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2021-12

バブルの王様⑦「ゴルフ場錬金術」

 本日発売の週刊ポスト「バブルの王様」7回目。
「ここができた頃はまわりに大きなビルがなくて、見晴らしがよかったんです。遠くの富士山がはっきりと見えていたくらい。京王プラザができてから、隠れてしまった。このあたりもすっかり変わりしました」
 1989(平成元)年冬に東京・四谷のアイチ本社ビルの会長室で森下安道に初めてあったとき、本人がそう昔話をしていたことを思い出した。とかく暗いイメージが付きまとう貸金業者の根城を吹き抜けの総ガラス張りの明るいビルにしたことが自慢だったのであろう。森下には、そんな子供のようなところがあった。本社ビルを建てて間もなく、京王プラザをはじめとした西新宿の高層ビル群が現れた。
森下はバブル景気の訪れるずい分前から貸金業者として大きな財を成し、これでもかといわんばかりの錦衣玉食を楽しんだ。なぜあれほどまで莫大な財産を手にできたのか。その錬金術について、森下を知るある同業者は次のような自説を展開した。
「突き詰めると、森下さんは金融業者ではなかったんだと思います。手形割引でカネを貸していた頃はたしかにそう見えたけど、そこから先のやり方は違う。言ってみたら、森下さんの頼りは土地なんですね。つまり不動産屋だった。戦後、上がり続けてきた優良な地べたを持てば間違いなく儲かる、という土地神話の信奉者。土地を担保にカネを貸した時点で、すでにそれを自分のものにしている感覚でした。株にしても、美術品にしても、表向きそれを担保にカネを貸しているけど、よくよく見ると相手は土地持ち。金利で儲けながら、同時に不動産を自分のものにする。それが森下さんの狙いだったように感じます」
(以下略)

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プロフィール

森功

Author:森功
福岡県出身のノンフィクション作家。08年「ヤメ検」09年「同和と銀行」(ともに月刊現代)の両記事で2年連続「雑誌ジャーナリズム賞作品賞」。18年「悪だくみ 『加計学園』の悲願を叶えた総理の欺瞞」(文藝春秋)が大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
主な著作は「サラリーマン政商」(講談社)、「黒い看護婦」「ヤメ検」(ともに新潮文庫)、「許永中」「同和と銀行」(講談+α文庫)、「血税空港」「腐った翼」(幻冬舎)、「泥のカネ」(文藝春秋社)、「狡猾の人――防衛省を食い物にした小物高級官僚の大罪」(幻冬舎)、「なぜ院長は『逃亡犯』にされたのか――見捨てられた原発直下『双葉病院』恐怖の7日間」、「大阪府警暴力団刑事『祝井十吾』の事件簿」(講談社)、「平成経済事件の怪物たち」(文春新書)、「紛争解決人 世界の果てでテロリストと闘う」(幻冬舎)、「現代日本9の暗闇」(廣済堂出版)、「日本を壊す政商 パソナ南部靖之の政・官・芸能人脈」(文藝春秋)、「総理の影 菅義偉の正体」(小学館)、「日本の暗黒事件」(新潮新書)「高倉健 七つの顔を隠し続けた男」(講談社)、「悪だくみ 『加計学園』の悲願を叶えた総理の欺瞞」(文藝春秋)、「地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団」(講談社)、「官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪」(文藝春秋)、「ならずもの井上雅博伝 ヤフーを作った男」(講談社)、「鬼才 伝説の編集人齋藤十一」など。最新刊「バブルの王様森下安道 日本を操った地下金融」(小学館)、「国商 最後のフィクサー葛西敬之」(講談社)

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