全英、池の試合を終えて。
「マックスは前半我慢して池がギアを上げてくるのに合わせて、仕掛けてきましたね」
「池がノッてしまうと手が付けられないことをわかった上で、勝負所を見極めてたんだろう。思惑通りだったろうが、それでも池の潜在能力には驚いていたよな」
「確かに、マックスは池の爆発力を警戒して、何度も守備位置を下げてましたからね」
門馬さんと前多監督は池とレヴィーの試合の感想を交換。
そして一緒に観戦していたエーちゃんにも、話を振るが。
「え・・あっ、ハイ! すごかったです・・!」
「結果、池くんはストレート負けでしたけど・・・・。同い年の日本人がこの舞台で堂々と戦ってる・・・・。それを目の前で見たら・・、今まで想像もできなかった、テニス界の頂上が今日いきなりリアルになりました。
実は僕・・・・、池くんのプロ初戦を観てプロになろうと思ったんです・・・・。それでプロになって・・・・、この試合を観れて、本当によかったと思います」
そういうエーちゃんの表情はスッキリしていて、明らかにスイッチが入った状態。
前多監督は池のプレーの影響力は大きいと。
エーちゃんの様なこの試合を観た若手選手が世界を目指し、それを見て子供たちがラケットを握る。
そうやって日本のテニスは強くなっていく。
「次は君が日本のテニスを強くする番だぞ」
そんなことがありつつ、今度はタクマさんの試合へ。
タクマさんの試合は12コート。
相手はドイツの18シード、バステル・ミュラー。
試合前にはタクマさんの両輪が来て、前多監督に挨拶をしたりと。
そしてエーちゃんも自分の両親のことを思い出し、改めてタクマさんに心の中で声援を送る。
そして試合はタクマさんのサーブから。
強烈なサーブが入るものの、ラリー戦から最後はバックハンドのダウンザラインを決められ、ファーストポイントはミュラー。
それでも第1セットはキープ合戦が続き、タイブレイクに突入。
3度のセットポイントを迎えたものの、ものにできなかったタクマさん。
逆に握られた唯一のセットポイント奪われ、セットを落としてしまう。
そして第2セットからはミュラーがタクマさんの攻撃を封じにかかる。
堅実なリターンと攻撃的なパスにタクマさんは、さらにハイリスクな戦いを強いられ。
結果タクマさんの初めてのGS本選は、7-6、6-3、6-4のストレートでの初戦敗退となった。
そしてその数分後、河野さんも敗退。
初の初戦突破はならず。
結局、この日試合がなかった門馬さんを除き、全員が初戦敗退。
河野さんは自分たち若手もそろそろ上位に絡まなければいけないが、GSのトップ30は怪物ばかりだと。
そんな中、ある一報が会場内を駆け巡る。
それはジェームス・ファウラーが14シードの選手を破ったというもの。
ファウラー、それはオーストラリアの18歳。
今、池と並び称される世界40位台の期待の新鋭。
今大会までは池の方がランキングが上だったが、これで逆転されることとなる。
と、そこに当のファウラーが試合を終え、出てくる。
ちょうどエーちゃん達とすれ違う時に、子供が転んで、手に持っていたジャンボボールが転がってファウラーの足に当たってしまう。
振り返ったファウラー、その鋭い視線に、思わず泣き出してしまう少年。
だったが、ファウラーはそのジャンボボールを使って、リフティングを始める。
最後はヒールで上げた球をピタっと頭の上に乗せる所までやってのける。
それには泣いていて少年も、表情を輝かせる。
そしてその頭の上にのせた球を少年に返すと、それをたまたま目撃していたギャラリーがワッっと沸く。
ファウラーの動きには、エーちゃんも思わず感心。
(あの身体で・・・・。あの身のこなし・・・・。しかも観てる人を一瞬で惹きつけた・・・・)
そしてそれだけやると、笑顔で去っていくファウラー。
しかし、その笑顔は妙に引きつっていて、怖いものとなってしまうが。
そしてその日の夜は、例の和食店での浅野さん、河野さん、タクマさん、エーちゃんでの夕食
池と門馬さんも誘ったものの、断られた形。
池は試合に負けた日は誰とも会わない。
そういえばエーちゃんがフロリダで生活していた時にも感じたこと。
一方、門馬さんは家族と来ているため。
そういう意味では、タクマさんも両親が来ているが、折角ロンドンに来たから観光をすると2人で行動中。
そしてタクマさんは、明日両親と帰国。
そこでエーちゃんの行動は。
門馬さんの試合もあるため、もう一泊するという選択肢もあるが、色々と考えた末、エーちゃんもタクマさんと一緒に帰ることを選択。
「あまりにたくさんの刺激をもらったので・・・・。今すぐ自分でやりたいことがあり過ぎて・・・・」
「だから帰って・・・・次は出場選手として来ます」
タクマさんに次は本当に自力で来いと釘を刺されたりしつつ、エーちゃんはウィンブルドンに来た意味は本当に大きかったと実感。
初めてテニスの全体像が見えたと思えるほど。
そして帰国のために飛行機の中でも、早くコートに立ちたいと逸る気持ちは抑えられない。
そんなエーちゃんのノートには、世界のトップ10、レヴィーとサンチェスの優れたところ、そこへの対抗策が。
照準が定まれば、やるべきことも自ずと決まる――というところで次回<#391 プラス30>につづく。
池に続き、タクマさん、河野さんと初戦突破できず。
タクマさんは最初のタイブレイクをものにしたら、流れが変わっていたんでしょうけど……。
河野さんの言うとおり、シードトップ30の実力は半端ないですね。
そんな中、いち早く結果を出したのが、オーストラリアのファウラー。
あのリフティングだけでも、運動能力の高さは伺えますが。
池を上回る(ランキング的に)かもしれない同世代。
うん、表情的なもので色々と残念な分、オモシロキャラっぽさが。
しかし、(来年は)出場選手として来ると宣言するエーちゃんですが、何気に大きいことを言っていますよね。
そして次号重大発表。
うん、これは疑うまでもなく、アニメ3期だと思います。
いよいよ全日本ジュニア編ですか。
楽しみです。