敗戦の――プロを諦める悔しさをノートにぶつけるあまり、なっちゃんからの電話に気づけなかったエーちゃん。
そして翌日、迎えた全日本ジュニアテニス大会最終日。
エーちゃんはなっちゃんに平謝り。
が、当のなっちゃんは、むしろエーちゃんのその様子にビックリ。
「昨日、電話出れなくて着信、気づいた時にはもうかなり遅くて・・。大事な試合の前に起こしちゃまずいと思って、かけ直さなかったんだけど・・・・」
とそのまま謝るエーちゃん。
そんなエーちゃんの様子に微苦笑くるなっちゃん。
「いいよいいよ全然! エーちゃんも疲れてたでしょ。そんなことより今日は残ってくれてありがとう。それが言いたかったんだ」
そんななっちゃんの言葉に照れるエーちゃん。
試合も観たいし応援もしたいから感謝されることではないと。
そんな中、不意に出た『一緒に試合に入れないのは残念』という言葉に、しゅんとしてしまうなっちゃん。
そのことに気づいたエーちゃんは、ここにいる方が気がまぎれると慌ててフォロー。
その一方で今の心中を吐露。
「正直、自分でも不思議なんだけど、思ったよりやり切ったって気持ちはあるんだ。ちゃんと覚悟して臨んだ試合だし、・・・・だから俺のことは心配しないで。今日は最初から最後まで応援してるからね!」
そう言ってなっちゃんを励ますと、アップの時間となり、青井コーチに呼ばれ、なっちゃんが去っていく。
「エーちゃん、見ててね!」
という言葉を残して。
また一方、母と一緒にストレッチ中の清水さん。
そんな清水さんに母は「今日はあなたが思うように戦いなさい」と。
それは清水さんが言う事を聞かないから出た言葉ではなく、なっちゃんがここ数か月で急成長しているのを見て。
だからこそ、コーチとしての母の言葉だけでなく、清水さん自身の発想にも頼らなくてはならないくらい厳しい試合になるだろうという予想から。
そしてこの試合が終わり次第、清水さんが世界で戦うためのベストのコーチを探し、母はコーチから外れ意志を伝える。
それを聞いて、思わず泣いてしまう清水さん。
「ちょ、ちょっとなに泣いてるのよ・・・・」
「ごめん・・・・だって・・・・ありがと・・・・お母さん・・・・」
「いいから・・・・。とにかく何でも自力でやりなさい。アンタはできるから」
「・・はい」
「心配しなくてもお母さんは近くにいるから」
「・・はい」
エーちゃんはトイレで難波江に遭遇。
「昨日・・・・。試合を観てる間丸尾くんと試合することばかり考えてたよ・・・・。僕なりの分析では神田の方に分があったのに・・・・。心のどこかで・・・・戦うのを楽しみにしてたみたいだ・・・・。だから今回は残念だったよ」
その言葉に胸を突かれるエーちゃん。
「ありがとう。俺もいつか難波江に勝ちたいって・・・・ずっと思ってたよ。今日はそっちの試合、観れないけど頑張ってね」
そしてエーちゃんの『思ってた』という過去形で語られた言葉に引っかかりを覚える難波江。
が、結局問い質せず。
エーちゃんが青井コーチと共になっちゃんの両親の待つ応援席にたどり着くと、時刻は10時となり、選手はコートに入り練習を開始して下さいというアナウンスが流れる。
なっちゃんは未だ清水さんには勝てていない。
今日勝てば公式戦初勝利となるのだが、エーちゃんは清水さんのテニスをちゃんと見たことがないと。
なっちゃん曰はく『スキがなくて完全無欠で何考えるかわからない』というのだが、前日の試合ではそんな様子ではなかった。
攻撃も守備も高い水準という意味では完全無欠に近い。
しかし、発想はいいけど実行に至らないストレスを抱えていることは一目瞭然でスキも見受けられた。
それがなっちゃんにとってプラスに働くかはわからないが、ずっと負け続けた清水さんでないのなら、チャンスはあるかもしれない。
「ナツはこの短期間で精神面が充実してきてるだけじゃなく、テニス自体も成長期にある。長身とパワーを活かしたスタイルに加えて、丸尾との練習で前後の動きを強化して、決定打を撃てるスペースが格段に広がってきた。戦力比較的にもそろそろチャンスだと思うんだが・・・・」
なっちゃんと清水さんの戦力を分析し、そう言う青井コーチ。
なっちゃん:攻撃力◎・守備力○・戦略○・ 精神力◎。
清水さん :攻撃力◎・守備力◎・戦略◎? 精神力○?
そしていよいよ始まる女子決勝戦。
なっちゃんのサーブでゲーム開始。
(・・・・アキちゃんに勝てないと思ってる自分に勝たなきゃ。それができれば、本当のアキちゃんにだって・・・・)
なっちゃんの強烈なサーブ。
(私が苦しい時は・・・・、いつもエーちゃんが助けてくれた。だから・・・・)
清水さんのリターンをストレートに。
そして前へ。
(エーちゃんのおかげで今、私が戦えてるって・・わかるだけのプレーを見せてあげたい!)
清水さんは前に出たなっちゃんの横を抜こうと、クロスへの際どいショット。
それをなっちゃんが精一杯手を伸ばすが、届かず。
しかし、清水さんのショットはアウトとなり、15-0。
いきなりの激しい攻防に観客も騒然。
「なっちゃん、もう一本!!」
そんな中、エーちゃんは大音声での応援。
それを聞いて、なっちゃんは気合十分。
一方、清水さんは修羅になる? ってな感じで次回<#264 光と影>につづく。
なっちゃん、電話の件を引きずるかと思いましたが、とりあえず全然そんな様子はなし。
いい感じに試合にも入れていそうで一安心。
一方の清水さんも母がコーチを離れることで、一層の自立心が芽生え、精神的に強くなるのでしょう。
が、それは今日であるかは不明。
将来的にはプラスなのでしょうが、この決勝はどうなのかなぁと。
うん、まぁ、このシーンはいいシーンだと思う。
何というか、清水さんは泣き顔が非常に印象的なんですよね。
というか、印象的といえば、最後の清水さんのあの表情。
エーちゃんの応援が聞こえて、変なスイッチが入ってしまったってことでしょうか。
普通に怖いんですけど。
あと、最後に。
難波江との決勝戦を楽しみにしていたのは、読者の総意だと思うのですよ。
それを『勝ちたいと思っていた』と過去形で言ってしまったエーちゃんに涙。
あぁ、本当にプロの道を諦めたのかなぁと。
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