YouTuberになる!と言って大企業を退職した部下の心理分析。
部下が仕事やめるってよ。
同じ部門で三年以上一緒に働き、
プライベートでも親しくしてきた部下のBくん。
実は、彼は入社してから数か月で既に退職することを考えていたそうです。
しかし、退職はしたいけど、やりたいこともない。
彼が退職したい理由は、今の仕事にやりがいが見つけられない。
というものでした。
そんな状況を、二人で仕事帰りに飲みにいく度に相談されていました。
マネージャーで上司でもある僕にそんな相談してくるか?
というツッコミもありつつ、そんな常識知らずの彼が可愛くもあり、
特に退社を咎めることなく、話を聞いてました。
恐らく、もう少し年配の上司であれば、
「馬鹿野郎!そんな甘い考えて働くなら、とっとと辞めちまえ!」
と怒鳴り散らすかもしれません。
僕らの社会の普通はそんな感じかもしれません。
Bくんの長所と短所
彼の本業での働きぶりは、
正直、微妙としか言いようがありませんでした。
- もの忘れをしがち
- 何事もやり切ることができない
- 報告を怠りがち
人事評価も平均以下を付けざるえません。
一方、もちろん良いところもありました。
- 失敗を恐れない。
- 人当たりがよくて憎めない。
- やりたいことがたくさんある。
僭越ですが、この可能性は広げてあげたいと思っていました。
Bくんの退職理由
ちょうど、半年前の話です。
「ちょっとお話いいですか?」
と、Bくんに呼び出されて話を聞くことになりました。
彼曰く
「もう、組織に所属して働く単調な仕事は限界です。
会社にいる40~50代の人たちを見ていて、数年後、数十年後も、
自分があの人たちと同じような繰り返しの日々を送っていることが、
全く想像できません。」
この長期的な視点の発言は、
自分でもドキリとさせられました。
「でも、やりたいことは見つかったの?」
と聞くと。
「アルバイトをしながら、YouTuberをやりたいと思ってます。
編集ができる友達もいて、企画もたくさんあるので。
そして、将来的には海外に移住をして暮らしたいと思ってます。」
「今ある安定的な収入や、福利厚生もなくなるけど、
本当に大丈夫なの?」
「安定とかは、全然求めてないので。
欲しいものもないし、生活さえできれば十分だと思ってます。」
「そっかぁ…」
心理分析
マズローの欲求五段階説という学説があります。
- 自己実現の欲求 (Self-actualization)
- 承認(尊重)の欲求 (Esteem)
- 社会的欲求 / 所属と愛の欲求 (Social needs / Love and belonging)
- 安全の欲求 (Safety needs)
- 生理的欲求 (Physiological needs)
通常は、このピラミッドは下から順番に満たされていくものであると
思っていました。
しかし、Bくんのように自己実現の欲求が強烈に強い場合は、
会社で得られる生理的欲求~承認欲求を放棄してでも、
自己実現に向かうのだな。と思わされました。
- これから頑張れば給料も上がるよ。
- 今の会社の福利厚生はなかなかないよ。
- ポジションが上がれば社会的にも認められるよ。
などと、僕がどれだけピラミッドの下層の話を魅力的に訴えても、
彼には全く響かないのは当然です。
マズローもこの点について、「欠乏欲求」という形で言及していて、
人生の中で一度でも十分に満たされた経験があると、その後の人生で多少足りないことがあっても、耐えることができると言われています。
言い換えれば、一度満たされた欠乏欲求は、それ以降はモチベーションを高めるための理由にはなりにくいというのです。
つまり、彼の自己実現の欲求を満たすだけの提示ができなかったということです。
「それは、自分で見つけるものだろう。」
という意見もあるかもしれませんが、
マネージャーの立場としては、少しでもその手助けをしてあげるのが、
本来の役目だったな、と反省させられました。
Bくんのその後
先月、半年ぶりにBくんと会う機会があり、久々に話をしました。
「YouTubeの方はどうなの?」
と聞くと、彼はまだ準備中とのことでした。
「本当にやる気あるのかよ!」
僕はズッコケながら、ツッコミを入れてしまいました。
YouTubeは編集をやるはずだった友人が就職してしまって、
ちょっと難しくなったそうです。
彼は現在アルバイトを2つ掛け持ちして、
海外に渡航する準備をしているそうです。
どこの国にいくかもまだ決まってなくて、
色々調べているのが楽しいそうです。
本当に彼の自由さと行き当たりばったり感は、
うらやましくて仕方ありません。
会社に残っている僕にとっても、
彼の自己実現への姿勢は学ばなくてはいけないなと思わされました。