コロナ給付金「性風俗を除外」 差別と区別の境界線 最高裁が判断
性風俗業を除外する――。
新型コロナウイルスが流行した2020年、緊急の経済対策として中小企業などに支給された給付金制度に除外規定が設けられた。
「性風俗は本質的に不健全」という理由だった。
職業差別にも見えるこの規定。最高裁が16日、合憲と判断した。
差別と区別の境界線はどこにあり、「職業に貴賤(きせん)なし」の戒めをどう考えたのか。
司法の根源的な役割を考えさせる裁判だ。
<主な内容>
・「国民の理解」というロジック
・最高裁が弁論を開かない意味
・「職業に貴賤はない」は通じるのか
納税し、違法営業なし
関西地方にある無店舗型性風俗店(デリバリーヘルス)の運営会社は20年9月、持続化給付金200万円と家賃支援給付金約100万円の支給を中小企業庁に申請した。
ところが、除外規定を理由に支給を受けることができなかった。
コロナ収束のために自治体が出した休業要請に従い、従業員の女性たちには収入減少を強いてきた。
他の企業と同様に法人税は納め、風俗営業法に基づき警察に届け出もして違法な営業はしていない。
「国家による職業差別だ」
会社代表の女性は弁護士事務所を訪ね歩き、司法に訴えることを決めた。
認められなかった二つの給付金の支給に加え、150万円の賠償を国に求め提訴した。
除外規定は「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反すると主張した。
不合理な差別、合理的区別
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない――。
憲法14条1項の全文だ。平等原則とも呼ばれ、基本的人権の核とされる。
法律の内容や行政の対応が憲法14条に反している場合、司法はそれを「不合理な差別」と認定する。
法律は改廃を迫られ、行政側は損害賠償を命じられることが多い。いわゆる「違憲判断」だ。
一方で、人間が生きる社会には必ず格差や序列が存在する。
そこに合理性がある場合、司法はそ…
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