『Flyable Heart』 クリア~♪ 過去に何本かUNISON SHIFTの作品はプレイしていますけれど、今作がいちばんわたしの波長に合ったかな~。 なんといっても過去作品にあった―― 「クライマックスで主人公が傍観者になる」 ――という点が無かっただけでもスゴイ進化だと思いました(^_^;)。
『ALICE♥パレード』や『ユニティマリアージュ』などを積んでしまっているので構造の変化点がどの時期なのかわかりませんけれど、わたしにとってはこの変化は画期的でした。
でも最初は「仲の良い or 因縁浅からぬヒロイン同士」の図式が描かれていたので不安はあったのですよねー。 またこのヒロイン同士で問題を解決してしまうのではないかと……(^_^;)。
んがしかし、今作の主人公 晶くんはヒロインの問題に身体張って飛び込んでいきました。 その行為は必ずしも合理的ではなかったかもしれませんし、結果導かれたモノが必ずしも効果的な答えであったとも言い切れませんけれど、それでも問題を解決するため、最悪の事態を回避するために晶くんは走り出して、そして選択をしたのです。
主人公を描くという点で、今作は過去のUNISONとは違うとカンジました。 それがまた作品としても好感度を上げているかなー。
もっとも「主人公視点」「ヒロイン視点」「(少なかったですけれど)神視点」が混在する仕様は相変わらず。 これはねー、わたしは好きくないのですけれど、UNISONはこういう描き方なんだなーと納得も出来ました。 つまるところUNISONは「主人公というインターフェースを介して強い感情移入をうながすゲーム作品」を作っているのではなく、「物語の構成をより平易に理解してもらいその世界を楽しんでもらうエンターテインメント作品」を作っているのだなーとわたしは感じます。 ユーザー≠主人公、なんですよね。 ぶっちゃけ、「UNISON SHIFT」という主人公が描く物語を、わたしたちに第三者的に観劇してもらうという。
ユーザーの感情と主人公のそれをどこまでシンクロさせ重視するのかは好みだとは思いますけれど、UNISONの過去作品ではあまりにも主人公が当事者ではなく傍観者に落とし込まれてしまっていたので物語への意識も向けづらかったのですよ。 しかし今作ではきちんと当事者であり続けましたから、物語としても「ダレる」ことがなかったのではないかとー。
お話の展開としては 「異界へ迷い込んだ主人公が冒険の果てに元の世界へもどる」というもので、『オズの魔法使い』をモチーフにしてる……っぽいのですけれど、集約されたところのラストシーンを思うと『ときをかける少女』のオマージュかなぁ、と。 並列世界というより時間旅行の物語に思えたので。
全てが前向きに終わるわけでは無いところは好みが分かれるかなー。 主人公はそれで良かったとしても、その影になったところには救われない現実と絶対的な断絶があるんですもん。 すくなくとも諸手を挙げてこの結果を喜ぶことはできません、わたしは。 でも、それは「主人公≠ユーザー」であるからこその感情であり、だからこそまさしくUNISON SHIFTらしい物語であるとも言えるわけで。
いや、むしろUNISON SHIFTにしか描けない物語と言うべきなのかも……。 全てが満足いく結果にはならなくても目指す物語のあるべき姿のために感情の取捨選択をする。 その合理性をわたしは必ずしも好意的には受け取れませんが、しかしクリエイターとして立派な姿勢だと感じます。
システム面でもいろいろと凝った作りになっていて、目標の高さを感じました。 立ち絵の縮尺の違いで遠近の位置関係を表すことはもちろん、ズームしながらフェードアウトさせることですれ違う様を表現したり、あるいはメッセージウィンドウの脇にバストアップショットをアイコン的に表示して「視野外」であることを示したり……。 とにかく「主人公が見ている」ということに関して様々な手法を用いて表現しているのですよね。 メッセージウィンドウにしても驚きの場面では枠を変化させてみたり、感情に合わせての表現が細かなところまで意識されていると感じました。
またそうしたメッセージウィンドウも含めて、システムアイコンなどのデザインがまた秀逸。 原画という大道具だけでなくこうした小道具にも力を注ぐことに対して、「作品」を超えて「商品」として求めるクオリティに妥協しない気概を感じるのです。
てなところで、恒例の(ひさぶりの!)ヒロイン好感度です。
茉百合 ≧ くるり > 天音 > 結衣 ≧ 桜子 > すずの
うわー、今回は悩むわー。 正直に言えば、みんな可愛い!(≧▽≦) そして「個別シナリオ」と「ヒロイン」の好感度が同列ではないトコロがまた悩むポイントでした。
茉百合さんは「個別シナリオ」としては反対に最下位なんですよね。 物語としてはなにも解決していないので。 ユーザーの想像の余地を残しての手法かもしれませんけれど、それで誤魔化せるほどに材料があるとは思えません。 ですがキャラクターの個性としては間違いなくTOPです! あのかたくななガードをくぐりぬけて見事にパンチをヒットさせたときの可愛らしさは凶悪ですよ、茉百合さん!(≧▽≦) 晶くんは年下ですけれど、どこか鈍感なために打たれ強い彼ならば茉百合さんも意識せずに甘えられるように思います。
あまりに説明が足りないお話でありましたので、最初に攻略するには不向きなシナリオだと思います。 2番目か3番目、それも桜子のお話のあとのほうが良いかなー。
くるりもギャップが愛らしいキャラでした。 素直になれないところ彼女らしい誠実さが引き金として描かれていたシナリオについても、作中での完成度が高かったように思います。 おおよそ先の読める展開ではありましたけれど、彼女の場合、複雑に展開される妙味よりは感情をどのように決着させるかがキモだと思うので、むしろ平易な展開であったことが良かったのだと思ってます。
とまれ笹倉綾人センセのツンヒロインが攻略できるのは『Flyable Heart』だけ!ってことで(笑)
天音は不器用で苦労人なところが好きー。 シナリオについては彼女ほど「偶然の出会いで、そこから意識を始める仮定」が描かれていたヒロインはいなかったように思えます。 特別な設定がなくても、少しずつ好きになっていく様子がわかるっちうか。 だからこそ友人である結衣と同じ人を好きになって悩み、涙する姿が愛おしいワケで。 ただそれ以外の部分では、ちょーっとひねりすぎなんじゃないかなーと思わずにはいられない展開でした。 兄妹のすれ違いを描くにしても、ちょっと注力しすぎというか……。 お兄ちゃんがシスコンなのはもちろん、天音も相当のブラコンですよねぇ……。 そちらの感情が強すぎるため、晶くんに対しての感情の強さがかすんでしまったように思います。
それにしても二度目のHシーンではかなり自暴自棄に見えていたのですけれど、そんな彼女に手を出してしまう晶くんは鈍感すぎると凹みます。 ここだけは「主人公≠ユーザー」で良かったと本当に思いました。
結衣はキービジュアルで大きく扱われるほどにメインヒロインなのですけれど、彼女1人では物語の全容には届かないというアンバランスさが欠点でしたでしょうか。 それなりに核心を匂わせるところを描かれながらも、しかし最終的には彼女でなくても物語は成り立ってしまうという……。 キャラクターとしては明るくて前向きな性格が好ましかったです。
桜子は物語におけるターニングポイントなのではないかと。 彼女のお話の展開こそに、物語を謎と感じる「矛盾点」が強く働くので。 ただしそれ以外の展開、彼女の行動原理や抱えている背景などについては普遍的すぎるきらいがあるので、意外性には欠けるかも。 ふわふわ病弱お嬢様……ということで『PEACE@PIECES』の小鳥遊誉ちゃんを思い浮かべてしまったところがわたしの敗因かも……。
すずのはもっとも物語の核たるキャラクターなのですけれど、ヒロイン対象としては弱かったかなー……という印象が。 いろいろあって盛り上がる展開ではあるのですけれど、個別シナリオの成果というより全物語の集約という部分にソースが割かれていて彼女自身の魅力があまり語られていないような……。 そういった次第でむしろ「彼女のための物語」であるようにまとめられてしまったトコロに残念ながら反感をおぼえてしまうのかもしれません。
個性だと思いますし可愛いとは思うんですけれど、コロコロ転んでパンツ見せすぎ!(><)と多少うんざりしたところもあってですね……。
あ、パンツといえば今回のヒロインのみなさまが着用している下着のデザインはなんとなーく控えめだったような。 目立ったデザインは茉百合さんくらいですし、天音は少し実際的すぎないかと。 も少し可愛らしくても……ねぇ? 結衣のフロントホックブラがちょっと意外ではありましたけれどー。
そんな次第で、ボリュームはそれほどなくてもUNISONの変化を感じられた今作。 いろいろと良い方向へ印象を抱いた作品でした。 過去のBLOSSOM作品とのクロスオーバー展開もいよいよ多元化してきましたし、ブランド買いするなら安心感も出てきました。 全体としては完成されていても、個々のヒロインの物語として不透明な部分は残されていますので、新作も期待していますけれど次はFDとかあったりすると嬉しいです。 茉百合さんとのその後とかー、研究交流を目的に遊華総合学園とクロスオーバーするくるりシナリオとかー o(^-^)o
|