Joe Chambers / Mirrors
Label: Blue Note
Rec. Date: July 1998
Personnel: Eddie Henderson (tp), Vincent Herring (ts, as, ss), Mulgrew Miller (p), Ira Coleman (b), Joe Chambers (ds, vib)
1. Tu-Way-Rock-E-Way [Chambers]
2. Mirrors [Chambers]
3. Caravanserai [Chambers]
4. Ruth [Chambers]
5. Mariposa [Chambers]
6. Lady in My Life [Rod Temperton]
7. Circles [Chambers]
8. Come Back to Me [Janet Jackson, James Harris III, Terry Lewis]
9. Ruthless [Chambers]
なぜこのCDを入手したのか、だいぶ前のことになりますのでほとんど覚えていませんが、たぶんその日は他に目ぼしい出物がなくて、まあこれでいいかというような感じで買ったのではないかと思います。
リーダーのJoe Chambersは、若い頃繰り返し聴いた1960年代のWayne ShorterのBlue Note諸作(「Etcetera(1965)」「The All Seeing Eye(1965)」「Adam's Apple(1966)」「Schizophrenia(1967)」)に参加していたドラマーですが、同じShorterの作品に参加していたElvin JonesやTony Williamsに比べれば、やはり力負けの感は否めません。
調べてみると、Joe Chambersは1970年代からリーダーアルバムを発表しており、その数は10タイトルに及びますが、私が所有しているのは本作のみです。
メンバーはEddie HendersonとVincent Herringという「超二流」の2管フロント、ピアノとベースは私の大好物の後期Tony Williams Quintetのコンビというクインテット編成です。
取り上げられた楽曲は、6、8曲目を除いてリーダーのオリジナルです。作曲するようなドラマーは総じて「良い曲」を書く・・・Jack DeJohnette、Ralph Peterson、Jeff Wattsあたりが頭に浮かびますが・・・なんとなくそんな印象がありますが、本作のリーダーのオリジナルも、キャッチーで人懐っこい「良い曲」が並び、リーダーを含む「上等」なリズム陣に支えられて、バンドのサウンドは素材を活かしたオーソドックスでクールな新主流派風のテイストです。リーダーはもともと個性際立つというドラマーではないので、ドラマーのリーダーアルバムにしては、ドラムプレイの自己主張はそれほど強くはなく、どちらかと言えばコンポーザー、バンドリーダーとしての役割に重きを置いているように聴こえます。
フロントの二人についてですが、Vincent Herringは普段はアルトを手にすることが多い(と思われる)プレイヤーで、彼のアルトは「ツボを外した時のキャノンボール」という感じで、どうも「品が無い」という印象でしたが、このアルバムではアルトは4曲目のみで、その他のトラックはテナー、ソプラノを使っており、それほど強い印象を与えるものではありませんが、バンドサウンドに調和した「過不足ない」プレイです。
もうひとりのEddie Hendersonですが、こちらは、なんとなく彼に抱いていた「パワー不足で少し頼りない」という印象を覆すような、力強く鋭いプレイで、これは意外でした。決して一流になれなかった(或いはなれていない)けれど、しっかりとした主張ができて、それを聴き手に伝える力が備わったラッパ吹きという認識を新たにしたものです。
6曲目は「Michael Jackson / Thriller」収録のバラードで、リーダーはヴァイブを弾きますが、これが聴かせます。さらに7曲目はリーダーひとりによるドラムとヴァイブの多重録音ですが、メロディも良いし、ヴァイブも上手い、なかなか器用なミュージシャンですね。8曲目は「Janet Jackson / Rhythm Nation 1814」収録曲で、それをいわゆる「新主流派」っぽく料理しているのですが、これはちょっと外したかな?という感じです。終曲はフロント2管はお休みで、ピアノトリオでマイナー・ブルースをストレートに演奏してアルバムを閉じます。
アルバム全体を通じて少々「ごちゃまぜ感」はあるものの、リーダーの手による魅力的なオリジナルが丁寧に演奏され、かくし芸で終わっていないヴァイブの腕前も披露され、Joe Chambersがこのアルバムでやりたかったことは充分理解でき、共感もできます。
全く期待しないで入手したものでしたが、「楽しく聴けたアルバムだったな」と思える出来でした。
Rec. Date: July 1998
Personnel: Eddie Henderson (tp), Vincent Herring (ts, as, ss), Mulgrew Miller (p), Ira Coleman (b), Joe Chambers (ds, vib)
1. Tu-Way-Rock-E-Way [Chambers]
2. Mirrors [Chambers]
3. Caravanserai [Chambers]
4. Ruth [Chambers]
5. Mariposa [Chambers]
6. Lady in My Life [Rod Temperton]
7. Circles [Chambers]
8. Come Back to Me [Janet Jackson, James Harris III, Terry Lewis]
9. Ruthless [Chambers]
なぜこのCDを入手したのか、だいぶ前のことになりますのでほとんど覚えていませんが、たぶんその日は他に目ぼしい出物がなくて、まあこれでいいかというような感じで買ったのではないかと思います。
リーダーのJoe Chambersは、若い頃繰り返し聴いた1960年代のWayne ShorterのBlue Note諸作(「Etcetera(1965)」「The All Seeing Eye(1965)」「Adam's Apple(1966)」「Schizophrenia(1967)」)に参加していたドラマーですが、同じShorterの作品に参加していたElvin JonesやTony Williamsに比べれば、やはり力負けの感は否めません。
調べてみると、Joe Chambersは1970年代からリーダーアルバムを発表しており、その数は10タイトルに及びますが、私が所有しているのは本作のみです。
メンバーはEddie HendersonとVincent Herringという「超二流」の2管フロント、ピアノとベースは私の大好物の後期Tony Williams Quintetのコンビというクインテット編成です。
取り上げられた楽曲は、6、8曲目を除いてリーダーのオリジナルです。作曲するようなドラマーは総じて「良い曲」を書く・・・Jack DeJohnette、Ralph Peterson、Jeff Wattsあたりが頭に浮かびますが・・・なんとなくそんな印象がありますが、本作のリーダーのオリジナルも、キャッチーで人懐っこい「良い曲」が並び、リーダーを含む「上等」なリズム陣に支えられて、バンドのサウンドは素材を活かしたオーソドックスでクールな新主流派風のテイストです。リーダーはもともと個性際立つというドラマーではないので、ドラマーのリーダーアルバムにしては、ドラムプレイの自己主張はそれほど強くはなく、どちらかと言えばコンポーザー、バンドリーダーとしての役割に重きを置いているように聴こえます。
フロントの二人についてですが、Vincent Herringは普段はアルトを手にすることが多い(と思われる)プレイヤーで、彼のアルトは「ツボを外した時のキャノンボール」という感じで、どうも「品が無い」という印象でしたが、このアルバムではアルトは4曲目のみで、その他のトラックはテナー、ソプラノを使っており、それほど強い印象を与えるものではありませんが、バンドサウンドに調和した「過不足ない」プレイです。
もうひとりのEddie Hendersonですが、こちらは、なんとなく彼に抱いていた「パワー不足で少し頼りない」という印象を覆すような、力強く鋭いプレイで、これは意外でした。決して一流になれなかった(或いはなれていない)けれど、しっかりとした主張ができて、それを聴き手に伝える力が備わったラッパ吹きという認識を新たにしたものです。
6曲目は「Michael Jackson / Thriller」収録のバラードで、リーダーはヴァイブを弾きますが、これが聴かせます。さらに7曲目はリーダーひとりによるドラムとヴァイブの多重録音ですが、メロディも良いし、ヴァイブも上手い、なかなか器用なミュージシャンですね。8曲目は「Janet Jackson / Rhythm Nation 1814」収録曲で、それをいわゆる「新主流派」っぽく料理しているのですが、これはちょっと外したかな?という感じです。終曲はフロント2管はお休みで、ピアノトリオでマイナー・ブルースをストレートに演奏してアルバムを閉じます。
アルバム全体を通じて少々「ごちゃまぜ感」はあるものの、リーダーの手による魅力的なオリジナルが丁寧に演奏され、かくし芸で終わっていないヴァイブの腕前も披露され、Joe Chambersがこのアルバムでやりたかったことは充分理解でき、共感もできます。
全く期待しないで入手したものでしたが、「楽しく聴けたアルバムだったな」と思える出来でした。