PENGUINMARKET RECORDS 5th Anniversary
90年代後半のCDバブル期から下降を続けるレコード業界。反対に、ライヴ・ハウスには少しずつだが人が集まり、mixi(ミクシィ)やMySpace等の繋がるサービスが人気となり、アーティストとリスナーの距離は縮まりつづけている。そんな時代に、その間で奮闘するレーベルって、果たしているの? ってか、食えるの? そんな率直な質問を、インストゥルメンタル・バンドを中心に運営するインディーズ・レーベルPENGUINMARKET RECORDSに成り立ちも含めて聞いてみた。まだ5周年のこのレーベル。CDが売れないと言われているこの時代に、最も厳しいだろうコンピレーション・アルバムまで出してしまう挑戦的なレーベルだ。ただただ、真っすぐ自分達の思いにしたがって。このインタビューを読んだ後、こんな時代にこそこんなレーベルが必要だ! って思うだろう。
インタビュー&文 : JJ(Limited Express (has gone?))
祝5周年!インストゥルメンタル・バンドを中心に運営する国内屈指のインディー・レーベルPENGUINMARKET RECORDSが、今秋で設立5周年を迎えます。それを記念し、レーベル初となるアニバーサリー・コンピレーションを発売。新曲、もしくは新録、未発表など、全12曲収録。OTOTOYではCDの発売に先駆けて販売します! アルバム購入者にはPENGUINMARKET RECORDS壁紙(5th アニバーサリー仕様! )をプレゼント。
PENGUINMARKET RECORDS 5th Annivarsary Compilation
V.A『World Penguin's Carnival 2010』
01. middle9 / Island pull out
02. egoistic 4 leaves / gestalt ※
03. 旅団 / GOLDEN PEACH ※
04. Tyme.+Tujiko Noriko / あけて、あけて (akete, akete) ※
05. MAS / Tsurukame Skipper ※
06. L.E.D. / Terra ※
07. nenem / untitled ★
08. wooderd chiarie / リビングの象
09. sgt. / 銀河の車窓から-reprise- ★
10. Clean Of Core / Navigation and storm
11. oaqk / LELIURIA ※
12. Screaming Tea Party / Holy Disaster ※
※…新曲 ★…新録
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明石興司(sgt.)×北澤学 INTERVIEW
——PENGUINMARKET RECORDS(以下 : PENGUINMARKET) 、5周年おめでとうございます! まず、PENGUINMARKETの成り立ちを教えてもらえますか?
明石興司(以下、明石) : 2004年頃に「sgt.の音源を出そう」と、録音してミックスも済ませて色々な所に送ったんですけど、どこからも音沙汰が無かったんですよ。で、僕が某ライヴ・ハウスで働いていてレーベル事業をやっていた繋がりもあって、北澤さんを紹介してもらったんです。で「自分達でやろうよ」って話になったんですけど、「大丈夫だよ」ってなるまでには、結構時間がかかったんだよね。
北澤学(以下、北澤) : 同じ社内なんですけど、僕はインディーズCDの流通の仕事をしていたんです。彼は社内の中のレーベルの方でバンドもやっていて、僕は営業の方をやっていたんです。そして彼がレーベルのA&Rに「こういうバンドをやっているんです」って言ってデモを渡したのが、sgt.なんですよね。その頃、インストというかポスト・ロックな音を分かる人間が社内で僕位しかいなかったんですよ。好きな人もいなくて。でA&Rの人に「北澤君同席してくれない? 」って言われて会ったのがきっかけですね。
——2004年頃って、音源を送れるレーベルってあんまりなかったんですか?
北澤 : いや、王道のところには、かなり送りましたよ。
明石 : その後ほとんどの関係者に会ったんですけど... 誰も聞いてなかったですね(笑)。「何で一声かけてくれないの? 」 って感じ(笑)。
北澤 : ライヴを見に行ったら、凄い良かった。だから、最初は属して出した方がいいんじゃないかなって思ってたんですけど、どこも相手にしてくれなかったって事で、じゃあ自主でやろうって。自分は流通で営業担当だし、手伝いつつ社内の流通をうまく使って出そうかって考えたんですよね。その時点で、レーベル名も決まってたもんね?
明石 : 旅団の団長・毛利と話してて「闇市」=「ブラック・マーケット」にしようって提案したんですよ。戦後の闇市で並ぶような(笑)。でもえらい反発されました。
——「ブラック・マーケット」にしようとしてたんですか(笑)?
明石 : 「ブラック・マーケット」か「闇市」ですね。でもウチ(sgt.)のドラムも反対して、「じゃぁ、お前が決めろよ」って言ったら「ペンギンがいい」って言い出したんすよ。「じゃぁ、それで行こう! 」って(笑)。
北澤 : それこそ旅団とかが「闇市レコード」から出しますなんていったら、怖過ぎるでしょ(笑)。
明石 : 女の子怖がっちゃうね!
——sgt.後のリリースは決まっていましたか?
明石 : 旅団は決まっていましたね。彼らをもっと世に広めたいし、お手伝いしたいなぁって思ったんです。sgt.が落ち着く頃に次を探してて、ずっとライヴを見に行ったりしていましたね。
北澤 : 最初「大丈夫かな?」って思ってたんですけどね(笑)。大人数でライヴでは駆け回ったりして、ハチャメチャなインパクトのあるバンドでしたから。
——wooderd chiarieが合流したのはいつ頃?
北澤 : 2006年ですかね。
明石 : 彼らは古くから繋がりがあったんですけど。ERAのレーベルが付いてたんで、アーティストどうこうって意識はなかったんです。でもある日一緒だった時のライヴがすごい良くて、「リリースするところを探してる」って言うので、「リリースしませんか? 」って言ったら、即答で「お願いします」って言ってくれたんです。
——どちらがバンドを選出しているんですか?
明石 : 最初は、僕がやりたいって思ったのを聞かせて、お互いに納得いったら出すって形。営業するのは北澤さんなんで好奇心がなくちゃいけないんです。でも結構すんなり決まりますよ。
北澤 : お互い好きな部分が似ていますからね。
明石 : 基本は、2人の繋がりの延長だったりするんです。ぽっと出て来てっていうより、誰かの紹介だったりライヴで出会ったアーティストをリリースしています。
北澤 : あと、単純にライヴを見てカッコいいなって思えるバンドを選んでいます。もちろん売り上げがあるかなどの判断も必要だと思うんですけど、そこは度外視していますね(笑)。
——「インストを中心に」って明言しているんですけど、そこへのこだわりは?
北澤 : sgt.が核だったりするんで、その周りのインスト・バンド達から相談されることが多いんですよね。どうやってリリースし売り出していくかとか... で、気づいたらインスト・バンドが増えていたっていう。でもね、そんなに意識しているわけでもなくて、歌ものもやりたいって思っていますよ。
明石 : 女の子の歌ものをやりたい。だから「今は、インストが中心だけれども」って感じですかね。sgt.が始まりではあるんで、どうしてもそうなってしまいますね。
北澤 : でもインストをメインにやっているレーベルって意外とないから、個性だと思っています。
——インストの魅力は?
明石 : これはアーティスト目線になっちゃうんですけど、歌がない! (笑) 。歌があるのが1番いいとも思うんですけど、でも歌が無いのも面白いっていうのを表現したいなって。PENGUINMARKETのアーティストは、他に歌もののバンドもやっていたりするし、歌の魅力が分かりつつインストに挑戦していると思います。
——歌の魅力を知りつつ歌を入れないのは何故なのでしょうか?
明石 : まだ可能性があるからでしょうね。歌が無い曲って想像になってくるじゃないですか。そこに懸けるっていうのはすごい大事なことじゃないかなって。歌詞があったら「愛」っていうだけで終わっちゃうし完結しちゃうんですよ。それがインストだと想像を膨らまさなきゃいけない。もちろんそれが違う結果になってしまうかもしれないですけど、それも面白いんです。
——インストでも多くのバンドがいますよね。PENGUINMARKETでリリースしようと思うラインはなんでしょうか?
明石 : まずは、ライヴ。そして次に、人... やっぱり人柄かなぁ。
——ライヴの良さとは?
明石 : 何通りもあります。空気感が良かったりとか、ただ暴れてるだけじゃないっていうのもあるし...
北澤 : 僕等の持つ感覚ですね。
明石 : 「うぁ」って思える瞬間が、いっぱいあるってところ。
北澤 : あと、30分間通してフルで見れるバンドってそうそうないんです。終わった後に、また見たいって思えるのがすごく大事かなと。
——一緒にレーベルを盛り上げたいって気持ちはあってほしいですか?
明石 : それはあってほしいですね。せっかくリリースしたんですから。なんかのキッカケで違う所に行ったとしても、一緒に頑張りましょう! って思ってほしいですね。違う所に行ったら行ったで、もちろん僕等は応援し続けますよ。
sgt.がフジのWhite stageに出られるくらいに思っている
——PENGUINMARKETとしてシーンを大きくしたいと思いますか?
明石 : それはないですね。シーンとしてではなく、今大事な音楽だろって思ったものを残したいです。今後も色々なアーティストをやっていく予定ですけど、それは今の日本のシーンに残ってほしいし、そういう人達をサポートしていきたいんですよね。それを売れないとか、こういう時代だからとか言ってしまうと駄目なんじゃないのって思うんですよ。売り上げとかお金が大事ってことも、もちろん分かっているんですけどね。
——今は北澤さんが主に動かしていますよね?
明石 : そうですね。僕はもう外から「いいんじゃない」とか言う位。
北澤 : 彼はバンド・マンなんでね。出来ることならsgt.をもっと良くして欲しいし、アーティストに徹して欲しいんです。「レーベル運営に関しては任せてくれ」という感じですね。
——北澤さんはPENGUINMARKETをどうしたいですかね?
北澤 : これまで所属のアーティストのケアをしていくので精一杯で、レーベルとしてこれからどう打ち出していくのかを全然考えてなかったんですよ。だから、PENGUINMARKETの知名度を広める切欠になるのと、所属バンドの可能性も提示していきたいと思って、今回サーキット・イベントをすることにしました。sgt.のファースト・アルバムが2005年だったんで、今年でちょうど5周年。ここらでいっちょやっておこうと思って。自分の仕事の環境も整ってきて、いい機会かなと。で、思いついたのだ7DAYS CIRCUITだったんです。その後ここまでのイベントやるなら、プロモーションも兼ねて、PENGUINMARKET初のコンピレーションを出そうって思いました。でも所属バンドが、7バンドだったので、次回リリースも考えているmiddle9や、明石が昔一緒にやってたSCREAMING TEA PARTYとかにお願いしたんです。nenemは、僕も所属バンドも仲良くさせてもらってるので。ツジコノリコさんは、OTOTOYでも配信していた「penguin2009」やその他のコラボ曲も聴かせてもらってて凄いよかったので。MASのヤマダダツヤとの繋がりも凄く深いですからね。そんな色んな縁があり、最終的に12組に参加してもらいました。
——コンピは、今は特に売れませんよね?
北澤 : このご時世なんで爆発的にってのは難しいと思うんですけど、PENGUINMARKETの存在を広めるのと、所属バンドを世に残すキッカケになればいいのかなと。そこが大前提! だから販売数にそこまでこだわってるわけではないんです。レンタルもガンガンやるつもり。配信ももちろん。そこからでも少なからず広まる可能性はあるはずなんで。とにかく、彼等の音を少しでも聴いてほしいんです。
——PENGUINMARKETに所属してるアーティストが過小評価されていると思っていますか?
明石 : それはありますよ。もどかしいですもん。
北澤 : 僕は、sgt.がフジのWhite stageに出られるくらいに思っている(笑)。
明石 : ぶっちゃけ、それぐらいのシミレーションはいつもしてますよ(笑)。