1年前の能登半島地震では、石川県輪島市で「震度7」が観測されていたことが、発生から3週間以上も経過してから判明した。30年前の阪神大震災以降、近年の大地震でも、たびたび激震に見舞われた地域の震度が入ってこない問題が起こっている。救助などの初動にも必要な情報の「空白」はなぜ起こるのか。その時、何があったのか。関係者の証言からたどった。
この記事は3回シリーズの1回目です。
途絶した輪島の「震度7」 判明まで24日を要した理由
錯綜する神戸の初期情報 大阪で受け止めたアナウンサーが抱く後悔
機器の「多重化」進まず…滞る激震の記録 問われる想像力
3地点の「未入電」
「参集せよ」。2024年1月1日、午後4時10分。能登半島地震の発生を受け、国家のあらゆる緊急事態に対応する内閣官房「事態室」メンバーの川面(かわつら)顕彦・参事官補佐の携帯にメールが届いた。宿舎から走って約10分。首相官邸の地下にある危機管理センターに、息も絶え絶えたどりついた。
事態室は、首相や官房長官に情報を共有する役割を担う。「あらゆる手段で情報を集めなければ」。しかしすぐに暗くなり始め、消防や警察のヘリのカメラからでも様子がよく分からない。普段は参考になるネット交流サービス(SNS)への投稿も少なく、被害像はなかなか見えてこなかった。1日の深夜、判明していた死者は5人ほどだった。
しかし、川面補佐は内閣府の地震防災情報システムがはじき出した推計を見て思った。「死者40人と出ている。5人で終わるはずはない」
金沢地方気象台は、JR金沢駅からほど近い合同庁舎ビルの8階にある。元日の当直だった東屋(あずまや)義幸予報官は現業室に入り、午後5時をめどに出す天気予報の準備をしていた。
「ジャラン、ジャラン」。日本海側では珍しい冬晴れを切り裂くように、緊急地震速報のアラームが鳴り響いた。すぐに大きく横に揺さぶられる。8階という高さも揺れをさらに増幅させた。「危ないっ」。身の危険を覚え、現業室から廊下に飛び出した。す…
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