ハイレゾで聴く色鮮やかな日本語とポップスの世界——新プロジェクト、“エミ・マイヤーと永井聖一”、始動
トヨタ自動車〈プリウス〉のCMタイアップ曲など、数多くのCMソング・ヒットを生み出しているSSW、エミ・マイヤー。相対性理論のギタリストとしてはもちろんのこと、近年では“山P”こと山下智久やムーンライダースなど、ジャンルレスなアーティストへの楽曲提供、プロデュースを行う、永井聖一。音楽シーンの第一線で活動を続ける彼らによる、直球な名前の新ユニット“エミ・マイヤーと永井聖一”の作品は、直球なポップ・アルバムだ。その内容は、全編日本語詞による、季節、時間を問わず耳にすっと入り込むような、優しい空気漂うポップ・ソングで構成されている。しかしながら、その楽曲郡には、ソフト・ロック、オールディーズ、ファンク・ビートなどの要素を織り交ぜるなど、彼ららしい“鋭い”音楽センスを見せつける内容である。まさにオールタイム・ベストとなりそうな今作をOTOTOYでは、24bit/44.1kHzのハイレゾ音源でお届け。
そして今回、このコラボレーション・ユニットが生まれた経緯、全編日本語詞にした理由などを、エミ・マイヤー本人に聞いてみた。そこからは自身のJ-POPに対しての敬意、そしてなによりも音楽を作り出すことへの情熱と愛を感じずにはいられない話の数々を聞くことができた。良い音と良い歌詞と共に本文を楽しんでいただけると幸いだ。
エミ・マイヤーと永井聖一 / エミ・マイヤーと永井聖一(24bit/44.1kHz)
【配信形態】
ALAC / FLAC / WAV : 単曲 216円 まとめ購入 2,469円
【Track List】
01. 新しい季節
02. 恋のシグナル
03. Surfin' Girl
04. 60000 Melodies
05. シアトル・グランデ
06. ダ・ダンス!
07. 明日はきっと
08. So Lucky
09. A Happy New Year
10. Coming Home
11. ラブ・オブ・マイ・ライフ
INTERVIEW : エミ・マイヤー
もっと成長した自分に合った曲も見せたい
——今回のプロジェクトを立ち上げた経緯を教えていただけますか?
エミ・マイヤー(以下、エミ) : 去年に『ギャラクシーズ・スカート』、一昨年には『スーツケース・オブ・ストーンズ』と、英語詞アルバムを出していたし、せっかくなので日本語のアルバムを作りたいっていう気持ちから始まりました。
——今作は永井聖一さんとの共同プロジェクトですが、どのように始まったのですか?
エミ : 今作を作るにあたって、日本語の作詞が上手くて、英語にも理解があるプロデューサーを探してたのですが、それをドラムで参加してもらってる山口モトキ君に相談したんです。その時に永井(聖一)さんの名前が出てきました。もともと相対性理論は知ってて、ライヴがとても印象的だったのですが、永井さんがギタリストだと知らなくて。それがわかった時にご縁があるなと思って。
——永井さんの印象はどうでしたか?
エミ : 永井さんのギターは、私が好きなジョン・メイヤーみたいに、ギターがリードのバンドじゃないのに、メインかのような存在感を持つ弾き方をしていると思いました。日本のバンドにもこんな人いるんだって。すごく洋楽的だったんですよね。
——なるほど。邦楽と洋楽を橋渡しできるプロデューサーが良かったのですね?
エミ : そうですね。J-POPの感性だけに限られてないし、かといって無理矢理洋楽にする感性でもなく、J-POPを“斜めから”見てる感性が良かったんですよね。今回は、前の日本語詞アルバム『パスポート』には似せたくなかったんですけど、やっぱりその延長線上も必要だなと考えてて。私と同じくCMソングとかをたくさんやってる永井さんなら、自分のエゴを少なくして、きちんと他人の意見を取り入れつつ様々なジャンルに対応してくれると思いました。そして、実際にそうだったので良かったです。
——永井さんが入ることで自身の音楽がどう変化してほしいと思っていたんでしょうか?
エミ : 日本でのライヴで毎回同じ日本語曲を歌うことに制限を感じていて。もっと新しい日本語の曲を届けたかったんです。飽きちゃうし、もっと成長した自分に合った曲も見せたいって気持ちが生まれたんですよね。
——自分の新しい世界が作りたかった?
エミ : そうですね。永井さんとチャレンジしたかったのは、今の自分が歌いたくなるような日本語の曲だったり、ポップやロックに寄りつつ、どのように日本語詞を入れるかっていうプロジェクトでした。
“日本ぽい”はチャーム・ポイントにしたかったんですよ
——アメリカと日本を行き来してる中で、日本の音楽は、エミさんにどう映りますか?
エミ : 今回のアルバム制作にあたって、色んなバンドやJ-POPを聴いたり、歌詞を読んだのですが、J-POPって本当にたくさんのスタイルが入ってるというのが、改めて分かりましたね。奥深くて、邦楽の見方も変わりました。日本とアメリカを行き来しながら、2年かけてこのアルバムを作ったのですが、アメリカに持って帰ってカーステで聴いても違和感がないようにしたくて。隣に座った友達にも「これは良い音楽だ」って分かってもらいたいってのが1番大事なコンセプトでした。
——特別“日本ぽい”とは思われたくなかった?
エミ : “日本ぽい”はチャーム・ポイントにしたかったんですよ。だから日本ぽくても、いろんな場面で対応出来る仕上がりにしたかったんです。例えば前作『ギャラクシーズ・スカート』制作時のデモをプロデューサーのデヴィッド・ライアン・ハリスに聴いてもらった時に、言語を超えて褒めてくれて。今回もそんな楽曲が作りたかったんですよね。
——もともと永井さんと作る時点で、ノリの良い、ダンサブルな作品にしようとする考えがあったのですか?
エミ : 全然そんな考えは無くて。逆に永井さんが持ってくる曲がもともとノリが良かったり、わたしが持ってきたしっとりした曲でも、永井さんがギターを足したら盛り上がる感じになったりと、自然な流れでそうなりました。
——永井さんは意図してたんですかね?
エミ : 永井さんの中で結構イメージが強かったかもしれないです。具体的なものは無いにしろ、明るいアルバムにしたいってのはあったと思います。
今は歌う事、曲を書く事がやりたいことなんだ、と思ってます
——制作はどのように進めていったのですか?
エミ : アメリカで永井さんとモトキ君と合流して、あまり深く考えず永井さんが持ってきた曲に音を足したりなど、デモを録って、それを日本に戻ってまた足しました。その段階で半分は出来てたんですが、それぞれの活動もあって時間が空いたんです。でも時間が空いたことで、後半はもっと色々試行錯誤出来たので、結果として2人のエッセンスが絶妙に混ざった良いアルバムになったと思います。
——最初から“エミ・マイヤーと永井聖一”ってアーティスト名でやろうと思ってたのですか? 今までの話を聞いてるとエミ・マイヤーさんのソロで、永井さんはあくまでプロデューサー、という感じを受けましたけど。
エミ : 最初はプロデューサーを求めてたんですけど、彼のアーティストとしての部分が出てきたり、私もプロダクションに関わるようになってきて、だんだん平等になったんですよね。
——楽曲が完成した後にこのタイトルはついたんですね。永井さんの1番面白いと思った部分はどこでした?
エミ : 私が半分出来てるものを渡したら絶対カッコいいものにしてくれたし、歌詞の直しをお願いしたらすぐ直してくれましたし、すごくセンスが良いと思いました。でも、お互い遠慮はせずに、意見を言い合ってできたのがプラスだったと思います。おかげで新しいひらめきも生まれました。
——今回6曲目「ダ・ダンス!」は、たむらぱんさんが作詞をされていますが、お願いをしたのはなぜですか?
エミ : “エミ・マイヤーと永井聖一”なのでいろんな人に頼むのはどうなんだろうってのがあって。永井さんは歌詞を書くのが好きだし、そこを人に頼むのも違うと思って。でも、たむらさんに頼んだのは、彼女の世界観にはすごく強い“女性像”があるし、それが出来るのはたむらさんだと思って、歌詞を書いてもらいました。
——逆にエミ・マイヤーさん自身が描きたい歌詞の世界観はどのようなものですか?
エミ : 英語詞の時はそこまで考えてないんです。その時歌いたいことだったり伝えたい事を素直に歌にしてます。逆に日本語の場合は、すごく受け身な女性の感じとエネルギーや熱意に溢れた女性の感じの、両者が欲しいんですよね。
——日本語にトライする上で気付いた魅力を教えてください。
エミ : 前から思ってたんですけど、日本語で曲を歌うと、今まで表現出来なかった部分が急に表現出来るようになるのですごく気持ちいいです。言語に対する敬意が生まれますね。
——今、歌を歌うこと、歌詞を書くことは、自身の中でどんなポジションになりつつありますか?
エミ : デビューしたころは飾り的なものでしたね。もともとはピアノのほうが長く、歌いだしたのが遅かったので、自分の声を全然理解してなかった。今は歌うことが、更に大きな存在になっています。去年の夏にニューヨークでライヴをしたのですが、体調不良で歌えなくなっちゃったんですよ。その時に「私は歌えなくなったら何をすれば良いのか」って考えちゃって。デビュー時は他にやってみたいこともあったんですけど、今は歌う事、曲を書く事がやりたいことなんだ、と思ってます。
——今後の展望はありますか?
エミ : やはりジャズですね。一度原点に戻ってジャズのスタンダード・アルバムを出す事になったんですよ。元々カバーが好きじゃなくて、やりたくなかったのですが、元の言葉やメロディの解釈が面白くもあり難しくもあることに気付いたのです。
インタヴュー : 飯田仁一郎(OTOTOY編集長)
文 : 浜公氣
「恋のシグナル」に続き、最新MV「ラブ・オブ・マイ・ライフ」が公開
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LIVE INFORMATION
エミ・マイヤーと永井聖一 Special Live "So Lucky"
2014年11月11日(火)@梅田CLUB QUATTRO
時間 : open 18:30 / start 19:30
料金 : ¥5,000(ドリンク別)
問い合わせ : 梅田クラブクアトロ 06-6311-8111
2014年11月12日(水)@billboard LIVE 東京
1st ステージ : open 17:30 / start 19:00
2nd ステージ : open 20:45 / start 21:30
料金 : サービスエリア ¥6,500 / カジュアルエリア ¥4,500(カジュアルのみ1ドリンク付)
問い合わせ : billboard LIVE 東京 03-3405-1133
PROFILE
エミ・マイヤー
アメリカを拠点に活動するシンガー・ソングライター。日本人の母親とアメリカ人の父親の間に京都で生まれ、1才になる前にアメリカのシアトルに移住。2007年にシアトル - 神戸ジャズ・ボーカリスト・コンペティションで優勝。その後、Jazztronik、Joe Henry、Yael Naimなど国内外の著名アーティストと共演を重ね、フジロックなど各地の大型フェスにも出演。その歌声と存在感で多くの聴衆を魅了している。09年にリリースされたデビュー・アルバム「キュリアス・クリーチャー」は iTunes Storeや多くのCDショップのジャズ・チャートで首位を獲得。iTunes StoreではJジャズ・カテゴリーの年間ベスト・ニュー・アーティストにも選ばれた。2010年にShingo Annen(Shing02)との共作となる全曲日本語詞の2nd Album「パスポート」をリリース。2011年はノラ・ジョーンズやシェリル・クロウでグラミー賞に輝くエンジニア、ハスキー・ハスコルズがミックスを手がけたサード・アルバム「スーツケース・オブ・ストーンズ」をリリースし、高い評価を得た。暖かなスモーキー・ヴォイスは数々のCM(トヨタ自動車「プリウス」、NTTドコモ「キッズケータイ」、キリンビバレッジ「午後の紅茶」やキユーピーライト、アヲハタ55ジャムなど多数)でも聞くことができる。 2012年にリリースしたミニ・アルバム「LOL」は収録曲「オン・ザ・ロード」がプリウスのCMでオンエアされ、スマッシュヒットとなった。またケン・イシイや大橋トリオとの共作曲でも幅広い層に支持されている。
永井聖一
1983年4月17日生まれ、東京都渋谷区出身。
2000年代よりギタリストとしての活動をスタートし、様々な活動を行なう中で相対性理論に参加。
コンポーザーとしてもSMAP、山下智久に楽曲提供したほか、Spangle Call Lilli Line「dreamer」、Chocolat「風邪」などのプロデュース・ワーク、ムーンライダーズ、Chocolat&Akitoのリミックス、UNIQLOやキユーピーなどのCM音楽を担当。
ギタリストとしても布袋寅泰、FISHMANS+のほか、様々なミュージシャンと共演。
2013年はやくしまるえつこのアルバム「RADIO ONSEN EUTOPIA」に参加、3年ぶりとなる相対性理論のオリジナル・アルバム「TOWN AGE」を発表するとともに、Emi Meyerとのプロジェクト“エミ・マイヤーと永井聖一”を始動。