新作発売記念! 連続インタビュー企画始動
下北沢発、奇跡のコラボがここに完成!! 有馬和樹の独特なヴォーカルと甘酸っぱい青春サウンドで、各方面から人気のバンドおとぎ話。彼らが渾身の4thアルバム『HOKORI』を完成させました! おとぎ話史上、もっとも自由にバンド・サウンドを炸裂させた一発録り(なんと、レコーディング期間は2日! )の楽曲群を、ROSE RECORDS主宰、曽我部恵一が奔放にミックス。サイケデリックなガレージ・サウンドと、ドリーミーなロックンロールが混在する、エネルギーに満ちた傑作がここに。OTOTOYも、おとぎ話と曽我部恵一のパワーに負けじと、なんとリリース記念メンバー全員インタビューを敢行。くだらない話から大まじめな話まで、深く深く話を聞いていきました。毎週連続で1人ずつ、1ヶ月に渡っておとぎ話の全貌に迫ります!
おとぎ話 / HOKORI
2010年11月11日発売
01. GANG STYLE NO.1
02. 遺伝子
03. ANIMAL
04. 科学くん
05. フランス
06. 輝き
07. カンフー
08. MOTHER
09. シンデレラ
10. STAR SHIP
11. weekend
おとぎ話 連続インタビュー・シリーズ 公開スケジュール
11月5日(金) 前越啓輔編 ☆過去作一挙販売開始!
11月11日(木) 牛尾健太編 ☆ニュー・アルバム『HOKORI』販売開始!
11月19日(金) 風間洋隆編
11月26日(金) 有馬和樹編 ☆OTOTOY独占LIVE音源の販売開始!
おとぎ話 過去作一挙販売開始!
前越啓輔 インタビュー
渋谷で共演した時に強く思った。今のおとぎ話が好きだ。決して奇をてらわないアレンジ。そしてライヴ。昔と一番変わった点かもしれないな。有馬和樹の曲を全員が信じ、その曲がバンドを経て名曲になっている。信頼が音になる。一緒にいる時間が音になる。気障だけど、バンド・マジックってそんなもんだ。その日の素晴らしいライヴを見て、今のおとぎ話を徹底解剖しようと思った。単純に知ってみたかった。どうしたら、こんなすげーバンドになれるんだ? どうしたら、そんなバカみたいにメンバーを信頼出来るんだい?
インタビュー&文 : JJ(Limited Express (has gone?))
俺じゃなきゃおとぎ話にならないよね
——アルバム名『HOKORI』にどんな思いを込めましたか?
プライドの「誇り」と、たたけば出てくる「埃」。どちらか一方に決めているわけではないんです。
——誰が考えましたか?
有馬ですね。スタジオの練習の後かな? 奇妙な感じのにできたらいいねって話してたんですけど、ふと「HOKORI」って言い出して。もともと、おとぎ話で自主で音源を作っていたときに、レーベル的な感じで「HOKORI」って載せていたんですよ。僕の顔がジャケットになっている2曲入りのCDがあるんですけど、その盤面には「HOKORI」って載っています。
——どちらの意味でもおとぎ話の等身大だと思うんですけど、プライドのほうの「誇り」を掲げようと思ったのはどうして?
最近、グッといいバンドになったんですよね、おとぎ話。今年に入って、ちょっとずつ変わっていったんです。みんなが全員を認め合って、素直になれた年が2010年だと僕は感じていて。昔よりもメンバーのことが好きになった。「有馬、最近何聴いてるの? 」とかって話をして、新しい洋楽のバンドを教えてもらったり。それが素直に頭の中に入ってきて、メンバー間のバイブスというか、距離、思考がグッと狭まってきたんですよね。
——きっかけとかはなく?
本当にちょっとずつなんですよね。去年皆で富士山にのぼったり、フレイミング・リップスやペイヴメントのライブを見に行ったり。ちょっとずつ凝縮されて密度が濃くなってきた。ライブをやっている最中も、「誰にも負けないぞ」っていう気持ちになれるようになってきたし。仮に僕らの前にレッド・ツェッペリンが出てきても、「精神誠意をこめてやれば勝てる! 」っていう自信がでてきた。それでプライドって言葉が簡単に出てきたんじゃないですかね。
——おとぎ話は奇を衒っていなくて、そこが良いと思うんです。バンドの自然体がそのまま音に出ている。リズム隊としては、風間君を意識していたりするのでしょうか?
意識してますね。僕はメロディを聴きながらドラムを叩くんですけど、ライブ中は、ずっとこっちを見てくるんで、10回くらい目が合う(笑)。「面白い顔してるなー」とか思いながら叩いています。あとはリズムに関してじゃないんですけど、練習の帰り道とかに、あいつとふたりでこそばしあったりしています。本当に気持ち悪いんですけど... (笑)。あいつがすごい敏感で、「うわあ! 」ってなるんですよ。「うるせーなお前! 」とか言いながら、「何やってんの?! 」ってことをずっとやってますね。
——10年来そんな感じ?
大学はずっと一緒。サークルも一緒だったので、ずっと友達だったんですけど、僕がおとぎ話に入ったのは後からだったから、どちらかと言えば、徐々にかな。
——メンバーの仲が良くなって、音はどう変わったと思いますか?
シンプルになっていっている感じはしますね。音数が減ってるというか。もともと手数が多いドラマーよりも少ないドラマーのほうが好きなので、僕の音数も少なくなりました。自信があるんでしょうね。派手なことをしなくても、「俺が叩いているんだから最高だよ」「ドン、タン、ドン、タンでも全然違うでしょ、他のドラマーと」っていう自信があって。単純であることが全然怖くないというか。「だって俺の音でしょ。俺が叩いているんだから間違いないよ」っていう意識が各々出てきているんじゃないですかね。下手だけど、「俺じゃなきゃおとぎ話にならないよね」って分かってきた。
——各々が、おとぎ話に対する自信を持てたってこと?
そうですね。「だっておとぎ話だよ俺」っていう感じ。ヤバいですね〜(笑)。でもそういう調子に乗ってる感はありますね。
——昔は調子に乗っていなかった?
昔は今ほどでもなかったですね。「ヘイ見ろよ! 俺最高だろ? 」って心では思っていても、口には出せなかった。
——なるほど。リリースがこんなにも早く出きたのも、そんな状況の良さからでしょうか?
こういう言葉で片付けるのもなんなんですけど、勢いが加速してきたんですよね。2010年。別にリリースするしないじゃなくて、自分たちで録音してみようぜって。そこから今度は自分たちの好きなアーティストに聞いてもらいたいよねって、リリース関係なく今のおとぎ話を聴いてもらおうと思った。それで曽我部さんの手に渡って、とんとん拍子に話が進んでいった。本田圭佑風に言うと「持ってる」んでしょうね(笑)。
——まだ制作のモチベーションは高いの?
高いですよ! 次のシングルを録り終えていて、その次のアルバムの曲をスタジオでやっていたりしますから。どうなるかはわからないですけど、バンバンやっていこうかなと。ROSE RECORDSとおとぎ話のタッグで、日本を盛り上げるだけ盛り上げたいって感じはありますね。
——おとぎ話で何をしたい?
バンド・ブームを作りたいですね。バンドって素晴らしいじゃないですか。泣ける! 絆というか... おとぎ話を聞いてバンドって素晴らしいんだよって感じてもらって、バンドを始める。そういう人がたくさん出てきたらいいな。俺が高校生のときにTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTを聞いて、『chicken zombies』が出た次の日に学校で皆でその話をしたときとか、思い出しただけで感動してくるんですけど(笑)。そういうことが、もしかしたら俺らなら出来るんじゃないかなって。
皆のテンションを上げられる男
——具体的にはどのくらいのペースで曲は出来ているの?
1回のスタジオで1曲とか。大体週2でスタジオに入ってるんですけど、有馬が曲を作るのが得意で。出来はどうあれ量産型なので。それを皆で合わせたら『HOKORI』に入っているような感じで出来上がるんですよね。
——有馬君が曲を持ってきて、それに対してどうアレンジしていくのですか?
普通に合わせると、有馬が「まあいいけど。つまんねえな」っていう顔をしてるんですよ。俺が「わかる、わかるよ有馬」と思って、ちょっとオーバー・リアクションなドラムを叩くと、有馬もガッとテンションが上がって(笑)。二人でテンションが上がったときはすぐに出来上がるんですけど、風間とか牛尾とかがちょっと考えていると、有馬のテンションもちょっとずつ下がっていって、「まあいいんじゃない? 」ってなってお蔵入りみたいな(笑)。だから、どんどんディストーション? あ、ディスカッション! ディストーション・ディスカッションで!
——(笑)。ひずんだ議論で。
そう! ひずんだ議論でパパパッと展開していく。でもそういう曲のほうが良いですからね。
——バンドの中で自分はどういう存在だと思ってますか?
俺は… (小声で)テンション。
——(笑)。
皆のテンションを上げられる男だと思ってますよ。笑ってあげられることって大事だと思っていて。有馬が曲を作ってきたときも、曲づくりに詰まった時も笑ってあげる。風間がベースに詰まったときも「おーい、ヘタクソ! 」って。「風間、お前がベース下手なのは分かってるよ! 」って笑ってあげる。牛尾がギター弾けなくても、「出た! 」っていって笑ってあげる。「困った顔してなんだよお前〜」って。それは意識しています。というか僕、それしか出来ないんですよね。才能があるわけじゃないし。その辺りはわきまえていますよ。
——牛尾君はどんな存在ですか?
牛尾は後輩なんですけど、初めて会った時に、紺で白いラインの入ったフランスっぽい感じの渋いジャケットを毎日着ていて。で、ちょっと髪の毛もカールしてて、顔があれじゃないですか? 「うわ、スッゲー奴が入ってきた! 」と思って。ギターの位置もちょっと高くて、ギターのネックを平行にして弾いていて。「うわーかっこいい! ギブソンだ。バーニーじゃねえよこいつだけ。18歳なんてバーニーだろ。こいつだけレスポール。ギンギンのやつ持ってるよ! 」って(笑)。そこが最高潮でしたね。
——(笑)。
そこから、どんどん牛尾が小さくなっていく感じがしてますね。最近は縮こまってますね。聞かなくてもいいよってことも、あいつも優しいんで、聞いちゃうんですよね。自分に自信がなくなって、自分からギターを弾けなくなってる。わからなくもないですけどね。
——牛尾君は、今は落ちているモードなんですか?
そうですね。でもそれも含めてのバンド愛ですよ。だから怖いんですよ。牛尾がキース・リチャーズみたいになったらどうしようかと。「俺美味しいとこしか弾かないから」ってなったら。
——おとぎ話にバンマスはいるのでしょうか?
有馬ですよ。ソングライターでもあり、バンド・マスターでもある。
——有馬君はどんな存在ですか?
有馬も好き。どんどん好きになるね。有馬とはこの一年で距離が縮まったんですよね。あと太ってきたね。昔の写真見ると、顔めっちゃ小さいんですよ。あごもシャープで。隙あらばお菓子ばっかり食べるから… ってこういう話が聞きたいわけじゃないですよね?
——(笑)。有馬君の曲を、どう活かしたいと思っていますか?
歌とメロディが聴こえていれば良い。俺はずっと歌を聴きながら叩いているから、自然と歌が乗りますよね。昔からそうで、レコーディングすると、Aメロとかめっちゃ溜めてるのがわかるんですよね。「え、俺こんなに溜めとるんや?! 」って驚く。これは逆に歌いにくいんじゃないかって、イントロからそのままのペースで叩くと「前ちゃん、ちょっと早いよ」って言われたりしますからね。あいつも若干溜まってほしいんでしょうね。
——完全にバンドになってますよね。
曲中でもどんどん変わっていきますしね。風間が一定のテンポをキープする。そういう時は目で「はやい」って合図をする。まあ、はたからみれば俺が遅いんですけど。
音楽=バンド=おとぎ話
——おとぎ話は今年で結成10年目ですが、もしメンバーの誰かが抜ける、となったらどうなると思いますか?
その時は、おとぎ話が終わっちゃうんじゃないですかね?
——個人的に辞めたいとかバンドが嫌だとかじゃなくて、もっと仕方のない理由があったとしても?
そんなん言われたら、辞めたくなくなりますね。うーん… でも俺はこの4人がいいから、俺はおとぎ話を辞めると思う。
——前越くんは、おとぎ話に命を懸けてる?
死ぬまでやっていたいんですよ、おとぎ話を。ずっと出来るのはおとぎ話くらいですね。
——長く続けたいってこと?
ストーンズみたいになりたいですね。
——そこに経済的な問題も出てくるじゃないですか? 売れる/売れないってことに関しては、どう考えていますか?
充実していればいい。売れても充実しないかもしれないし、売れなくても充実しているかもしれない。充実してないと自分が活きないじゃないですか。だから充実していればどっちでもいいですね。
——前越くんは今アルバイトしながらバンドをやっているんですよね? 充実さえしていれば、5年後10年後も現状のままでもいい?
そうですね。充実していないと思ったら、充実している方向へ変えていくんですよ。つまり今がものすごく充実しているってことですよね。
——前越くんにとって、音楽とはどんな存在ですか?
俺これ、この間すごい良い答え出したんだけどな〜一人で。「これやー! 」ってなったんですけど… なんだっけな〜。音楽は… 音楽って何ですか?
——(笑)。溜めるだけ溜めて!
音楽って、バンドかな。俺は。
——前越くんは音楽の中でもバンドが好きで、その中でもおとぎ話だったってこと?
そうですね、やっぱ 音楽=バンド=おとぎ話… 最高っすね。
——では最後に、『HOKORI』の中でお気に入りの2曲を教えてください。
「MOTHER」と「STAR SHIP」ですね。「MOTHER」は、今までのおとぎ話になかった、クラブ系の感じが出せてるんじゃないかな(笑)。
——なるほど(笑)。
この間誰かにバカにされたんですけど、俺の中では「デトロイト・テクノだ! 」と思ってますから。大学生のとき、セオ・パリッシュとかムーディーマンとか聴きまくってたのがやっとおとぎ話で出せた。ベースとドラムでループするのとかは今までなかったんで、本当に新鮮で。「STAR SHIP」は、録音の当日に有馬が作ってきた。有馬が弾き語りで歌っているのを横で聴いていて、「なんだこの曲?」って。この曲絶対にエラいことになると思った。これぶりぶりの感じでいったら最高の曲になる! って。歌メロも知らなくて、鼻歌で歌って、Aメロ/Bメロで間奏入ってアウトロねって録って、歌入れしたときに、「まぼろし〜」ってところで、「ああこの感じ日曜9時のアニメだ〜! 覚えてる覚えてる! 」と思って。
——(笑)。
俺小さいとき6時位に起きていて、「所さんの目がテン! 」を見ながらご飯を食べて、そのままアニメを見る。その感じですね。日曜9時のアニメのエンディング・テーマって感じで。「俺らここまできたか! 」っていう感じがありましたね。
おとぎ話 PROFILE
2000年に有馬とベースみたいな顔の風間くんが出会いバンドおとぎ話を結成。旅の途中、右手にBOSSのエフェクターを持って佇んでた牛尾くんと、りんごの星で野球帽をかぶった前越くんが仲間入り。
つまり同じ大学で出会った男子4人組のバンド。それが「おとぎ話」である。
焦燥と少年性の同居した1stアルバム『SALE! 』、絆と赤い情熱を描いた2ndアルバム『理由なき反抗』、日々の不安と感謝の季節を綴った3rdアルバム『FAIRYTALE』、そして、おとぎ話を語る上で重要な曲が収録された2枚のEP「ハローグッバイep」、「青春 GALAXYep」を現在までに発表している。
2010年で結成10周年。
日本における独自の表現と音楽の可能性にさらに磨きをかけ歩み続ける。
アルバム『FAIRYTALE』の発表以後衰えることのない制作意欲を止めるべきではないと2010年5月、おとぎ話メンバーのみでレコーディングを開始。2日間で全11曲を録り終わる。
その音源を聴いていち早く声をかけてもらった曽我部恵一氏とミーティングの結果ROSE RECORDSからのリリースが決定する。そして遂におとぎ話の4枚目のアルバム『HOKORI』が完成。その音楽性はますますオリジナリティを増し新たな扉を開けたおとぎ話の旅は続いて行くのである。