経済規模を表す代表的な指標である国内総生産(GDP)。「20世紀で最も偉大な発明の一つ」(米商務省)とも言われるが、近年は「十分に経済の実態を反映していない」として、見直しの動きが出ている。果たしてどうなるのか。
GDPで測れないモノ
「GDPを追求することが真に人々にとって幸せなことなのか。大変目新しい議論に接することができた」。鈴木俊一財務相は5月、新潟市であった主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議でそう述べた。
鈴木氏が「目新しい議論」としたのは、会議に招待したノーベル経済学賞受賞者、ジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授の講演だ。スティグリッツ氏は、経済指標としてのGDPの限界を指摘していることで知られ、講演では補完する指標の必要性などを訴えた。
GDPは各国の経済規模を測る共通の尺度として使われており、その増減は経済が成長したかどうかの目安となっている。G7をはじめとする各国はGDPを中心に据えて経済政策を運営しており、会議に居並んだ財務相らはその責任者でもある。
そんな各国の財務相らが、スティグリッツ氏の講演に耳を傾けたのはなぜか。
それは、GDPに反映されない経済活動が大きくなっており、「GDPが時代の変化に対応できなくなっている」との危機感があるためだ。
GDPは、一つの国(地域)で一定の期間内に生み出された製品・サービスの付加価値(もうけ)の総額だ。具体的には、企業がモノを作って販売、輸出して得た利益や、政府が発注した公共事業などを足し合わせるなどして算出。国連が中心になってまとめた「国民経済計算(SNA)」と呼ばれる国際基準に沿って算出される。
ただ、お金に換算するのが難しいものや、お金に換算する手法が定まっていないものを反映するのが難しいという欠点がある。
では、GDPに反映されない経済活動で大きくなっているものとはどのようなものか…
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