時の打点への入り方を聞くエーちゃん。
急加速して急減速してタイミングよくと意識しているが、岡田ほどスムーズにはいかない。
だから何か意識していることがあるのかということを聞く。
もしも秘密ならと構わないと前置きするエーちゃん。
だが、岡田はエーちゃんに感謝していると小さく呟く。
岡田の『打点への入り方』というのはエーちゃんに負けた後から意識し始めたこと。
岡田の意識し始めたこと。
「教えてもいいけど、誰にも言うなよ?」
そう前置きする岡田。
何か秘密が――とエーちゃんも気持ちを引き締める。
しかし、岡田が口を濁すのは、単に恥ずかしいから。
『恥ずかしい打点への入り方』ということに疑問符を浮かべるエーちゃん。
絶対に笑うなとさらに前置きをする岡田。
しかし、語られた内容は聞き取るのが不可能な、ボソっと呟いたもの。
聞き直されて、改めて語る岡田。
「サ・・サンバの・・・・リズムだよ」
完全に意表を突かれたエーちゃん。

サンバ――あのブラジルのカーニバルとかのサンバかと改めて確認することに。
「サンバってのはいろんな音楽の中でも超ハイテンポの16ビートなんだよ・・・・。フラットしか使わずどんどん攻める俺の攻撃には、そのリズムと波長がバッチリ合うんだ! ・・・・だから俺はここぞという時には、あのリズムを刻んで戦っている・・・・」
リズムと言えば、先ほどの磯部さんはリズムで大物を倒した。
リズムの大切さを改めて実感するエーちゃん。
「なるほど・・・・。思いたることはあるよ・・・・。じゃあ岡田くんはリズム感がいいんだね・・・・。試合中にあんな激しい音楽のリズムに合わせて動けるなんて」
「いや・・実は俺はリズム感がないから、これを習得するのにかなり苦労したんだ・・・・。でも普通にリズム感のある奴なら、これはすぐにでも役に立つ話だと思うぜ・・・・」
「じゃあ岡田くんはどうやってサンバのリズムを習得したの?」
「習ったんだよ・・・・。近所のおばさんと教室に通ったりしてな」
「そ・・・・そうなんだ」
「おい、笑ってねぇか?」

岡田の予想外の告白に、笑いをこらえるために必死なエーちゃん。
磯部さんの試合、そして岡田の話を聞いて、アップテンポなリズムに合わせて動きを意識するのはいいかもと考えるエーちゃん。
そもそも打点を合わせるのにリズムは大切。
しかし、エーちゃんの場合はチェンジオブペースを主体とするため、リズムの変えなければならない。
そうなればサンバだけでなく、他にも色々なリズムのテンポが必要となってくる。
王との試合でも前後に振られて苦しい時があったが、自分から無理に前後にアップテンポに動いて状況がよくなった。
あの時も何かしら状況に合ったリズムが意識できたらと。
「ありがとう、岡田くん! すごく参考になったよ!」
「そ・・・・そうか?」

「じゃあ、また何かあったら・・・・、一緒に練習とかもできたらいいよね・・・・。そうだ・・・・。よかったら連絡先教えてよ!」
「(友達かよ)・・・・まぁ、いいけど・・・・」
「ありがとう!」
岡田の話を聞け、満足したエーちゃん。
エーちゃんのことを待っていたなっちゃんと合流。
岡田の話を簡単に、リズム感が試合に使えるって話だったと説明。
と、そこでなっちゃんが思いつく。
「エーちゃん明日少しは汗流した方がいいんでしょ?」
「うん」

「私も明日は練習、午前中だけだから・・・・。じゃあ一緒にリズムの練習やってみる?」
というわけで、なっちゃんのアイディアで一緒に練習――というところで<#411 リズムの練習?>につづく。
なんのリズムを――。
…………いえ、なんでもないです。
王の激戦を終えたエーちゃん。
その次の対戦相手を決める試合に波乱が。
ノーマークの磯部さんがシード選手相手に起こしたジャイアントキリング。
また一方で岡田が南さん相手に善戦。
そして実際に岡田に直接聞くことで、リズムの大切さを実感。
なっちゃんとリズムの練習へ。
ってな話ですが、色々と岡田のエピソードが強烈過ぎて、磯部さんの印象が吹き飛ぶ。
たぶん、こういう地味な面白エピソードをさせたら岡田の独壇場なんじゃないかと思います。
いや、何かキャラ的にね。
ですが、教立代表? になっただけあって、緒方にも勝てたりしたのでしょうか?
気になるところです。
が、そしてそれら全てを吹き飛ばす、なっちゃんとのリズムの練習予告。
来週が楽しみです。
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