« 宇宙からの侵略者に立ち向かう | Main | 愛と憎しみは共にある »

2010.02.22

なぜ弾が当たらないのか?

先週の金曜日に、テレビ放送された「風の谷のナウシカ」(1984)を録画して、初めてちゃんと見ました。私はどうも、子供の頃から、この作品が苦手でした。
少し後の宮崎駿監督作品である「天空の城ラピュタ」(1986)にも、やはり少し抵抗がありましたが、「風の谷のナウシカ」ほどではありませんでした。
どうもこれは、ヒロイン達の真っ直ぐ過ぎる気性と共に、特に「風の谷のナウシカ」では、十代後半と思われるナウシカの自信に満ちた態度やリーダーシップといったものが、引きこもり気質の私には、劣等感や違和感を感じさせるのかもしれません。ナウシカに比べると、「天空の城ラピュタ」のシータは、ナウシカよりやや年少に見えると共に、時には大胆であっても、基本的には控え目に感じさせるところが、私には楽に見れたようです。

ところで、有名な、ナウシカが両腕を広げて機関砲や機関銃に向かってくる場面(アスベルに対するものは、アスベルの幻視だったようですが)がありますが、他にもナウシカはかなりの狙撃を受け、最後は怪我を負いますが、その他は奇跡的なほどに弾は外れます。
風説かもしれませんが、織田信長は弾丸の飛び交う戦場で悠々と闊歩し、家来に身を隠すよう言われると、「私には弾は当たらない」と気にも留めない様子を見せたと言われます。自分が天下を取る運命であることを堅く信じているので、こんなところで死ぬはずがないという信念を示していたのだと思います。
ジョセフ・マーフィーの著書にも、戦争中、自分や部下が神に守られていることを確信していた隊長の部隊が常に無傷であったり、やはり同じ信念を持っていた警官が、至近距離で狙撃された時すら、その銃が不発となって助かった話が載っています。
こういった話は、そう簡単には信じない人も多いかもしれませんが、逆にこんな話もあります。
「エスとの対話」(新曜社)で読み、詳細は憶えていないのですが、戦場で、ある兵士が、「ここに弾が当たれば、帰還できるのだがな」と言って、自分の脚の一部を指差した直後に、まさにその場所に流れ弾が当たったというものです。
この話は、ドイツ人医師で「心身医学の父」と言われたゲオルク・グロデックの論文の中にあったのだと思いますが、グロデックは、この出来事は偶然ではなく、エスが起こしたと言うのでしょう。エスとは、フロイト精神分析学で知られていますが、フロイトはこのグロデックのエスの概念を借りたのです。エスとは、無意識の中にある不可思議な存在です。グロデックによれば、あらゆる病気も、人が転んで腕を折るようなことも、全てエスが起こしており、エスによらずに起こることは何もないと言います。

グロデックの言うとおりなら、ナウシカのエスは、弾丸が飛んでくるコースを楽々と見切り、それをかわすべく、無意識にナウシカを動かしていたのかもしれませんね。
最後に、ナウシカが怪我を負ったのも、それが必要とエスが判断したのでしょう。確かにその通りと思いました。
魔法を使って治療しているのではと言われるほどの天才精神科医であたミルトン・エリクソンは、無意識を信頼するように言いました。そして、治療だけでなく、無意識の力で驚くべきことが出来た話もセミナー等で話しています。


エスとの対話
精神分析医の野間俊一氏によるグロデックの論文の翻訳と解説です。エスに関しては、先日の記事でご紹介した「エスの本」もありますが、グロデックが文学的才能を見せた「エスの本」が面白さでは優りますが、こちらは、より具体的な内容になります。

私の声はあなたとともに
先日もご紹介した本です。フロイトやグロデックは、無意識をやや否定的に語る傾向があるように思いますが、エリクソンは、無意識を信頼するよう薦めています。
それが、治療は全く下手だったフロイトや失敗も多かったグロデックと、魔法のような実績で賞賛されるエリクソンとの違いかもしれないと思います。

↓応援していただける方はいずれか(できれば両方)クリックで投票をお願い致します。
人気blogランキングへ ブログランキング・にほんブログ村へ

|

« 宇宙からの侵略者に立ち向かう | Main | 愛と憎しみは共にある »

Comments

 いやあ 「ナウシカ」 ですか……。

初めてこの作品を観たとき
 あまりにも素晴らしかった (エコという意味で) ので
次はきっと裏切られると思い
 ジブリ作品を8年間みることができませんでした。

「ラピュタ」 も 「トトロ」 も 「魔女宅」 も
 (TVで)観たのはずっと後のことなんです。


たしかにナウシカが王女だという設定には
 だんだん抵抗を覚えるようになっていきましたね。
  俺はそんな血筋にないから関係ねえや みたいな……。


絶対に被弾しないという自信からくる不死身性は
 たとえば クレージーホースが実際 そうだったみたいですよ。

Posted by: Minr Kamti | 2010.02.23 02:40 AM

★Minr Kamtiさん
「ラピュタ」のシータもお姫様。
私は「ラピュタ」が好きですね。シータのように、「はい!」って素直に返事出来るコがいなくなりましたから。
クレイジーホースは興味があります。

Posted by: Kay | 2010.02.23 09:30 PM

興味深く拝読させて頂きました。

Posted by: F | 2010.02.24 04:50 AM

★Fさん
どこが興味深かったのか、少しでも書いて下さい。

Posted by: Kay | 2010.02.24 06:29 AM

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference なぜ弾が当たらないのか?:

« 宇宙からの侵略者に立ち向かう | Main | 愛と憎しみは共にある »