なりものヤフー・井上雅博伝㉕「限界」
「テクノロジーだったら、僕でもまだやっていけるかもしれない。けれど、メディア企業としてやっていく自信はない」
二〇〇〇年代後半、米ヤフー・インクが自社制作の情報や番組を提供するメディア企業に転身しようとデータマイニングの部署をつくったとき、井上雅博はヤフー・ジャパンの社員を前にそう言った。データマイニングとはビッグデータの分析を意味する。産業技術はそこから現在のAI(人工知能)による種々のデータ解析時代を迎える。
ソードの研究所やソフトバンク技研でユーザーのデータ分析に携わってきた経験がある井上には、その分野の技術強化に多少の自信があった。だが、米ヤフーの目指すところは、その先だ。独自の情報メディアとして新たな道を踏み出そうとした。たとえば動画配信の「ブロードキャスト・ドット・コム」を買収し、情報番組の制作に乗り出した。(以下略)