神酒(ネクトール)
大昔から、強大な権力を持った王は、不老不死を求めてきた。
有能で疲れを知らぬ探険家に、地の果てまで不老不死の妙薬を探しに行かせ、天才の頭脳と飽くことなき探究心を持った学者や錬金術師にそういった薬を作らせようとした。
しかし、それに成功したという話はない。
一方、中国には、不老不死の薬を持っていたり、その作り方を知る仙人の話があったり、あるいは、食べ物によって不老不死を得ている仙人の言い伝えもある。
ギリシャ神話では、人間でありながら、美の女神アプロディーテと競うほどの美しさであったプシュケーは神の仲間になったが、そのために、彼女にはネクトールという神酒が与えられたのだった。
はてさて、そのような、人間の憧れである不老不死をもたらす薬や酒や食物があるのだろうか?
あるとしても、それは、現在の一般的に言われる意味での薬や食べ物の効果によるのではない。
少し知られている概念で言えば、風邪の特効薬であると言われて、ただの砂糖の粒を与えられてそれを飲んだらめざましい効果を示すといったプラシーボに似ている。
外的現象などというものは、心の反映であり、信念が生み出すものである。
ネクトールだと信じて飲めばネクトールだし、不老不死の妙薬、あるいは、食べ物と心から思えばそうなるだろう。
不老不死の妙薬とは、物質的な薬ではない。心との相互作用で作り出すものである。昔の王様にそれを教えてやる者がいなかったのだろうか。
ただ、不老不死の食べ物を作るのは心だが、その効果を発揮させるのも心だ。
心は欲望が混ざると、その神秘の力を発揮しない。それが、煩悩多い王に不老不死を教えることが出来なかった理由でもある。
神々の王ゼウスは、牛の食べ方についてこう決めたのだ。
美味しい肉は人間に。そして、骨を神々の食べ物とすると。
肉は美味しいが腐る。限りある寿命しか持たない人間が、束の間楽しむのに相応しい。
しかし、永遠に生きる神々には、腐らない骨が、その食べ物として相応しいからである。
もちろん、これは比喩であり、快楽が老化をもたらすことを言っているのだ。
肉食者は早熟であるが、老けるのも早い。菜食者は、肉体的成熟は遅くても、いつまでも若々しい。
さらに、仙人は、種や球根といった、植物の中でも特に若いものや、ある種の無機物を少量服用することで長寿と若さを得ている伝承が多い。
自分で工夫をして、ネクトール(神酒)や神の食べ物と定めて食べることが若さと健康をもたらすだろう。
神酒や神の食べ物に相応しいものを、相応しい食べ方で食べることによってである。
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