困った現場に効く「プロジェクトマネジメント現場マニュアル」
プロマネ本は沢山あるが、こいつは具体的。プロジェクトのその場その場で発生する問題とその解決策がよく分かる。「こんなときどうする?」形式なので、自分なりの対策を考えて→次のページで"答え合わせ"をするといった読み方もできる。カユいところに手が届く仕掛け。
例えば…
- 問題がいつまでたってもなくならない。進捗報告はペンディングの山。どうやって片付ける?
- テストが甘い。行き当たりばったりで、テスト自体のモレヌケによりつぶすべきバグが後になって湧く。なんとかするには、何をどうすればいい?
- アバウトな品質要求「使いやすい画面にしろ」といわれたとき、何をどうすれば「使いやすい画面」になっているといえるのか?
- 進捗管理が甘い。「90パーセントです」が1ヶ月続く。あるいは、進捗会議の場が、「なぜ遅れているのか」の言い訳の場になっている。どうする?
- 問題を管理する。責任者、期限、優先度を決め、進捗を監視する。共有重要だが進捗会議を問題議論の場にしない(別に場をもうける)
- テストをプロデュース。テスト環境の手配が最優先。参加者と役割分担を決めろ。テスト管理は(a)不具合対処のための管理(b)仕様変更管理(c)テスト進捗管理(d)成果物への変更要求に対する構成管理、とあるが、(a)ばかりに目を向けがち。他の手を抜くとテストがボトルネックになる
- 「使いやすい画面とは、操作ミスしない画面のこと? それならミスの回数をカウントしましょう」と、測定できるもので定義する→制約条件・前提条件になる。品質目標、測定方法、品質保証活動、是正処理は4本柱。
- 「○○をやったら進捗△パーセント」と、進捗率を定義する。遅延の場合は問題管理として原因を分析する(別の場所で潰す)
けっして、「ちゃんと見積りましょう」とか「しっかり管理しましょう」といった教科書的なことは書いていない。「ちゃんと」「しっかり」できねぇから苦労してんじゃぁねぇか!というPMの叫びに答えるかのように、「何を」「どうする」か淡々と書いてある。
あたりまえだよー、というツッコミ上等。本書は「分かっちゃいるけど、やれていない」人よりも、むしろ、いきなりPMになってモレがあると不安だという方にうってつけ。本書があたりまえ過ぎる(自分はできている)というなら、[アート・オブ・プロジェクトマネジメント]あたりをどうぞ。
「PMBOKは分からん!」「現場でPMBOKは使えん」という人にこそ、オススメ。PMBOKは抽象度が高いから、いったん自分のプロジェクトにまで「下げて」読む必要がある。一方、本書は「システム開発のプロジェクト」に特化してはいるけれど、手取り足取りというレベルではないので、つまみ食いから実践に取り入れるといい。付録のテンプレは[ここ]からダウンロードできる。お試しあれ。
おまけ:PMBOKを案内役として、今回紹介した本も含め、珠玉のプロマネ本が集まってきたな… 自分のblogをクロールしてみる。
- プロジェクトを成功させる魔法の言葉が詰まっている[目標を突破する実践プロジェクトマネジメント]は、建設業界のノウハウを一般化したもの。「見積り命」というスタンスは、激・し・く・同・意
- 「ソフトウェア・システムの問題 = 人の問題」という本質をこれでもかと刷り込んでくれる[デッドライン]、名著なり。管理者の怒りの根っこにある「恐怖」を知ったとき、上司に対して限りなく優しくなれる
- バイブルにしたい[アート・オブ・プロジェクトマネジメント]。いつも持ち歩くのではなく、繰り返し読んで血肉化するべ
それから、[PMBOK4]、まとめシリーズを無沙汰してたが、再開するか。
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