同僚となった人妻に懸想して、親しい時間を過ごすなかで思いを遂げることができて、その人の倖せを願うお話。
……だよなぁ、これ。
どう綺麗にまとめられても「不倫」であり「浮気」であるわけで。
うーん……。
それを是としてしまって良いのかどうか悩みます。
絶対に浮気も不倫もダメだと考えているワケではないです。
ある一時期に出会った異性が人生最良のパートナーだと言い切れるとは思えないので、なにか不都合が生じたとき別の相手を見つけることは自然だと思います。
でも、そこには「健やかなるときも病めるときも」共にすごすための契約があったワケで、その契約さえ解消するなりすればの話で。
上京してきた人妻さんはそれを曖昧なままに主人公と関係を続け、主人公もそのことを強くは問わないでいる姿勢が問題なのかなーとか。
この状況、性別が入れ替わっていたらとても気持ちの悪いお話になっているような気がします……。
んでも、そうした倫理観?を飛び越えてしまうくらいに中村センセが綺麗な筆致でふたりを描いているんですよねぇ……。
優しい悲劇というか。
出会ってからしばらくはやはり悪しきことだとして気持ちを断つように動いているのですよね。
しかし、それで断ち切れるほど弱い気持ちではなかったと示して。
ここがなぁ……うまいんですよねぇ……(^_^;)。
ただの不倫であれば非難もされるでしょうけれど、前提として悩んで悩んで、それでも離れられないという気持ちを描いているものだから、読み手のわたしもふたりを罰しきれないっちうかー。
ふたりはもう罪を背負っていることを自覚しているのですよね。
で、あるなら、いまさらわたしがどうこう言う部分でもないですし……。
でもなぁ……。
郷里でひとり、妻の帰りを待っている旦那様のことを思うと、どうにもやるせない気持ちになるのは仕方がないですか?
旦那様がどんなお人柄なのかわからないトコロが、こう、もやもやとした気持ちにさせるのかもしれません。
相手が分からないだけに、一方的に主人公と奥さんを応援できない心境に。
物語としてそこまで肩入れするものでもないでしょうし、むしろふたりの深い愛を感じることができればそれで良いのだと思うのですけれども、ね。
正しさと間違いは、シーソーの両端にあるわけじゃない。当たり前のことだけど、正しさを間違いを内包していたり、間違いの前提として正しさがあったりする。
正しいことにだけ生きる意味があるわけでもなくて、間違ったことは全てが許されないことでもなくて。
○か×か判定されることが重要なのではなく、なにかを選び続けていくことが人生なのかなぁ……。
答えには答えの意味しか無くて、選ぶ行為に価値がある、とか。
考えちゃうわー(-_-)。