「白いダイヤ」の闇ルートを断て 食と保全、ウナギ研究者の闘い
「白いダイヤ」を守るために立ち上がった。ウナギの稚魚は色素が少なく、シラスウナギと呼ばれる。捕れなくなっており、その取引額は10年ほど前から1キロ当たり数百万円まで高騰。ダイヤに例えられる稚魚は、闇ルートでの流通や密漁が後を絶たない。
厳しい状況にあっても、2021年7月にあったウナギをテーマにした環境NGOのオンラインセミナーで、中央大教授の海部(かいふ)健三さん(48)は未来を見据えて訴えた。「違法なシラスウナギが流通している状況を好転させる、非常に大きなチャンスが現在、来ています」
ウナギの保全生態学の第一人者で、国際自然保護連合(IUCN)に設けられている「ウナギ属魚類専門家グループ」のメンバーを13年から務めている。メンバー10人のうちアジアからの参加は海部さんだけだ。
天然のニホンウナギの国内漁獲量は、この約60年で9割以上減った。ニホンウナギは14年、IUCNの絶滅危惧種に指定され「ウナギ好きの日本」にレッドカードが突き付けられた格好だ。ウナギの養殖は天然のシラスを捕って池で育てることで成り立っている。シラスの採捕(漁獲)や養殖には、国などの特別な許可や都道府県への採捕量の報告が必要だ。
しかし、養殖池に入ったシラスの量と報告量の両データには矛盾があり、こうした制度をかいくぐる不正がうかがえた。海部さんが14年末から15年春にかけての流通量などから、採捕量を報告しない「闇ルート」での流通や密漁が疑われるシラスの量を独自に計算すると計9・6トンに上った。全国の養殖池に運び込まれた総量の半数余りに相当する。「これほど異常な状況が普通にあるとは。この実態をもっと広く知ってもらわなければ」と強く感じた。
そんな中で、海部さんは16年のある日、東京都内で開かれたウナギ業界のセミナーに招かれ、闇ルートを含めた業界の実態をテーマに講演するはずだった。
ところが、開催の数日前に突然、セミナーの担当者から電話があった。「ウナギ業界の関係者か…
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