3月に政策転換? 植田日銀どう動く 「ウオッチャー」と考えた
植田和男総裁率いる日銀が、早ければ3月にも「異次元の金融緩和」を終え、正常化に向けたかじを切る――。そんな見方が市場で広がっている。率直に言って難解な金融政策。日ごろから日銀の一挙手一投足を追う「日銀ウオッチャー」とともに、その戦略に考えを巡らせた。
緩和の柱はYCCとマイナス金利
まずは現在の大規模な金融緩和策の骨格を整理しよう。
大きな柱は長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)だ。中央銀行が伝統的に操作対象とする短期金利だけでなく、長期金利にも誘導目標を設定。短期から長期の金利水準を低く抑え込んでいる。2016年9月に導入され、長期金利の指標となる10年物国債の利回りが0%程度になるように国債を買い入れて誘導している。
YCCに先立って同年2月から始まったのがマイナス金利政策だ。銀行などの金融機関が日銀に預けるお金(当座預金)の一部に、マイナス0・1%の金利を適用。対象はごくわずかだが、これが日銀が操作する短期金利に当たる。一定以上のお金を預けていると、本来とは逆に金融機関側が日銀に利息を支払わなければならない。日銀にお金を預けるよりも、その分企業への融資や投資に回すように促すのが狙いだ。
このほか、日銀は日本株に資金を投じる上場投資信託(ETF)などの資産を必要に応じて購入する方針も掲げている。ETFの購入は10年12月に始まり、徐々に拡大。今の購入上限額は年間約12兆円に上る。
長期戦の異次元緩和 黒田前総裁時代に形成
こうしたパッケージで構成される金融政策は「異次元の金融緩和」と呼ばれ、黒田東彦前総裁の時代(13~23年)に形作られた。23年4月に就任した植田総裁も基本を引き継いできた。
日銀は消費者物価が前年比で2%、安定的に上昇する「物価安定目標」の実現を目指している。デフレ(物価下落)からの脱却を図るため、低金利の環境を導いて企業や個人の投資や消費を促し、経済活動を上向かせるためだ。世界の中銀でも異例といえる数多くの手段で景気刺激を図ってきたが、依然として目標達成に至っていない。異次元緩和は10年超に及ぶ長期戦となっているのが実情だ。
大和証券・岩下氏「着陸態勢に」
ただ、ここにきて金融政策を取り巻く状況は一変。日銀が2%の目標の達成に自信を深めつつある。
ウクライナ危機などに伴う…
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