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核兵器禁止条約

核兵器開発などを初めて全面的に禁じる核兵器禁止条約が21年1月22日に発効しました。核軍縮の前進につながるか注目されています。

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核禁条約発効 廃絶に向け思考停止から脱しなければ 中満泉・国連事務次長

国連安全保障理事会で発言する中満泉・事務次長=米ニューヨークの国連本部で2020年2月26日、隅俊之撮影
国連安全保障理事会で発言する中満泉・事務次長=米ニューヨークの国連本部で2020年2月26日、隅俊之撮影

 核兵器禁止条約が22日、発効した。世界情勢が激変する中、核廃絶の実現に向けてこの条約をどう位置づけるべきなのだろうか。国連の軍縮部門トップである中満泉・事務次長(軍縮担当上級代表)に語ってもらった。【ニューヨーク隅俊之】

 ――核禁条約は採択から約3年半で発効にたどりつきました。これをどう評価しますか。

 ◆多国間の核軍縮条約はこの20年以上できていませんでした。核禁条約はその閉塞(へいそく)感を破ったという意味で歴史的な意義があります。新型コロナウイルスの影響で批准の遅れが懸念されましたが、他の軍縮をめぐる条約と比べても遜色のないスピードで発効が決まった。核軍縮の歩みを速めなければならないと考えている国が、それだけ多かったということの表れだと思います。

 核禁条約の批准国は小さな国や島国が多いです。しかし、どんな小さな国でもアイデアとビジョン、同じ志を持つ国同士で協力する政治力があれば、歴史的に意義あるものを作ることができるのが国連という場です。例えば、核禁条約の交渉を主導してきたアイルランドは、現在の核軍縮の基盤である核拡散防止条約(NPT)の生みの親でもあります。

 ――核禁条約の推進国や非政府組織(NGO)が、核保有国が入れないような条約を強行突破で作ったとの批判もありますが、どう考えるべきでしょう。

 ◆条約ができた背景には、近年、核兵器がもたらす「壊滅的な人道的結末」に焦点が当たるようになったこと、核兵器をめぐる国際環境が非常に悪くなったことなどがありますが、核保有5大国による核軍縮が遅々として進まないことへの不満が高まったことが大きいと思います。とりわけ、NPT再検討会議の交渉が決裂した2015年は転換点でした。

 NPTは、米露英仏中に永遠に核兵器の保有を認めるものではありません。第6条では核軍縮交渉を誠実に行う義務を定めています。しかもこの第6条は、核保有5大国が単に交渉をすればいいというものではないのです。1996年の国際司法裁判所の勧告では、全面的な核軍縮に向けて交渉を完結させる義務を負っていると踏み込んで指摘しています。

 核保有国が国際法上の義務を負っている核軍縮が遅々として進んでこなかったこと、むしろ逆方向に進んでいること。それがこの条約ができた背景にあるということは、重く受け止めるべきではないでしょうか。

 ――保有や使用の禁止など条約上の義務を負うのは締約国だけで、条約は実効性に欠けます。

 ◆私たちも、核禁条約で核の安全保障環境が一夜で変わるとは思っていません。核軍縮は、多国間条約や2国間条約、非核地帯構想などが組み合わさった複雑なものです。その一番の柱が、核保有5大国の核軍縮義務を定めたNPTであることに現時点では変わりはありません。重要なのは、…

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