実物大の動くガンダム 「不可能」を可能にした挑戦の舞台裏

起動実験をする「動くガンダム」=横浜市中区で2024年2月29日、前田梨里子撮影©創通・サンライズ
起動実験をする「動くガンダム」=横浜市中区で2024年2月29日、前田梨里子撮影©創通・サンライズ

 横浜・山下ふ頭にそびえ立つ実物大“動くガンダム”。向かいにある建物のベランダから見つめて、つぶやいた。「何回見ても違和感がある。よくこんな大きな物が動くんだなって」。人工知能(AI)のロボットへの応用を専門とする研究者で、中京大工学部のハルトノ・ピトヨ教授(54)。まもなく公開終了となるのを前に、世界中のロボット専門家から「不可能」と言われた挑戦の裏側を語ってもらった。

 動くガンダムは、人気アニメ「機動戦士ガンダム」の主人公アムロ・レイが乗っていたガンダムがモデルで、大きさも同じだ。

 2020年12月に開業した「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA(ガンダム・ファクトリー・ヨコハマ、GFY)」で公開。オリジナルのストーリーに合わせ、ひざを折ってかがみ、腕を上げて人さし指で天を突く。アニメの世界から飛び出してきたような迫力の演出に、延べ150万人超(2月現在)が詰めかけた。

 作ったのは、14年にスタートしたプロジェクト「ガンダム・グローバル・チャレンジ」。原作者でアニメーション監督の富野由悠季さんや、恩師で早稲田大の橋本周司名誉教授らが名を連ねるリーダーズの一人として、ハルトノ教授も技術監修に携わった。

 精密減速機や運搬機械などの国内企業9社が結集。各社が最高の技術を持ち寄り、高さは6階建てビル相当、重さ25トンにもなる世界最大の人型ロボットを動かすことに成功した。

「ばかばかしいことやろう」

 きっかけは、勤務する中京大の研究室に橋本名誉教授からかかってきた電話だった。恩師は当時、早大副総長を務めていた。

 橋本さんは「今何やってる?」と聞くなり、「そろそろばかばかしいことやろうぜ」と言った。

 「ガンダム作ろう。君、ロボット好きでしょ」

 「2メートルくらいの?」

 「18メートルの作ろうよ」

 そんなやりとりの後、ハルトノ教授が「やりましょう」と答えるまでに時間はかからなかった。

 インドネシア出身のハルトノ教授が、初めて「機動戦士ガンダム」を見たのは、早大4年の時。在籍していた橋本研究室でだった。共に卒論に行き詰まっていた友人らと、だれかが持ち込んだビデオを夢中で見た。

 超人的な直感力や洞察力を持つ新人類「ニュータイプ」の少年、アムロ・レイが操縦するのが地球連邦軍の人型兵器、ガンダムだ。個性的な登場人物が織りなす人間模様や勧善懲悪ではないストーリーにも魅了された。「僕たちが一晩中見ていても、橋本先生は何も言わなかった」と笑う。

 それから約20年。実物大ガンダムを動かすプロジェクトのリーダーの一人になり、「ワクワクする日…

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