ミノルタ X-700
拙僧はホームヘルパー2級の資格を持っている。拙僧の素性を知っている方々からすれば「なんで?」って感じだな。拙僧も高齢社会の祖国の問題について身を挺して社会正義を実現したかったのである。勿論、嘘だ。つまり、少年期からデジタルな思考で生きていたから、思いっきりアナログな職に関心を持ったのだ。それが見当違いなのがはっきり分かったのは、職安の3ヶ月のスクールで教師が言った次の一説に現れている。
「この職業は、他人のおしっこの臭いが自分と違うと思う人は向きません。」
何を言っているんですか。拙僧のおしっこの臭いが他人と違うって?当然じゃないですか。拙僧のおしっこの臭いはあなたと違います。それで、逃げ帰るのも手なのだが、折角の資格のチャンスを「おしっこの臭いが違うから」で不意にしては、流石の妻も怒るだろうから、せめて単位は取らないとね。
「このお爺さんは、戦争の話が好きだから、戦争の話をして。」
ホームヘルパー2級の資格を取るには、前線での経験が必要なのだ。所謂、高齢者施設であり、簡単には「特養」という。そういう、命を削るフィールドで3日を経験しなければならない。それで、風呂に入る順番が混雑しているので、該当1名のお爺さんの話し相手をしてくれと言う、スタッフの指示が前述なのである。しかし、戦争の話ですかあ。相手を選んで下さいよ。パンピーの拙僧なんてボキャブラリーが狭いですよ。お爺さん、前の戦争では兵科は何でしたか?歩兵ですか?
「戦車を操縦しておった。」
おおっ、戦車兵。それは御見それしました。戦車も97式とか98式とかございますが。
「一式じゃった。」
一式も中戦車と砲戦車がございますな。
「中戦車じゃ。」
一瞬、爺さんのうつろな目つきに光が見えた気がするなあ。っていうか、一式中戦車?爺さん終戦時にはどこにいたの?なに、栃木?ああ、九十九里浜から上陸した敵軍を迎撃する為に本土に呼び戻されたのかあ。えっ?っていうことは第一戦車師団?この爺さんが?あんた、牡丹江の寧安にいたことは無いかい?満州だよ。しっかりしてくれよ爺さん。もしかしたら、妻の親戚筋のパルチザンと一戦交えた可能性があるよ。あっしは嫩江に行ったことがあるんだよ。哈爾濱から加格達奇に北上するxx鉄道の終点手前だよ。あんたらが、事変で張学良の部下に鉄橋を爆破させられたところだよ。教育連隊が駐屯していたろ。ああ、戦車隊までいたかは分からないなあ。俺は、丁寧に鉄道で北京から28時間かけて北上したんだけど、戦車戦にはもってこいの地形だったよ。思い出してくれよ。斉斉哈爾だよ!!
と、ここまで話したところでスタッフストップがかかったよ。何だよ、ここからが面白くなるのに。それで、要注意人物として、スタッフも拙僧を直接ご老体に接する仕事は避けるようになったから、上手い具合にいったものだ。最終日に
「反省点を述べて下さい。」
などと、寝言を言うので「反省どころか、1日目で逃げ帰ると思っていたのに3日も持ちこたえるとは、自分の適用能力に驚いた。自分で自分を褒めてやりたい。」と捨て台詞を吐いたな。いや、そういうところで毒を吐くのは如何な物かと、自分でも思っているのだが。
ミノルタというブランドは、ライカとのリンケージやαショックでオヤジ汁の臭いがして、剣呑だというパブリシティの向きがある。しかし、拙僧は女子色があると思うな。実際、ミノルタを持つ女子というのはソウルでも見たけど、ちょっといいものである。つまり、ニコンやキヤノンのようなスペック・論理武装は男子にとっては魅力的なのだが、女子の感性としては避けたいものである。そういう意味で、女子のデジペン率の高さやペンタックスの評価に現れている。お手製のストラップにK-mというのはいい絵面だ。女子指向のデジ一眼の市場はパナソニックが開拓した。明確なコンサバスタイルは一時的に赤文字系女子を影響下においたが、流動性の高いガールズ市場にイニシアチブを取るには至らなかった。「ペン」という伝統性に、直接的な血統は絶たれていてもブランド力をガールズに響くとは、当のオリンパスも想定外だったのではないか。現に、OM-Dを出したが、あれはガールズと話を合わせたいスペック主義男子のカメラではないかな。
ミノルタは、上手くすればガールズに支持される可能性があったと思う。そうはいっても、民生ブランドとしては消滅してしまったのだから、今更、熱弁をふるっても仕方ないな。
拙僧が戦車のくだりを持ち出したのは、例のキングのタンクを見つけた地方のリサイクルショップで89式戦車のプラモデルを見つけたのだ。こんなブサイクな戦車にニーズがあるのかと感心したら、よく見たらボックスアートの車体に「バレー部員募集!」とか書いてある。おお?「За СССР!」とか「この戦車はどこそこのコルホーズの寄付で購入した」とかじゃないの?あれは別の国か。と、思ったら、よく見たら萌えキャラが添えてあるのだ。そういえば、拙僧も噂で戦車と萌えキャラの組み合わせは聞いたことがあるな。なんでもかんでも萌えキャラと組み合わせるのは、飯能辺りの町おこしなら可愛いけど、全国展開のキットだと気に入らないな。ちなみに西原のいう「戦車とロリータ」というヌード写真集は本当に有ったぞ。こんなことになるなら買っとけばよかった。とはいえ、拙僧も当時は高校生だからちょっと手が出せないよな。って、いうか、男子率90%の工業農業高校の正面玄関の向かいの本屋で、そいう本を売るのは如何な物かな。兎に角、デザイン・製造はファインモールドだから素晴らしいキットなんだろう。
戦車に女子とか銃器に女子(八重の桜、ナウシカ)とかは、安易に男子は妄想を巡らせるのだけど、実戦では役に立たないな。Bf110が本来の用途に使い物にならないというのも、ロンドン爆撃を実際にやってみないとリアルには分からない物だ。
89式戦車を欲しがる方からすれば、萌えキャラとのコラボレーションなんて舌打ちものだろうが、それでもクリーンなキットが手に入るのだから、良し悪しか。
コンテンツもご覧いただきたい。
もっと、カジュアルな話にするつもりだったのだが。
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コメント
こんにちは。
>一瞬、爺さんのうつろな目つきに光が見えた気がするなあ
たぶん、その通りだと思いますよ。
年寄りは、話を聞いてくれるだけでも、生き生きとしてくる人がいるのに、ましてや子どもほどの相手が話の内容がある程度分かって、会話してくるんですから、昔の記憶がよみがえってきたんでしょうね。
その爺さん、少しは長生きできるんじゃないでしょうか。
このブログを見るたびに、眠っているデジイチ2台を使わなければ、もったいないと思いつつ、先日、持ち歩いたけど、結局コンデジで撮ってばかりいました。
写欲がなくなってから、デジイチを重く感じます。
東山動物園で、デジイチとレンズ3本とコンデジ2台が入ったカメラバックと三脚バックを担いで歩き回った日々が信じられません。
投稿: mi84ta | 2013年5月18日 (土) 03時25分
まいどです Rikkie師匠。
今回も本分・コンテンツともに楽しませて頂きました
・・・っても、お話の半分しか分かりませんが^^;)。
>・・・他人のおしっこの臭いが自分と違うと思う人は向きません。」
自分には、絶対無理な世界です・・・。
投稿: 鍛冶屋 | 2013年5月18日 (土) 08時15分
X-700ですか。いいですねぇ。
Rikkieさんのミノルタ分析なかなかおもしろいです。
たしかにCANON,NIKONとは違う柔らかいブランドイメージがありますね。
SWEETの成功はその辺りの力もあるのでしょうか。
ミノルタといえば、水俣を写したSRTや宇宙へ行ったハイマチックという硬派な面もありますが
自分の印象はX-7の宮崎美子のCMのイメージでしょうか。
木陰からの隠し撮りという印象がいまだに拭えないです(^^;)。
ヘルパーの資格まで持ってらっしゃるとは流石です。
おじいさんと兵隊話で盛り上がれるのは
なかなか普通のヘルパーさんにはできませんね。
>他人のおしっこの臭いが自分と違うと・・・
それは、鼻が詰まっていれば問題ないということでしょうか(^^;)
投稿: ボロッソン | 2013年5月18日 (土) 10時32分
写真民族として最も活動的であった高校時代の主戦兵器でした。
さすがに純正レンズには手が出せず安レンズを付けてましたが、
TXの100フィート缶をコニカのパトローネに詰め替えてあれこれ撮っては焼いていました。
キヤノンAE-1、ニコンFEあたりがライバルで、周りの連中も大概どちらかを使ってましたが、
彼らに貸すと初回はシャッターボタンのストロークの短さ故に半押しのつもりで切ってしまうのが常でした。
投稿: 猫印 | 2013年5月18日 (土) 20時54分
どもども、mi84ta殿。
言語に障害を持った方でも、日本語的には何を言っているかさっぱり分からないのですが、時間をかけて丁寧に対応すれば大まかなことは分かります。「カレーライスですか、ハンバーグですか」と、情報を詰めていくんですよね。勿論、正規スタッフにそんな暇はないですから、そういう時こそボランティアに任せたらいいと思うんですよね。スタッフと同じようにおむつ替えをやっている場合ではありません。当然、あっしはそんなことはしませんでしたよ。
しかし、ご老人方の仰りたいことは、
「ここは嫌だ。家に帰りたい。」
に尽きますね。あっしも、あのような「集団再教育施設」に入らなくて済むように、頑張ってお金と環境を整えねばです。
投稿: Rikkie | 2013年5月19日 (日) 05時54分
どもども、鍛冶屋殿。
コンテンツも読んでいただき、ありがとうございます。
介護の世界は、看護の世界もでしょうけど向き不向きがありますなあ。中には大喜びでおむつ替えをする男子もいましたが。拙僧などは理屈をつけて避けて逃げていましたが。
本当に、有意義な老後を過ごすには、今は辛くても頑張らねばと真剣に思いましたよ。
投稿: Rikkie | 2013年5月19日 (日) 06時01分
どもども、ボロッソン殿。
ミノルタは名前でも得をしていると思うんですよね。みっひーでもみにーでも、ボーイフレンドの名前で「みのるたくん」なんてのがいそうですが。
ううむ、確かに隠し撮りとも見えますな。多分、彼氏が彼女の一シーンを撮ったというシチュエーションなのですが。今なら、クレームがつくかなあ。
ミノルタの硬派なイメージは、必ずしもスペックマニアの物ではない点で関心深い物です。そういえばミールにもミノルタは行っていますね。ゼニットでは流石のソビエトも不安だったのでしょう。
鼻が詰まっていても、ビジュアルで拙僧はダメですねえ。
介護の世界は過酷な割にサラリーはびっくりする程、安いですから。30代になるとやる気のある方でも辞めますね。それでいて施設長はメルセデス乗っているんだから、ビジネスモデルとしては、近いうちに崩壊すると思いますわ。
投稿: Rikkie | 2013年5月19日 (日) 06時08分
どもども、猫印殿。
やはり、ミノルタを出動させるとうのは、どこか「軽い気分で行きたいな」と思うところがあります。無暗にマルチモードにしないで、プログラムAEと絞り優先AE(とマニアル)に絞ったのも好感触です。
MC/MDマウントのレンズは、兎に角安いですから、拙僧も少し(大いに)レンズが増えました。
なので、徐々に処分するつもりで稼働率を増やしています。
金属外装系のミノルタも相当転がっているのですが、ミノルタを使いたいときといのはライトにイージーにという気分がありますから、樹脂製外装モデルについ手が出ますね。
明らかにニコンFEを出す気分とは異なります。
投稿: Rikkie | 2013年5月19日 (日) 06時13分
ミノルタ、おても優秀な技術陣と職人がいたのでしょうね
自分との接点は二眼のオートコードとコンパクトのFくらいですが、その写りは素晴らしいですよ
オートコードは中古の購入価格以上の修理珍を掛けたくらいですよ
コンパクトだって壊れたら修理しますよ
ずっと大切にしたい仲間達ですね
投稿: M | 2013年5月19日 (日) 10時35分
どもども。
今回はBlogが「ヘルパーと戦争体験」「ミノルタと女性」という二部構成、そしてそこからコンテンツに移動して本論に入るという読み応えのある内容でした。相変わらず見事な筆さばき、素晴らしい。
投稿: 大佐 | 2013年5月19日 (日) 12時16分
どもども、M殿。
コードっすか。あれはイイカメラですよねえ。
拙僧も一台確保したのですが、例の横移動式のレバーが折れて萎えました。それでも、レバー基部をマイナスドライバーでこじって撮影は続けたのですが。写りは素晴らしかったですよ。でも、自分では直せないですしねえ。直すと、本当に中古が買えるくらいしますから、泣く泣く処分しました。丁度、欲しいレンズがあったもので。この件については再来週あたりに報告予定です。フレックスに比べるとコードのレンズの方が格が落ちるという文献もありますが、拙僧はコードの方が安心できますね。
投稿: Rikkie | 2013年5月19日 (日) 22時56分
どもども、大佐殿。
いやはや、大佐殿にお褒め頂くとは嬉しい。素直に喜びたいと思います。
戦車や大陸での戦闘の件は、寝ぼけて妻に語ることもあるようなので注意はしているのですが。寧安なんて、妻が本当に高校時代過ごしたそうですから、どこまで冗談か分からなくなります。
それにしても、古カメラや古デジカメのコンテンツを検索すると、結局、大佐殿のコンテンツに行きつくことが多いですね。
気分が回りましたら、是非、再開を。
投稿: Rikkie | 2013年5月19日 (日) 22時59分
意外とミノルタンな当方ですが、xシリーズには縁がありません。X700など高いカメラというイメージがあったのですが、最近安いのでおやおや。。。と思っておりました。
やはり布幕1眼レフが最高と思うに至りました。やはり育ったものに帰るのでしょうか。。。
布幕のライカタイプなどは幕を焼きますので、間にミラーがあると安心します。
このカメラの銀色って珍しいのではないですか?
投稿: 横須賀与太郎 | 2013年5月19日 (日) 23時14分
どもども、横須賀与太郎殿。
おお、流石の御銘眼。このシルバーはちょっぴりレアらしいですね。そんなことは知らずに値付けをして処分しました。いいんす、あっしは儲けようとは思っていませんから・・・。
Xは「1」以外は安いですよ。ただ、やはりX-7は何かと問題がありますな。メジャーなのはプリズムのモルト崩れですが、手持ちでは露出補正を設定しないとシャッターが切れない個体もあります。
X-70は妙にプレミアがつくこともありますし、やはり狙いはX-700ですか。
個人的にはXG-EとかXG-Sとか中途半端な位置づけのカメラを大事にしたいという思いもあります。処分しても値がつかないというのも含みですが。
投稿: Rikkie | 2013年5月20日 (月) 00時42分
毎度読み応えのある文にやつがれめは落涙を禁じ得ないのでアリマス。
さて(…もうエエんかい!)、件のミノルタにつきましては、minolta 時代 が全盛期ではなかったかと思うのでアリマシて、大枚はたいて CI をやり MIN◎LTA にした辺りからハネウェルに嵌められてTPPのISD条項を先取りしたような目に遭った訳で(WTOも共犯やったと思うが)、まっ namas Amitaabha でアリマス。
思い返せば SRT 中期よりミラーアップを外し栄光の対称型レンズから鈍重なレトロフォーカスレンズに移行した頃が潮目だったのカモと思っておりまして。
Rikkieさんが仰る通り、やつがれめも気がつけばミノルタを三十数台所持致し居りますが、未だ New SR-7 に 21㎜F4 を着けて XDs X700 ~ α の盛衰に思いを馳せているのでアリマス。
投稿: カフカめら | 2013年5月20日 (月) 03時05分
どもども、カフカめら殿。
当方、皆さんに読んでいただければと思い、頭を捻っておりますので、喜んでいただければ幸いです。
時折、悪いジョークが過ぎるなと反省もするのですが。
拙僧の師団もコンパクトカメラを含めれば30台以上のミノルタが転がっています。ミノルタマウントの良くわからないメーカーのレンズも含めると、あと2ダースは有るかもしれないですね。
プレSRT-101は適度な若さとやや線の細い男性的な直線が魅力ですよね。思春期のカメラと言えるでしょうか。
あっしも、小顔のSR-1sを出したいという気持ちもあるのですが、流石にメカ的な信頼性が不安なので実戦は未投入です。
樹脂外装ボディ以降のミノルタのスタイリングは、概ねセンスを逸脱していないと思います。キヤノンT等と言うシリーズもありますし。
α7700が絶好調だったでしょうか。あれも、カセット式ファンクションとか変な気ギミックがありましたが、ゴージャスで良いカメラでした。
ロッコール21mmF4とは、結構なお宝ですね。一度は使ってみたいものです。
投稿: Rikkie | 2013年5月20日 (月) 05時50分
ミノルタに比べてキャノン(放送)、オリンパス(医療)、ニコン(メカトロ)が堅い雰囲気なのは業務用市場に食い込んでいたというのはあるのかもしれません。メカ好きオタクってストイックな実用品好きじゃないですかw
しかし前回(24mm)ちょっと堅かった被写体が、より自然な表情になっているのがイイカンジです~野鳥と同じで警戒されない距離感が重要なのですなw
投稿: 無尽探査機 | 2013年5月20日 (月) 12時12分
どもども、無尽探査機殿。
同じような意味では、我々の世代では「業界のプロが使っている」というのは、ある程度のステイタスがありましたね。最近の30代前半未満はあまりそういう傾向が無いようです。スペックオタク男子も「Lレンズは画像をxx倍してPCに映した時に解像度が違う」とか「ニコンD5000では出ない空の青がD5100なら出る」なんてことは言いますが、プロの写真家なんて全く関心ないですね。
135mmは、何せ安いですから大量に集まっているんですよ。イマイチ、使い辛い焦点距離だと思っていたのですが、この1年くらいで感覚がつかめたような気がします。
そうなると、逆に24mmで肉薄するのが怖くなったりして、上手くいかない物です。
投稿: Rikkie | 2013年5月20日 (月) 13時48分