碧血剣/袁承志
そして、性格の方もまっすぐで癖のない好漢である。善人が困っていれば手を差しのべ、のさばる悪人には容赦なくその腕を振るう。それでいて、むやみな殺生はせず、相手が改心しているようであればちゃんと許してやるし、面倒も見てやる。そりゃあっちこっちにこの人のことを慕う人たちが出てくるというのも無理はない。
おかげで、最初は敵として登場していたキャラクターが次々と仲間になってくるという、まるで少年マンガの王道パターンを見ているような状態になっていくわけである。
例えば、武林の盟主を決める大会で、自分の師匠である孟伯飛を押して承志と反目していた丁遊。この人、後にすっかり彼に惚れ込んでしまい、後で承志が孟伯飛のところにやってきた時には、あこがれの袁大哥が来たってウキウキしちゃってたりとか(笑)こうして崋山から降りてきてそう時間も経たないうちに、あちこちにファンを作ってしまっている袁大哥であるが、実はほんとは結構黒い人じゃないかと言う疑惑も(笑)
だって、相手が本気でかかってきてるのに、「傷つけちゃいけないから、木剣でお相手します」とか「わたしの得物はこれです」って酒と肉をとり出したりとか、なんかすごく効果的に相手のメンツをつぶしてるんですけど(^^;
それに、何鉄手から五毒教の三つの宝、金蛇剣と金蛇錘、それと宝の地図を返してくれと言われて、もう見つけちゃったから用無しの地図だけ返そうとしてるし(^^;
しかしそれでも、全体としてみればいわゆる男を下げるような場面はほとんど見当たらず、まず文句の付けようのないヒーローではあるのだが、やっぱり女っ気なしで修行に明け暮れていたせいか女心に疎いのが玉に瑕。
終盤になって、青弟と阿九、二人の女性のうちどちらを取るか選択をせまられたるわけなのだが。(このあたりを、仲間になって間もない何守に読み切られて、もてあそばれたりしてたなぁ(笑))。自分の情の赴くままに阿九をとるのか、それとも(半ば自分のために命を落とした)温儀との約束を貫くのか。最後の青弟の暴走もあって結局は情ではなく義をとったわけだが、ほんとうにそれでよかったのか、というのはやっぱりちょっと考えてしまうよな。
原作だとドラマと比較して阿九のほうがぜんぜん掘り下げられてないというか、
阿九が一方的に乙女ちっくな想いを袁大哥に抱いている、という色が強い感じがしました。
だから結果的に最後に青弟を選んでいても
そこまで「なんだかなー」という印象は薄いんですが、
ドラマのほうだと、なまじ阿九のほうを掘り下げて
袁大哥とのお互いの気持ちを深めちゃった分、
最後の選択にそのしわ寄せが来ちゃった感じですね。
自分のとこにも書きましたが、そのおかげで結果的に終わってみれば
物語としての余韻が増したというのはあるんですが、
それはそれとして最後の選択をもうちょっとちゃんと納得できる形で
きちんとやって欲しかった、という気持ちは確かにありますね(^^;
この感じって、「コジンと蓉儿、どっちと結婚するんだ!」って迫られた靖哥哥が
コジンを選んじゃって、「そりゃねえだろー!」と目が点になったあの時に
とても良く似てる気がします(笑)
(まあ、「碧血剣」自体が金庸先生の初期の作品だということを考えると
「射雕」ではサブキャラやりたい放題といい、ヒロイン関係の決着のつけ方といい
正当に進化した末のものだったんだなーということが実感できますが)
2008.03.15 (Sat) | Manbo #mQop/nM. | URL | Edit