フジブロFM3とバリグレードWP
今年のビッとしたことは、かなり過日になるのだがポートレイト撮影会の合同写真展に展示したのだ。
予算の都合上、「古アパートを改装したクラフトワーク共同工房兼販売所」みたいなところで展示をしたので、来場者は少なかった。というか、そもそも建屋の来場者が少なかった。前に人がすれ違うのも困難なほど人が入っていたことがあったのだが、あれは有名なテナントが一時的に入っていたのだろうか。
今回の話は印画紙が主題なので添付画像に注釈を入れさせていただきたい。
これは六つ切りのバリグレードWPを3号で焼いたものである。もう少し焼き込んだほうが好みなのだが、モデルさんの視点からすると、この塩梅がいい気がしたのだ。
そうはいってもプリントを展示するのは良い気分だし、モデルさんも数人いらしてくれて開催して良かったと思う。できれば写真家や芸術家を気取っている、いけ好かない連中も見に来て下さるギャラリーで展示したいものだが、予算が3倍以上になってしまうので難しいな。
この「なんちゃって高校生」はリサイクルショップで500円で買った期限が何時切れたかさっぱり想像ができないほど風化した四つ切りのフジブロFM3のもの。100シートだったが、案の定、不用意に袋を店員が開けたらしく異常感光していた。しかし、3/4以上は使い物なったのでラッキーだったな。
ちなみに「なんちゃって」は上の方ではなく、下の方にだった。撮影終了後に判明したのだが、現役中学生のポートレイト写真を撮るというのは軽く犯罪的に感じたぜよ、おっさんは。
でも、ガンガールズシリーズはそのうち何とかしたいと思っている。ギャラリーを借りるのは無理としてもパブやカフェの壁は借りられるだろう。そういう箱が名古屋にもあるのよ。
もっとも、拙僧の写真を写真家や芸術家気取りの方々に評価して欲しいとも思わないし、変な感想を言われるとイラつくだろう。しかし、自分としても区切りというのはつけたいな。何しろモデルさんのクオリティは大変満足なものであるからな。
柔らかいアウトラインと質感の女子と無機質でマテリアルの質感のガンの組み合わせは面白いと思うのだが。極めて少数の方々にだけ評価していただければいいけど。
ちなみに、このコルトパイソンの女子は期限キレの四つ切りフジブロFM3で焼いている。
D3とD3xを使い分けて真面目に画像データを弄るメンバーから「なんで期限キレの印画紙を展示会に使うんですか」と質問があった。彼は高校時代から写真を始め暗室の経験がある。画像データの補正も繊細かつ正確で念入り。彼からするとゴミも焼き込んで、時折プリントに焼いたネガが斜めになっているのも気になるようだ。多分、暗室時代からそういうポリシーであり、現在もであろう。実際に彼の撮影した画像は撮って出しの画像とは明らかに一線を画しており肌色はどのプリントも均一で質感がある。
拙僧などは、このペンタックス6x7にタクマー55mmF2.8で撮影したアクロスで質感を出そうとしちゃうのだが、真逆のアプローチだな。しかし、彼のプリントのいくつかは拙僧から見ても極めて魅力的だった。
この感度のよい女子は四つ切りのフジブロFM3である。
それで、どう答えたのかというと「期限が大幅に切れた印画紙はラチュードが狭くなって眠くなるんですよね。なんだけど、感光時間が絶妙に決まるとガンの質感が黒く沈んでモデルさんの肌を抑え気味にディテールを表現するんですよね」と答えたのだ。
D3氏は「意図があるならいいんです」とか「それでも僕はゴミを見てしまいます」とおっしゃった。ゴミに目が吸い付けられてモデルさんの顔に関心が向かないなら、それはゴミのせいではなく拙僧の写真が下手なんですよと軽口を叩いてしまったが、タマにはいいよな。この撮影会のメンバーとはうまくやっていきたいので発言は気を付けているのだ。
勿論、本当の理由は「安く転がっていたから」である。
この写真は六つ切りのバリグレードWPで、期限キレと言っても1~2年ほどだと分かっているので、それなりに容易に調子を出すことができる。
実際、どうかというと期限キレがそれほどでもなければ焼くのは楽だし調子の幅も広い。例えば、このフジノン55mmF1.8のプリントはバリグレードWPだが艶のある柔らかい諧調とアウトラインは風化したフジブロFM3では出せないだろう。
しかし、印画紙は高くなった。フィルムについては楽観的だ。しかし、この際、活きのいい印画紙を新品で買おうとしたらバリグレードWPが製造中止になっていたのだ。ビック.comでも在庫限りだったので六つ切りの20シートを2袋買ったが、まだ残っていたら2袋くらい追加注文しようかなあ。
かつては、もっぱら期限キレか期限切迫の安売りしていた印画紙しか使わなかったが、そんなものは既に流通を終えていて新品の印画紙の選択肢も狭くなっている。それでもフジフィルムの印画紙は新品を買うことはできるが、イルフォードの印画紙なんて高くて買うのは不可能だ。フジフィルムも残ったのはフジブロだけなので、今後は単号紙しか使えないことになるな。
今回、焼いてみた個人的な感想なのでテクニカルには全く根拠はないのだが、期限の風化した印画紙だと黒が先に沈む気がする。この四つ切りのフジブロFM3で焼いたプリントは明らかに感光不足なのだが、ポートレイト写真としていい感じなので展示した。実際には肌ももう少し焼き込んだプリントも焼いたのだが、ポートレイト写真的にこっちの方がモデルさん映えすると考えたのだ。
100シートの印画紙は使いきって、後は同じようにリサイクルショップで500円で買ったフジブロFM4と期限キレで安く買ったり頂いたりした複数のブランドのキャビネ判の印画紙が200~250枚ほど、L判のフジブロFM3が100枚ほど残っている。これらを使いきったら暗室を作るのも覚悟が必要になるだろうな。
4号の単号紙なんて使い道が限られるのだが、試しにスナップ写真でもプリントしてみようかなあ。拙僧のブログやコンテンツの主題である「レンズの描写で蘊蓄をたれる」という素材としては使いづらいけど。それにしてもテスト焼き用の印画紙の大きさも小さくなるだろうし、それだってシリアスに扱うことになるだろう。
それでも、フジフィルムが現在の価格帯で印画紙を供給し続けてくれるのを祈るばかりなのだが。
本ブログはフィルム写真が無くなったら存在が難しいかなあ。
文章は同じなのだが、大きな画像を用意したコンテンツもご覧いただきたい。
本年もありがとうございました。
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コメント
三河の将軍様
古代鏡玉と玉止め板と玉止めの輪が明日頃そちらに着きます。
また三河から相模横須賀村へのブツは急ぎません~。写真は焼いて南保ですね。
デジカメやフィルムをスキャンして、こんなに映っている。。。と思っている自分を反省してます。紙に焼いてアルバムに貼ってなんぼのしゃしんですものね。来年も何卒よろしくお願いします。これから武蔵野国は国分寺へまいります。東芝の塔がいつの間にか2本になってましたね。
投稿: 横須賀与太郎 | 2017年12月30日 (土) 10時31分
どもども、横須賀鎮守府政治広報参謀長殿。
おお、お年玉を頂けるのですが。謹んでお受けいたします。
例のマックな野郎ですが、既に発送いたしました。どちらの好事家のお方に御落札いただいたのかとお名前を拝観して「やはり」とウナざるを得ませんでした。
お金を頂く物かとも悩んだのですが、例のV3をひとまず弄ったら、お礼とさせていただければ幸いです。
やっぱり印画紙に焼いた写真はいいですよ。でも、そうそうできる趣味ではなくなりましたねエ。
来年もご教授よろしくお願いします。
よいお年を。
投稿: Rikkie | 2017年12月30日 (土) 15時22分
あはは、あれは通販生活の良心とはいかに。。。確かあのクラスのものが通販生活で売られていたように思うんですよね。キヤノンなどのあの頃のものと比べて遜色がなければ、通販生活とGOKOの完全勝利なんです。確かに単焦点のものは別として、あのクラスで接写アタッチメントは面倒です。なくなるでしょうね。でもひもで距離を測るというオーソドックスな方法を用意してくれたのはすばらしい.それで2万円台だったようです(ジャストこの機種かどうかわかりませんが)。
やはり最後の背面を向かれて振り返っている写真に。。。どうもこの背面のショットに私情が入りますな。
投稿: 横須賀与太郎in武蔵国 | 2017年12月30日 (土) 18時40分
どもどもRikkie師匠。
今日の写真 一番好きですね。生き生きして 画面から出てきそう。
私も一度だけ写真展をやったことがありますが、カメ爺とおぼしき 自称上級者的なおっさんに ぼろくそにけなされたことがありました。あれにはがっかりでした。ので 気持ち とてもわかります。
ところが 夜中の三つ峠に ライトもなしで登り 必死に撮った富士山を、30分くらいずーっと見ていた方がいました。そして「これいいね」と言ってくれました。あれは忘れられないですね。
師匠の写真展実は行きたかったのですが ちょうどそのころ体調が思わしくなく。ぜひ生プリントで見たいと思っておりますよ。
投稿: 豆腐屋のとりおた | 2017年12月30日 (土) 19時45分
どもども、横須賀与太郎in武蔵国殿。
革命は西側から起こり、それを挫けさせるのが東側ですな。「東ヨーロッパ」という単語に惑わされますがロシア革命が起こったのは極西のサンクトペテルブルクですから。パ市の市民革命もモスクワで挫折し、八路軍が可笑しくなったのも延安から北京に遷移してからでした。
それはともかく、どういうわけか5年前なら200円で転がっていたカメラが0が二つ増えた世の中です。xxxのレンズの素晴らしさを語る青年に「熱くなっているけど、そのレンズを作ったのは日東光学かアベノンぜよ」というのは粋でないし、カメラメーカーがフラッグシップ一眼レフデジカメのバッテリーまで内製していると信じている御人に、それを指摘するのは無意味です。
「キヤノンで最も気に入っているレンズ?うーん、プリズマ」というのをmixiのフィルムカメラフォーラムでぶちまけるのをギリギリ防いでいるんですよ。
最後の写真の肌の透明感も期限キレの3号紙だからこそ出てくるんですよね。頭のいい連中は利口な手段があるのでしょうけど、ひたすら安物の期限キレ印画紙で焼いていた知恵も認めていただきたいですな。
投稿: Rikkie | 2017年12月30日 (土) 21時44分
どもども、豆腐屋のとりおた殿。
そう言っていただけると嬉しいです。
やっぱり、印画紙に焼くというのは厄介な作業ではありますが、写真というのが完成するのは、ここに至ってという気がしますね。
その辺のエネルギーが評価につながっていれば嬉しいです。やっぱり、ネガをスキャンしたものと焼いた印画紙をスキャンしたものの違いを感じていただくのはモノクロメインの写真趣味冥利に尽きますね。
拙僧は割とファンタスティックなスタイリングなのでカメ爺のゴタクも「俺の写真が、なんすか?」と言うとコンパクトにまとまるのですが、いい気はしないですね。もっとも、合同写真展で唯一褒めてくれたのが拙僧の写真だったなんて聞くと、権威主義を嫌っている拙僧も嬉しいものです。
拙僧の写真なんてのはデートの後にあれやこれやと考えているカップルが、「パートナーがトイレに行った時にふと眺める」なんてのが最高のロケーションなのですが。
拙僧の写真の為に御足を運んでいただくなんて滅相も無いですよ。次回に帰京するときにプリントを持参しますから中古カメラ屋ツアーに御参加いただき、後にルノアールあたりでご覧いただき、クスリと笑っていただければ幸いです。
フォトコンで褒められるような写真を撮りたいとは思わないのですが、特定の少数の方々に「やるね」と思っていただけると最高に嬉しいですね。
投稿: Rikkie | 2017年12月30日 (土) 21時53分
まいどです Rikkie師匠。
最近はまじめ写真ネタばかりで、裏が寂しいっす...^^;)。
奥様・ご家族の皆様とも、良いお年をお迎え下さい。
ではでは、また来年/^^)。
投稿: 鍛冶屋 | 2017年12月30日 (土) 23時20分
どもども、鍛冶屋殿。
ご返信が遅れて申し訳ないです。
年末・年始にかけてネットオークションの出品と処分したカメラの梱包・発送で大忙しでした。勿論、不良債権を覚悟していたブツが、ちょっとスイートな価格で旅立って行くのは嬉しいです。
その代わりガンやミリタリーアイテムが無秩序に増えているのですが。
何かと手が回らないのですが「ガンガールズ」は画像や写真だけは増えているので、コンテンツをまとめたいところです。
本年もよろしくお願いします。
投稿: Rikkie | 2018年1月 2日 (火) 07時22分
あけましておめでとうございます。
オートボーイピリズマというと、キヤノンの3枚玉ということで1度は調査をということになりましたが、、、RDPIIIを食わせましたが、あんなに写らない、抜けの悪いキヤノンのレンズも珍しいですよ。全くいあまの若いものは何を考えてるんだか。キョーセラTプルーフはリバー猿はすばらしいですが、露出がリバーサル向きでネガは色が乗らなくてだめ、暴投しているナチュ24mm/1,9黒などは発売当時に買い使い倒しましたが、よい24mmレンズが余裕でかえますね。
ファッションを気取るにももう少し経済性、それか安いぽんこつ、バリットクラシックカメラで決めてもらいたいものです。
投稿: 横須賀与太郎in武蔵国 | 2018年1月 2日 (火) 13時26分
どもども、横須賀与太郎殿。
ありゃ、プリズマは抜けが悪いですか。
なんだか、オートボーイFXLと勘違いしていた気がしますね。ニコンだと感動するのですがキヤノンだと印象が薄くなってしまいます。
こないだキタムラネット中古とかマップカメラとかフジヤカメラの中古を調べたんですよ。フジTW-3が2.4万円くらいするんですよね。ファッションも何が何だか。
個人的にはブラウンのパクセッテとかビトーBあたりがファッショナブルと実用性のバランスがいいと思うのですが。もっとも、高騰しても困りますが。
ケース付きニコマートEL+オートニッコール50mmF2が4000円でやっとこ売れるのにねエ。
投稿: Rikkie | 2018年1月 2日 (火) 13時34分