造り直しに応じず
気仙沼市魚町の防潮堤が県のミスで22cm高く施工されてしまった問題。気仙沼市は9月15日に、見た目の高さを抑える背後地のかさ上げを先行して実施する考えをすでに明らかにしていますが、9月25日に県の動きがありました。村井知事が9月25日の記者会見で、「内湾地区復興まちづくり協議会」が求めていた防潮堤の造り直しはしないと表明したのです。9月26日の三陸新報の記事はこのような内容。
三陸新報9月26日記事
この記事では菅原市長のコメントを掲載していました。「市はこれまで住民合意による解決を県に求めてきた。合意のないまま謝った高さで整備を進めるということなので、事業の期限もあると思うが、とても残念。決断に至った経緯、原因と経過、責任と処分について丁寧に説明をしてもらう必要がある。市としてはまち協(内湾地区復興まちづくり協議会)、県への協力は全力で行っていく」とのこと。
県の今回の決定については、河北新報が詳しく伝えています。本日は、同紙が9月26日に配信した3本の記事を紹介します。一定期間でリンクがきれてしまうので、長くなりますが、主要部を引用させてもらいます。(赤字クリックで記事にジャンプ)
9月26日配信記事「気仙沼・防潮堤施工ミス」①
住民「知事あまりに乱暴」高さ不変に地元猛反発
気仙沼市内湾地区の防潮堤高を宮城県が誤って施工した問題で、村井嘉浩知事が25日に防潮堤を造り直さないとする最終判断を下したことに関し、地元の地権者や住民団体は一斉に反発した。一貫して造り直しを求めた地元の意向を無視された形となり、住民は「あまりにも乱暴だ」と怒りをあらわにしている。
「協議会としての要望が受け入れられなかった。非常に残念だ」。中心市街地の再生を議論してきた住民団体「内湾地区復興まちづくり協議会」の菅原昭彦会長が無念の思いを吐露した。午前9時半ごろ、村井知事から直接、電話で造り直さないことを伝えられたという。
菅原会長は「県に対する不信感は残ったままだ。協議会としてどうするのか、今後、検討したい」と話した。近く会合を開き、対応を話し合う。(中略)
協議会の場でも「住民との合意がない防潮堤を気仙沼には造らない」との持論を強調していた菅原茂市長は、「住民合意がないまま、誤った高さの防潮堤が整備されることは非常に残念。(県には)住民の思いを真摯に受け止め、対応してほしい」と注文を付けた。
9月26日配信記事「気仙沼・防潮堤施工ミス」②
知事、造り直しに応じず 安全確保を重視
(前略)村井嘉浩知事は25日の定例記者会見で、住民が求める防潮堤の造り直しには応じないと表明した。整備が遅れることで、地域の安全性確保や予算執行に影響が生じかねないと最終的に判断した。休止中の工事を近く再開し、本年度内の完成を目指す。
村井知事は、理由として(1)街づくりの安全性確保の懸念(2)背後地での市の土地区画整理事業への影響(3)技術面の難しさ(4)入札不調となった場合のさらなる工事の遅れ-の4点を挙げた。
防潮堤工事の事業費は年度をまたぐ「繰り越し」の手続きを2回続けた。3回目は認められないため、本年度中に事業を終える必要があるとして「(判断の)タイムリミットだった」と理解を求めた。
村井知事は「住民に多大なる迷惑と心痛を掛け、深くおわびする」と重ねて陳謝。「ミスの原因や経緯などは誠意を持って説明する。設計、施工各業者、県職員は基準に基づいて適切に処分する」と述べた。
菅原茂気仙沼市長と、住民団体「内湾地区復興まちづくり協議会」の菅原昭彦会長には同日午前、電話で方針を伝えた。2人から「納得したわけではない」との返事があったと明かし、「できるだけ早く出向き、おわびしたい」と話した。(後略)
9月26日配信記事「気仙沼・防潮堤施工ミス」③
宮城県と住民の溝埋まらず 議論平行線、対立深まる
気仙沼市内湾地区の防潮堤高を宮城県が誤って施工した問題で、村井嘉浩知事は25日、住民が求めた造り直しには応じず、22センチ高い防潮堤の建設を進める最終判断を下した。ミス発覚から203日。県と住民との間にできた深い溝が埋まることは一度もなかった。(気仙沼総局・大橋大介)
防潮堤を巡る議論の経過は表の通り。県と住民の対立が決定的となったのは、5月18日に気仙沼市であった地元住民団体「内湾地区復興まちづくり協議会」の会合だった。
県は当初、(1)造り直し(2)背後地かさ上げ(3)現状のまま設置-の3案を示し、住民の意向を選択する方針だった。会合で住民は「造り直し」を求めたが、出席した村井知事は時間や経費を理由に却下した。
ある協議会関係者は「住民が選んだ意見を覆した。知事の強気な姿勢も不信感を大きくした」と明かす。
その後、「造り直し」を求める住民と県の議論は平行線をたどった。この間、県は誤解を招くような住民の意向調査結果を示したり、施工ミスに気付いた時期を住民よりも前に県議会に示したりするなどして何度も住民の反発を買った。
今月15日にあった会合で協議会は造り直しの方針を県に示したが、その10日後、県は最終決定を下した。防潮堤背後地の魚町の地権者(44)は「県はどれだけ住民の感情を逆なでするつもりなのか」と憤る。
住民の中には、かさ上げ案を受け入れざるを得ないとの意見ある。それでも、県と住民の感情的対立が解消される可能性は極めて低い。
(引用は以上)
最後に引用した記事は、河北新報気仙沼総局・大橋大介さんの署名記事です。その中に、協議会関係者の言葉として「住民が選んだ意見を覆した。知事の強気な姿勢も不信感を大きくした」とありましたが、知事の強気な姿勢こそが不信感を大きくした原因だと私は思います。
知事は「できるだけ早く出向き、おわびしたい」と話しているそうですが、もう少し別の段取りがあってもよかったような気がします。大橋さんの記事の末尾に〈県と住民の感情的対立が解消される可能性は極めて低い〉とありました。残念ながら同感。としか言いようがありません。
三陸新報9月26日記事
この記事では菅原市長のコメントを掲載していました。「市はこれまで住民合意による解決を県に求めてきた。合意のないまま謝った高さで整備を進めるということなので、事業の期限もあると思うが、とても残念。決断に至った経緯、原因と経過、責任と処分について丁寧に説明をしてもらう必要がある。市としてはまち協(内湾地区復興まちづくり協議会)、県への協力は全力で行っていく」とのこと。
県の今回の決定については、河北新報が詳しく伝えています。本日は、同紙が9月26日に配信した3本の記事を紹介します。一定期間でリンクがきれてしまうので、長くなりますが、主要部を引用させてもらいます。(赤字クリックで記事にジャンプ)
9月26日配信記事「気仙沼・防潮堤施工ミス」①
住民「知事あまりに乱暴」高さ不変に地元猛反発
気仙沼市内湾地区の防潮堤高を宮城県が誤って施工した問題で、村井嘉浩知事が25日に防潮堤を造り直さないとする最終判断を下したことに関し、地元の地権者や住民団体は一斉に反発した。一貫して造り直しを求めた地元の意向を無視された形となり、住民は「あまりにも乱暴だ」と怒りをあらわにしている。
「協議会としての要望が受け入れられなかった。非常に残念だ」。中心市街地の再生を議論してきた住民団体「内湾地区復興まちづくり協議会」の菅原昭彦会長が無念の思いを吐露した。午前9時半ごろ、村井知事から直接、電話で造り直さないことを伝えられたという。
菅原会長は「県に対する不信感は残ったままだ。協議会としてどうするのか、今後、検討したい」と話した。近く会合を開き、対応を話し合う。(中略)
協議会の場でも「住民との合意がない防潮堤を気仙沼には造らない」との持論を強調していた菅原茂市長は、「住民合意がないまま、誤った高さの防潮堤が整備されることは非常に残念。(県には)住民の思いを真摯に受け止め、対応してほしい」と注文を付けた。
9月26日配信記事「気仙沼・防潮堤施工ミス」②
知事、造り直しに応じず 安全確保を重視
(前略)村井嘉浩知事は25日の定例記者会見で、住民が求める防潮堤の造り直しには応じないと表明した。整備が遅れることで、地域の安全性確保や予算執行に影響が生じかねないと最終的に判断した。休止中の工事を近く再開し、本年度内の完成を目指す。
村井知事は、理由として(1)街づくりの安全性確保の懸念(2)背後地での市の土地区画整理事業への影響(3)技術面の難しさ(4)入札不調となった場合のさらなる工事の遅れ-の4点を挙げた。
防潮堤工事の事業費は年度をまたぐ「繰り越し」の手続きを2回続けた。3回目は認められないため、本年度中に事業を終える必要があるとして「(判断の)タイムリミットだった」と理解を求めた。
村井知事は「住民に多大なる迷惑と心痛を掛け、深くおわびする」と重ねて陳謝。「ミスの原因や経緯などは誠意を持って説明する。設計、施工各業者、県職員は基準に基づいて適切に処分する」と述べた。
菅原茂気仙沼市長と、住民団体「内湾地区復興まちづくり協議会」の菅原昭彦会長には同日午前、電話で方針を伝えた。2人から「納得したわけではない」との返事があったと明かし、「できるだけ早く出向き、おわびしたい」と話した。(後略)
9月26日配信記事「気仙沼・防潮堤施工ミス」③
宮城県と住民の溝埋まらず 議論平行線、対立深まる
気仙沼市内湾地区の防潮堤高を宮城県が誤って施工した問題で、村井嘉浩知事は25日、住民が求めた造り直しには応じず、22センチ高い防潮堤の建設を進める最終判断を下した。ミス発覚から203日。県と住民との間にできた深い溝が埋まることは一度もなかった。(気仙沼総局・大橋大介)
防潮堤を巡る議論の経過は表の通り。県と住民の対立が決定的となったのは、5月18日に気仙沼市であった地元住民団体「内湾地区復興まちづくり協議会」の会合だった。
県は当初、(1)造り直し(2)背後地かさ上げ(3)現状のまま設置-の3案を示し、住民の意向を選択する方針だった。会合で住民は「造り直し」を求めたが、出席した村井知事は時間や経費を理由に却下した。
ある協議会関係者は「住民が選んだ意見を覆した。知事の強気な姿勢も不信感を大きくした」と明かす。
その後、「造り直し」を求める住民と県の議論は平行線をたどった。この間、県は誤解を招くような住民の意向調査結果を示したり、施工ミスに気付いた時期を住民よりも前に県議会に示したりするなどして何度も住民の反発を買った。
今月15日にあった会合で協議会は造り直しの方針を県に示したが、その10日後、県は最終決定を下した。防潮堤背後地の魚町の地権者(44)は「県はどれだけ住民の感情を逆なでするつもりなのか」と憤る。
住民の中には、かさ上げ案を受け入れざるを得ないとの意見ある。それでも、県と住民の感情的対立が解消される可能性は極めて低い。
(引用は以上)
最後に引用した記事は、河北新報気仙沼総局・大橋大介さんの署名記事です。その中に、協議会関係者の言葉として「住民が選んだ意見を覆した。知事の強気な姿勢も不信感を大きくした」とありましたが、知事の強気な姿勢こそが不信感を大きくした原因だと私は思います。
知事は「できるだけ早く出向き、おわびしたい」と話しているそうですが、もう少し別の段取りがあってもよかったような気がします。大橋さんの記事の末尾に〈県と住民の感情的対立が解消される可能性は極めて低い〉とありました。残念ながら同感。としか言いようがありません。