経済学者はバカなのか「さっさと不況を終わらせろ」
どうやらバカは、わたしだね。
なぜなら、これだけ丁寧に説明されても、理解できないから。いや、本書が難しいわけではない。クルーグマンの主張は明快だし、処方箋も具体的で分かりやすい。忙しい人は巻末の「訳者解説」から読もう。訳者・山形浩生が簡潔にまとめてくれている(毎度毎度ありがたい)。
- 今(2012年)はまだ、リーマンショック以後の不景気が続いていてまともに回復してない。失業者の技能や労働市場での価値の低下から、その害が一時的なものではなく、長期的な被害になりつつある。だから景気回復策をきちんとやろう
- その手法も明快で、昔ながらのケインズ的な財政出動をやろう。赤字国債を出して、大量の公共事業をやろう
- いままで行われている景気刺激策は小さすぎる。これまでの規模の数倍をどーんとやるべきだ。ちゃんとGDPの需要と供給のギャップを見て、それを埋める規模のものを一気にやるべきだ。中央銀行はそれを金融緩和で徹底的に支援すべきだ
- 感情的になっている
- 過去の間違いを認められない
- まちがった信念にしがみつく
- 経済学を道徳劇として見たい欲求
断っておくが、ブログで見かける「僕の考えた施策」ではない。なんちゃって教授や、経済学を振りかざす暇人は、ネットのおかげでたくさん可視化されるようになった。だが、そうした人々が「感情的」になったり「経済学を道徳劇する」のは、心の底からどうでもいい。そんな遠吠えではなく、現実の経済施策に影響力を持つ人が反対するまともな理由をこそ、知りたいのだ。
本書では、影響力を持つ人を名指しで迎撃する。ヘリテッジ財団のブライアン・リードル、ジョン・ベイナー下院議員、ビル・クリントン元大統領、シカゴ大学のユージーン・ファーマの発言をとりあげ、無知・思い込み・感情といった側面から斬って捨てる。彼らが反対する理由は、もっと「まとも」なものがあるはずだ。著者の都合に合わせてフィルタリングされたため、実証的な反例がないのだろうか?
実は一件ある。ハーバード大学のアルベルト・アレシナの「財政調整の物語」が、緊縮財政の拠り所なんだそうな。これは、財政赤字を減らそうとした国を調査した論文で、緊縮が経済拡張につながった例が沢山あるらしい。だが、クルーグマンによると、これはちゃんと検証されていない論文だという。例えば、証拠として挙げられる1990年代のカナダは、緊縮財政のおかげではなく、お隣のアメリカの好況が原因なんだって。赤字削減と経済の強さに相関があるからといって、因果関係にはらなぬという。
クルーグマンの主張が明快で腑に落ちる分、反対派の理由は、「まちがってるからまちがっている」ように見えてしまう。最初の「まちがってる」はクルーグマンの主張と異なっていることを指し、後の「まちがっている」は現実の失敗を指す。同じ問題に取り組んでいるのに、違う信念に基づいているため、異なる解法になるのだろうか。
財政出動の反対派の理由について、クルーグマンに説明を求めるのが誤りかもしれぬ。ケインズとは異なる立場を持ち、実際の経済施策に影響力を持つ人―――小野善康をカウンターにしてみよう。小野は内閣府の経済社会総合研究所所長で、Wikipediaによるとケイジアンとは違う意見を持っているようだ。中公新書「不況のメカニズム」が適当だろうか。菅直人との対談「節約したって不況は終わらない」あたりが面白そうだ(実際に起きたことと比較して採点できるから)。
というわけで、愚かなわたしを再確認できる読書だった。ただ、愚かなりにヒヤリとした箇所があったので補足する。
本書の末尾で、好況不況は、政府支出で引き起こされる一例として、「戦争」を持ち出す。1929年から1962年の「政府支出と経済成長」のグラフを掲げ、第二次大戦や朝鮮戦争前後の政府支出の激増や激減に対して、経済全体もそれに応じた好況や不況となったと述べる。クルーグマンは決して、「景気のために戦争せよ」などと言ってないが、人によってこのレトリックを悪読みしかねないので注意が必要だろう。取りたい人にとって、格好の揚げ足となっているからね。
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コメント
困った本ですねー。それも権威あるノーベル経済学者の主張だから余計に困るのです。何故多くの経済学者、政治家が大胆な財政出動に躊躇するのでしょうか。それは政治的な理由もあるが最大の理由は政府債務の果てしない膨張への恐怖からでしょう。これに対する彼の答えは「恐れることは無い。第2次世界大戦末のアメリカの2410億ドルの政府債務はどうなったでしょう。返済されていません」です。返済しなくても経済はうまく運営できたと。こんなのが理屈になりますか?これを見ただけでもこの本は読むに値しないものです。たしかに、あのときの政府債務は戦争支出で対GDP比120%へと急膨張したが、その後の6,7%の名目経済成長のお陰で債務比率が1957年には60%を切り、1967年には40%台に下がっていったのです。それでも終戦後22年もかかっています。今の先進国の名目成長率は4%(好況時には5-6%くらいで不況時に1-2%)くらいです。これだと同じ債務比率の改善を見るためにはなんと60年以上もかかるのです。まして、アメリカの成長率はもっと落ちることこそあれ、上がることはありません。こうなると望みは唯一つ、期待インフレを極限まで高めることです。それをクルーグマンさんは目標インフレ率を4%くらいの高い値を示しそこに持っていけばよいとします。実質成長率が1,2%しかない時代にかれはどのようにして期待インフレ率を4%まで持っていけるとお思いなのでしょうか。それこそFRBは手品を見るごとくインフレを自由にコントロールできるとでも思っているのですかね。ならば、どうして今回のような金融大惨事の発生を防ぐことが出来なかったのですかね。とにかく今の経済学者は世界経済の問題に対しあまりに無神経過ぎます。それは彼らが問題の本質を見ようとしないか、あるいは目をそむけているからだと思います。困ったことです。
投稿: 金山正男 | 2012.08.06 09:13
>現実の経済施策に影響力を持つ人が反対するまともな理由をこそ、
共和党の支持者を見れば判る。
彼らはオバマケア(ヨーロッパや日本じゃ当たり前の国民皆保険制度)をどのように攻撃してきたか。
共和党とその経済学者達は、政府の役割を重視するケインズ経済学を、共産主義と同一視して、自由放任と小さい政府というイデオロギーに基づいて反対している。
投稿: | 2012.08.06 20:29
>返済しなくても経済はうまく運営できたと。こんなのが理屈になりますか?
なるじゃん
実例に勝る理論などなし。
>実質成長率が1,2%しかない時代にかれはどのようにして期待インフレ率を4%まで持っていけるとお思いなのでしょうか。
いわゆる非伝統的手法。
・為替相場への介入(自国通貨安誘導だから、弾切れになることはない)
・長期国債の買い取り
・民間の債券の買い取り
・減税
投稿: 個人投資家 | 2012.08.06 20:33
>>金山正男さん
分かりやすい解説ありがとうございます。そして、わたしが見落としていた理由「恐怖」をご指摘いただき、ありがとうございます。「政府債務の果てしない膨張への恐怖」は、確かにためらう理由として充分です。
そして、「政府債務の果てしない膨張」への処方箋として、期待インフレ率を高める施策を提案するクルーグマンについて、「FRBは手品を見るごとくインフレを自由にコントロールできるとでも思っているのですかね」(いや無理だろ)という反論も、もっともだと思います。
ただし、上記は「わたし」がそうだなーと思うだけです。
実際の経済施策に影響力を持つ人は、「政府債務の果てしない膨張」が心配だから、財政出動による景気回復策をしない―――という議論を尽くしてきたのでしょうか? わたしがアクセスできていないだけで、「○○という財政出動により、□□方面へ××兆円の効果が見込めるが、政府債務が△△兆円増」なんて試算がなされているのでしょうか(←これは金山さん宛ではなく、自問のつぶやきです。わたしの宿題として探します)。
また、「インフレを自由にコントロールできるわけがない」というのはその通りですが、「自由にコントロールできない」からといって、インフレを目標にする施策を捨てる理由にならないと思います。インフレ○%を目標にするのであれば、そのための施策に対し、
・やった場合のメリットデメリットと評価基準
・やらない場合のメリットデメリットと評価基準
を検証した後、「その施策を採用しませんでした」という結論であれば、分かります。これも、わたしが無知なだけで、既に検証済の議論なのでしょうか(←これも自問、わたしが調べる課題です)。そして、「やった/やらない」に対し、評価基準に沿って継続的に観察し、フィードバックをしているのかと思うと―――わたしの不勉強のため、分からないのです。
リーマンでもEUでも、金融危機を持ってきて「だから経済学者はダメ」と言いたいのは激しく分かります。しかし、そこで言われている「経済学者」と、試算や評価基準を元に舵取りをしている「はず」の「経済学者」との落差も、同じくらい激しいのです。
ひょっとすると、「恐怖」や「インフレを自由にコントロールできない」という"主張"だけで、試算も評価もフィードバックも無しで、ダメ出しをしているのかなぁ…と想像すると、ちょっとゾッとします。
投稿: Dain | 2012.08.07 00:20
>・やった場合のメリットデメリットと評価基準
>・やらない場合のメリットデメリットと評価基準
内閣府で 経済財政政策担当大臣・竹中平蔵の補佐官をしていた高橋洋一の著作によれば、コスト・ベネフィット評価がろくにされていなかった。
単に中長期経済見通しであれば、総理府から発表されていて、経済モデルも公開されている。
公表された経済モデルを元に国債を発行して経済成長を目指した場合、発行しないよりも発行するほうが
債務残高/GDP比が下がることが判っています。
投稿: 個人投資家 | 2012.08.07 10:46
>>個人投資家さん
わざわざ教えていただき、ありがとうございます。
やっぱりというかなんというか、仕事はしていなさそうですね……
「経済学者はバカなのか」、反語的に始めたこの企画なのですが、シャレにしたいのですが、まさかネタになるとは考えたくなかったです。
投稿: Dain | 2012.08.08 00:45
私は現下の経済の問題や処方箋を書いた経済本の書評を出しているブログに投稿を重ねています。それは今の経済の惨状を何とかしなければという強い思いからです。皆さんが貴方のように、自分の頭で真剣に考えようとするなら日本もまだ捨てたものではないと思います。困るのは、大して考えもしないで、自分の既知識を振りかざして発言をしたり、逆に他人に同調したり、感情論に流されることです。私は自らこの罠に嵌まらないよう、ある事象に対して、「偉い」先生の本は読みますが、その人が主張していることに対し自分なりに必ず「なぜ?」と問いかけたり、或いは「その主張の拠って立つ論理は本当に正しいのか?」と問いかけます。必要であれば自分で徹底的に調べます。できればその「なぜ?」と言う質問を3回まで下に掘り下げるようにしています。そこで発見できることはたくさんあります。それによって、その本の評価も固まってきます。貴方もそのような「問いかけ」の姿勢で問題に臨んでおられるようなので安心しました。是非、上のコメントで貴方が自分に課した課題について真剣に検討されることを期待します。もし、その後でもまたここで議論出来るのならこれに優るものはありません。
投稿: 金山正男 | 2012.08.08 07:29
>>金山正男さん
ありがとうございます、精進してまいります。
ただ、タレント的な詭弁家が大手を振ってる様子を聞くにつけ、うそ寒いものを感じます。確度よりも耳への快さが優先されるのは、どの時代も変わらないのかもしれません。
投稿: Dain | 2012.08.08 21:10
>やっぱりというかなんというか、仕事はしていなさそうですね……
本人はやっているつもりなんでしょう。
大組織は内部の論理で動くので、内部論理的には正しくても、組織の外部から見ると間違っていることは多々あります。
日銀はずっと日銀理論(日銀は需要に応じてマネーサプライをするだけ)を信奉していますし、それは「翁 VS 岩田論争」以後も変わりません。
から、日銀は「インフレ目標が効かない」と今でも言っている。
投稿: 個人投資家 | 2012.08.10 15:31
>>個人投資家さん
信じたいのを信じるのが人の常ですが、それでも信じたいです、ちゃんと仕事をしていると。
「インフレ目標が効かない」というのは勝手ですが、信念を口で言うのではなく、施策の予実を発表してもらいたいものです。
投稿: Dain | 2012.08.10 16:37
せっかく個人投資家さんから色々コメントが来ているので、私ももう少し議論を続けてみたいと思います。個人投資家さんが紹介された「公表された経済モデル」を私も見てみました。彼は「それを元に国債を発行して経済成長を目指した場合、発行しないよりも発行するほうが債務残高・GDP比が下がることが分かっています」と解説します。見れば直ぐに分かると思いますが、このモデルは経済を慎重シナリオ(1.6%名目勢著、実質1.1%)と成長戦略シナリオ(名目成長3.6%、実質2.3%)の二つのケースについて、財政収支見通しと債務残高見通しを試算したものです。成長のための財政出動(国債発行)はどちらも想定していません。成長シナリオのほうが国債費(国債の利払いのこと)が高いのは成長シナリオのほうが長期金利が上がるため利子の支払いが増えているのです。どちらも国債は財政収支赤字の分を国債で埋め合わせているだけです。したがって個人投資家さんの見方は誤りです。ただ、二つのモデルを良く見るとどちらのシナリオも債務は、額、対GDP比率とも膨張し続け財政破綻するシナリオです。どうしてこんなものを政府が出してくるのでしょうか。またその前提も少しおかしなところもあります。それはここでは問いません。ただし、二つを比べて見た場合、債務の対GDP比率は成長シナリオのほうがましと言うだけのことです。本当のストーリはだからどうするか、です。そのためのシュミレーションを担当者はしなければいけないのです。それはどこにも出ていません。私が簡単に試算した結果はやはり、財政再建のキーとなるのは増税と歳出問題です。この二つをうまく管理できて、なおかつ経済が落ち込まない様に出来れば財政再建は難しくありません。ただそうしても、慎重シナリオでの財政再建は非常に難しいことも分かります。成長シナリオであれば国民が20年以上我慢できるのなら対GDP比率は100%くらいまで下がっていきます。国民が我慢出来ない限り、200%の債務下での財政再建は無理だと言うことが分かります。この政府モデルを使って、もしインフレターゲットにより、成長戦略シナリオに更なる2%のインフレを上乗せしても財政再建は出来ません。それは国債費の増加と歳入の増加とが帳消しになるからです。どうしても増税と、歳出の抑制が必要なのです。もしエクセルを使って、そうしたシュミレーションをする事に興味がお持ちでしたら是非自分でシュミレーションをしてみることをお勧めします。また個人投資家さんの主張されるインフレターゲットですが、この主張の一番の問題はインフレターゲット論者はお金を増量していけばインフレが起きると思っていることです。これまでの日本の例を見ても、また直近のアメリカの例を見てもそれは起こらなかったですよね。ここに問題があるのです。その根底にあるのは最早有り余る金(実物経済に対し市場に出ている金があまりに過剰と言うこと)に更に金を供給してもインフレは容易に起きないということです。そうするとどうするか?当然極限までお金を供給しろとなりますよね。それをずっと続けた後に何が来るかです。それを皆さん恐れているのです。もしインフレが起きたらそれは今まで起きなかったものが突然起きるのですからその勢いは中央銀行のコントロールを越えるものとなる恐れが十分にあるのです。このような危険極まりないことを中央銀行がどうしてやれますか。日銀政策を激しくけなしていたベンバーナンキは自分の考えていた、FRBの金融緩和(QE1,QE2)の効果が出ず困っています。彼の政策に疑問符がついたのです。彼は今議会から責められているのです。そんなことぐらい少し良識のある人なら分かっていたことです。とにかく今は、政策責任者のあまりに軽い発言にウンザリです。
投稿: 金山正男 | 2012.08.11 12:44
>>金山正男さん
解説ありがとうございます。そこで、個人投資家さんの誤りだというご指摘について、裏がとれず分からないところがあります。教えていただけると大変有難いです。
個人投資家さんは、2012.08.07 10:46のコメントで主張していることは、「国債を発行して経済成長を目指した場合、発行しないよりも発行するほうが債務残高/GDP比が下がる」です。これは、内閣府の「経済財政の中長期試算」を指すと理解しています。
経済財政の中長期試算(平成24年1月24日)
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h24chuuchouki.pdf
上記のp.5とp.11には、対GDP比の国・地方の基礎的財政収支や公債等残高のグラフがあります。違いは以下の通りで、確かに「社会保障・税一体改革」を考慮したほうがGDP比の債務残高は下がっています。
「社会保障・税一体改革」を考慮した場合→p.5
「社会保障・税一体改革」を考慮しない場合→p.11
そして、p.14の「主要な前提(3)歳出」を参照すると、社会保障・税一体改革を踏まえ、社会保障制度改革の実施などにより一定の歳出増が生じることを想定する、とあります。
つまり、個人投資家さんは「経済財政の中長期試算」を分かりやすくまとめて下さっただけのように見えるのですが、これが誤りなのでしょうか?
あるいは、「経済財政の中長期試算」そのものが誤っているよ、という話なのでしょうか?
投稿: Dain | 2012.08.11 16:15
私が見たのは平成22年6月22日内閣府発行の分ですが、そのことを明示しなかったのは申し訳ないと思います。しかし、貴方が見た平成24年1月24日の試算を見ても結果は同じです。22年の試算では社会保障と税の一体改革は考慮されていません。今回法案が通ったので内閣府が追加したのでしょう。私が見たときはそれはまだ入っていませんでした。それはともかく、私の論点は個人投資家さんが言っている「モデルを元に国債を発行して経済成長を目指した場合、発行しないよりも発行するほうが債務残高・GDP比が下がることが分かっています」の解説に対し、それは間違いですよと言っているのです。ページ6とページ7を見てください。毎年の国債発行はどちらのシナリオも財政収支の赤字を国債発行しているだけです。財政出動はどちらにも入っていません。歳出の項目を見てください。成長シナリオと慎重シナリオの歳出の欄を見比べてください。2015年度で比較すると、26.9兆円対29.2兆円でその差は2.3兆円です。そしてそれは両者の名目金利の違い(2.1%対2.8%)から主にくるものです。0.7%の違いが債務残高全額にかかるのであれば成長シナリオのほうが国債費は6兆円以上負担が増えるがそうなってないのは国債は色々な金利の年に発行したものがあるからです。私の推測ですが、2015年度で言うと恐らくその金利の上昇の影響を受ける国債は全体の20%位あるということだと思います。2023年度を見れば国債費の差額は両者でもっと大きく開きます。47.9兆円対59.4兆円でまさに約12兆円の差です。そして、それは長期金利の差が両者で1.5%もあるからです。この時点ではその金利差が債務残高の80%以上にかかってくると推測されます。いづれにしろ試算シナリオには国債を発行して成長を目指すと言う前提にはなっていません。あくまで1.2%の成長と3.6%の成長(中長期の平均)とで政府債務残高と財政収支がどうなるかを試算したものです。国債の発行と言う話が出たついでに、もう一つ言っておきます。もし日本がいま公共事業をやった場合何が起きるかです。もし、国債を10兆円増額して公共事業をした場合、経済成長は2%位上乗せされます。それによる税収増は1.5兆円程度です。つまり初年度8.5兆円の持ち出しとなります。国は毎年成長を2%上乗せしたければ毎年10兆円づつ国債発行を増やしていかなければなりません。2年目は20兆円そして3年目は30兆円と増やしていかないといけないのです。これでは赤字がどんどん膨らんでいきます。つまりこれで分かることは、公共事業が有効なのは最長でも3,4年くらいで経済が自立成長すると言う前提が無いといけないのです。そうでないと政府は常に持ち出しとなり、政府債務は限りなく膨張していきます。今これが世界の先進国で起きていることです。自立成長と言う言葉もまやかしですが要は経済が力強く成長すると言う意味です。そのような力強い成長は最早先進国では望めないのです。それを真っ先に証明したのが日本の20年なのです。それが今後の世界の現実となる可能性が高いのです。世界の為政者はこの現実に対し真剣に対峙しないといけないのです。
投稿: 金山正男 | 2012.08.12 09:32
貴方の前の質問をよく見ていたら、貴方は社会保障と税の一体改革をした場合としなかった場合の債務残高比率の比較を見ているようですが、それと個人投資家さんが言っていることとは違いますよ。社会保障と税の一体改革の主な目的は増税です。政府は増税して財政再建をしようとしているのに増税したほうが債務残高比率が悪化するのでは具合が悪いでしょう。個人投資家さんが主張したのは「国債を発行して成長を目指したほうが成長を目指さないより債務比率は改善する」と言っているのです。私はそれはこの中長期財政フレームにはどこにも示していませんよ、と申し上げたかったのです。
投稿: 金山正男 | 2012.08.12 11:59
>>金山正男さん
解説ありがとうございます!確かに、2012.08.12 11:59のご指摘通りです。個人投資家さんは、「社会保障と税の一体改革をした場合としなかった場合の債務残高比」について言っていませんね(わたしが短絡的につなげてしまいましたスミマセン)。
個人投資家さんの「モデルを元に国債を発行して経済成長を目指した場合、発行しないよりも発行するほうが債務残高・GDP比が下がることが分かっています」がどのデータ(報道発表)を指しているか、知りたいですね。
金山正男さんの説明は分かります…が、これがどのくらいの確からしさを持つのかは分かりません(勉強不足スミマセン)。これも、精進します。
投稿: Dain | 2012.08.12 17:35
Krugman wants to be the czar of the world. There are no economists that he likes. (Laughs)
ユージン・ファーマに言わせると「皇帝になりたがってるのさ、奴は。クルーグマンを好きな経済学者なんざ一人もいないよ」
お前ら日銀もFRBも嫌いなんだろ?
「さっさと通貨発行権を自由化しろ」
中央銀行解散! 自分の貨幣を担保に、好きなだけ緩和でもドル買い介入でもしてくれよな。
これでリスクを取りたい奴が好きなように取れるぜ。使いたい奴だけ、購買力の毀損するボロ通貨使ってくれよな!
投稿: リバタリアン | 2012.09.16 01:57
不況を終わらせるより、
使えない経済学者の布教を終わらせた方が良い。
投稿: | 2017.03.14 13:07