池と難波江の試合は池の2セット連取で試合終了。
「池がついに日本一に王手!」
「いや・・今日は難波江の方に驚いたよ」
「こんなハイレベルな18歳同士の試合見たことねえ!」
それでも難波江の大健闘に、そんな声援が飛ぶ。
「ソウジは第1セットの最後しか満足なテニスができなかったな。それでも勝つソウジはさすがだが、難波江の創意工夫には驚いたよ。日本人離れしたソウジに対して、実に日本人らしい知的で理性的で戦略的なテニス・・・・。ソウジにとってはありがたい存在だ・・・・」
ロニーコーチもそんな言葉を。
結局暴君をキレさせることはできなかったかと池。
それでも難波江の実力を感じ、頑張ろうぜと握手。
この一戦を中継で観ていた他の選手達。
思うことはそれぞれ。
そして次に気にするのは、エーちゃんの試合。
池と難波江の試合決着から約1時間後。
決着が。
第2セットもエーちゃんの劣勢。
第5ゲームまで終え、キープすらできない状況。
ここをブレイクされたら、6-0、6-0とどれだけ差があるのかもわからないスコアでの決着となってしまう。
それでも第2セットはここまでの獲得ポイントが16対24。
第1セットの0-5までが9対20だったことを考えれば、攻めるべき球が絞れて、よくなってきている。
さらに前進するために、今までの戦略にプラスα。
どうしても単調だった、深くて強いスピンに変化を加える。
まず今までよりもっと遅くて山なりのスピン。
これは、前のゲームで偶然フレームに当てた球がいった時、門馬さんが一瞬タイミングを崩したからこそのショット。
これは最初ほどの効果はない。
しかし意味はある。
門馬さんは変化がある時、あまり無理はしてこない。
そこで今度は、これまでより少し山が低めで速いスピン。
これは逆襲されない位の球威で慎重に使える時だけ使う。
全部で3種類の深くて強いスピン限定のチェンジオブペース。
これで何とか返し続ける。
タイミングを崩さないまでも、少しスピンがかかり過ぎて浅くなれば、さらに意外性を加えて攻めに転じる。
速いフォアのスライスでアプローチ。
前に出たエーちゃんに対して、門馬さんも厳しいショットで抜きにかかるため、ネットに引っかけ、30-15。
追い込まれているが、確実に自分の形を作りつつあるエーちゃん。
(不戦勝で掴んだチャンスでも皆が見てる。プロになるなら『0-6、0-6でも頑張った』なんて通用しない・・・・。まず一つ・・、期待に応える!)
先ほどのポイントの様に、スピンのチェンジオブペースの中からチャンスを見つけて、前へ。
しかし、今度は門馬さんの厳しい鋭角クロスにやられて、30-30。
(違うっ・・・・! 無理しすぎ! ダメなら戻れ!)
(ここは引かない! 力で押されてもだ・・! 3球種だけでサーブの優位を守りきる! チャンスは少ないけど、きっと来る!)
エーちゃん、今度はフォアのダウンザラインを決め、40-30。
このゲームは、この試合で始めてエーちゃんが主導できている。
その後、デュースに持ち込まれ、マッチポイントも握られるも、取り返し。
(そうだ・・・・。この状況が作れれば・・、これも決まる!)
ドロップを決め、この試合初めてのキープ。
思わずガッツポーズ。
たった1ゲームキープしただけだが、大躍進。
しかし、続く第7ゲーム。
やはりリターンゲームではできる事は限られている。
それでも流れは確実に変わってきている。
自分のパターンに持ち込めば、できることはある。
しかし、届かず。
惨敗。
善戦すれど及ばす――というところで次回<#369 対峙>につづく。
思いのほか、早く決着。
いや、前回巻きで第1セットが終わったことを鑑みれば、可能性もあったことでしたが……。
それにしても6-0、6-1。
ここ最近見なかった惨敗という結果でしたね。
前回も少し言いましたが、門馬さんとは相性が悪すぎる。
難波江が相手でも、それこそ池が相手でもここまで一方的なスコアにはならなかったでしょう。
エーちゃんの攻撃力では門馬さんの守備を突破できず、エーちゃんの守備力では門馬さんの攻撃を凌ぐにはやや足りない。
まぁ、結局の所実力不足だったとしか言えないわけですが。
最後まで結局スピンに頼らざるを得ず、スピン三種でのチェンジオブペースを展開するところまでしかもっていけませんでしたので、その辺が全てかなぁと。
限定的なチェンジオブペースで崩せるような相手ではないですので。
最低限、普通のチェンジオブペースまで持っていかなければならなかった。
そこまで持っていけなかった。
門馬さんが序盤に思ったとおり、この試合エーちゃんが力勝負から逃げていたかは、まぁ、ちょっと判断がつかないのですが……。
少なくとも立ち向かってはいませんでしたからね。
いや、まぁ、真っ向勝負をしてしまっては、それはもうただの無謀を通り越して、ただの自滅なのでアレですが……。
勝つために全力を尽くしたというよりは、負けないために何とか踏ん張った。
そんな風に終始していて終わってしまった印象。
それを逃げというのなら、そうなのかもしれないなぁと。
エーちゃんならもっとできることもあったのではは思わなくないです。
その辺が、今後の解題にもなるのでしょうが。
この敗戦でエーちゃんにどんな変化が生まれるのか。
そしてプロ契約はどうなのるか、今後の動向に注目です。