クリエイトとは「そうじゃない」を一緒に探していくこと──the McFaddinの揺るぎない探究心

楽曲制作に止まらず、物販やMV、ジャケット、ライヴ演出などをメンバー自らが手がけているバンド、the McFaddin。昨年のインタビューでは、バンドのプロフィールを中心にお届けしたが、今回はさらにもう一歩踏み込み、バンドのクリエイト面を中心にインタビュー。最新EP『WH3Nwh3re』に込められた、彼らの探究心とは一体どんなものか。フロントマンのRyosei Yamada(Vo / Gt)と、バンドと親交のある飯田仁一郎が和気藹々と語らう。
the Mcfaddinの好奇心がつまった新作!
INTERVIEW : Ryosei Yamada(the McFaddin)

今回のインタビューは、the McFaddinの音への探究心の強さを思いっきり知ることができた。「いいサンプリングって簡単にゲットできるけど、良い音はそういうことじゃない」と言い切る彼らの鋭さに、今後のミュージック・シーンを引っ張る強さを感じる。彼らの音楽が東京で生まれるものとは明確に違うその答えを、感じることができた。
取材 : 飯田仁一郎
文 : 梶野有希
写真 : Akane Matsuda
WH3Nwh3reとは、改めて価値を見出すこと
── EP『WH3Nwh3re』(読み:ウェンウェアー)はバンドサウンドに仕上がっていますが、軸は先行配信された"betbetbet"?
Ryosei Yamada(Vo / Gt)(以下、Ryosei):バンド・サウンドの音像感、という意味では軸ですね。よく考えれば昔はこうやって曲を作っていたなって。でも"betbetbet"よりも前に作っていた曲が"WH3Nwh3re"で。
──"WH3Nwh3re"はずいぶん音数の少ないサウンドだね。
Ryosei:僕が骨組みを作ったんですけど、「オケは極論どうでもいいから、まず歌を尊重しよう」ってメンバーが歌をすごく褒めてくれたんですよ。だからこういうサウンドになったんだと思います。
──レコーディングはどこで?
Ryosei:"WH3Nwh3re"の3バース目、「I have to call you if you feel night」からは、僕らが何度も使わせていただいているカフェ、marthaで録音しました。昨年出したEP『Something is likely to happen』もここで録っています。
──調べたら楽器もたくさん置いてるし、めちゃくちゃかっこいい場所!
Ryosei:だから"WH3Nwh3re"では、僕がはじめてマンドリンに挑戦できたり、Andoもアップライト・ピアノをいきなり弾いたりとかして。ギターも30年代くらいのオールマホガニーを借りてみたり。マイクふたつを囲ってみんなで一緒に演奏しようってセッション形式で録音しました。機材はコンデンサー2種類と、Ryomaが持っていたASMRを録る時に使うようなマイクを使用しています。色々なことにチャレンジして、たまたま生まれた良さを大事にしたいんですよね。
──"WH3Nwh3re"は表記もおもしろいけど、どういう意味だろう。
Ryosei:これは「改めてその価値を見出す」という意味かなぁ。僕らは普段から「WH3Nwh3reする」みたいな感じで会話のなかで使っていて。
──というと?
Ryosei:その物、音に纏うオーラを大切にすること、といいますか。60年代のロック・バンドが大事にしていたものは、そのとき、そのスタジオで鳴っていた音だと思うんです。現代ではスタジオ・セッションがあまり主流ではないけど、そんななかセッションで楽曲を作ることで音が生まれるまでの流れとか、完成した後に曲が纏うオーラを大事にしたいって改めて思うんですよ。だから「WH3Nwh3reする」(=「改めてその価値を見出す」)ことを大切に今作は作っていきました。
──なるほど。
Ryosei:──"WH3Nwh3re"の最初にザラっとした音が入っているのは、完成音源を(京都にある)宝ヶ池公園で流したものを最終的に再録音したからなんです。そのあとの「I think I'm freak」で(外の世界から)帰ってくるという構成になっていて。いいサンプリングって簡単にゲットできちゃうけど、あえて僕らは逆をいきたくて。これもまさに「"WH3Nwh3re"する」なんです。
──「曲が纏うオーラ」と言っていたけど、そのオーラはどうやって生まれると思いますか?
Ryosei:景色からですね。だから今作は「どこで、どんな音を録るか」ということにもこだわっています。実際に見た景色についてメンバーと話をして、その時のことをそのままリリックに落とし込んだパターンも今回多かったですし、色々な景色が今回のEPに繋がっていますね。
──"WH3Nwh3re"のオーラはどんな景色から生まれたの?
Ryosei:「When rains 降る」の部分に入っている雨音も宝が池公園でフィールドレコーディングしたんですけど、このときは晴れていたんですよ。なのに、雨が降っていて。
──「晴れているのに雨が降ったという景色」をみたことが、この曲を作る上で大事なことだった。
Ryosei:そうです。あと、グレーな部分をずっと考え続けたいという気持ちが強いんですよね。その気持ちになるきっかけも景色なことが多くて。例えば今作には"far"という曲があるけど、"irk"では「not so far」って真逆のことを歌っていたり。あと"far"のなかでも「赤い色した青が」っていう歌詞があったりとか。
