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本を片手に街に出よう『TOKYO BOOK SCENE』

TOKYO本屋さん紀行 書を読んだら街に出よう、街で本を読んでもいい。

 読書は経験だから、いい本読んだら、語りたくなる。同じ本を読んだ人に会いたくなる。これは、それを、かなえてくれる。いい本は、見せびらかしたくなる。顕示欲と体験のおすそ分けをしたくなる。そして、その本を平積みしている書店や、オススメしてくる人に惹きつけられる。「もっと面白いのある?」って聞きたくなる。

 しかし、そういう場所は、なかなか見あたらない。好きな作家や作品を、熱っぽく粘っこく語れるほど、職場や家庭で自分を曝けていないから。だからネットに穴掘って、王様の耳よろしく叫んでいるわけ(ここはそのログ、オフ会だと[スゴ本オフ]がある)。

 本書では、そういう密やかな(?)欲求をかなえる「場」を紹介する。オススメの一冊をプレゼンして、みんなの「読みたい!」を決める「ビブリオバトル」(次回のテーマは「コンピュータ」らしい)。出版業の中の人を呼んで、出して欲しい本や提案や質問を直接ぶつける「公開編集会議」。あこがれの作家が選んだ本をまとめて再現した「作家の本棚」。作り手と売り手、読者との垣根を取り払う空間を目指した書店が紹介されている。

 あるいは、5千人のメンバーを誇る日本最大の読書会コミュニティ「猫町倶楽部」。マンガをきっかけにコミュニケーションが生まれ、マンガを介して出会いと輪を広げるしゃべり場「マンガナイト」。売り手と買い手の垣根を壊し、誰でも「本屋さん」になれる、「不忍ブックストリートの一箱古本市」。本とは、知と人と好奇心が出会うメディア、ノードなのだということを、まざまざと思い知らせてくれる。

 タイトルに惑わされてはいけない。「東京」は集中しているだけで、全国規模で見ると、もっとスゴいのが出てくる。なりきり本屋さんワークショップや、オススメ本の交換会(ブクブク交換)、大通公園で一日だけ本屋さんを営む、「札幌ブックフェス」。岩手・秋田・宮城・福島・山形の本とモノの詰め合わせである「東北ブックコンテナ」、本とカフェ、本と神社、一箱古本市のお祭りである、「Book! Book! Sendai」。街と本を楽しむため、テレビ塔を中心に名駅から本山まで本のイベントで埋め尽くす「ブックマークナゴヤ」。twitter や U-stream と連携しし、古書・新刊書の区別なく、本に親しんでもらうことを目的とした「ブックスひろしま」。福岡を本の街にするために、書店・出版社・古書店・編集者など本に関わる人々、そして本好きが集うBOOKUOKA。本を軸に人と街をつなげる試みは山とある。神田古本まつりや一箱古本市で満足してたらあかんな。

 本の紹介ではなく、本屋の紹介ではなく、「本を介したコミュニケーションの場」を紹介するという、(たぶん)日本初の面白い試み。この本を片手に、街に出よう。あるいは、街で読んでもいい。


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