Nasheet Waits / Equality
Label: Fresh Sound New Talent
Rec. Date: May 2008
Personnel: Logan Richardson (as), Jason Moran (p), Tarus Mateen (b), Nasheet Waits (ds)
1. Tough Love [Andrew Hill]
2. Shine [Richardson]
3. Hesitation [Waits]
4. Mrs. Parker of K.C. [Jaki Byard]
5. The Summit [Moran]
6. Emil Danenberg [Stanley Cowell]
7. Smoke Stance [Moran]
8. King Hassan [Mateen]
9. Kush [Waits]
Tony MalabyやラッパのAvishai Cohen、Jason Moranらのアルバムに参加するドラマーNasheet Waits(1971年生まれ)の現時点で唯一のリーダーアルバムです。彼の父はやはりドラマーのFreddie Waits(1940-1989)で、私の大好物である晩年のLee Morganとの共演や、1960年代のMcCoy Tyner、Andrew HillのBlue Noteのアルバムなどに参加していました。
本アルバムは若手アルトLogan Richardson(1980年生まれ)のワンホーン・カルテットの編成です。Logan Richardsonは、現時点で既に以下の3枚のリーダーアルバムを出しています。
①「Cerebral Flow(2006年、Fresh Sound New Talent)」
②「Ethos(2007年、Inner Circle Music)」
③「Shift(2013年、Blue Note)」
①のライナーノーツにはGreg Osbyがコメントを寄せており、また②のInner Circle Musicは確かGregが興したレーベルだったと思います。①と②を聴いて非常に気になりましたので、③は「縁遠い」Pat Methenyさんが参加しているにも関わらずちゃんと聴いています。なお①と②では本アルバムのリーダーNasheetがドラムを叩いています。
Logan Richardsonのアルトの深く美しい音色はとても魅力的です。そして息の長い個性的で少々ひねくれたフレーズを力強く吹き切ってしまうタイプで、このあたりは(もしかすると師匠である)Greg Osbyとの親密な関係性が窺えます。
一方Jason Moran、Tarus Mateen、Nasheet Waitsのリズムは、ゴツゴツと生々しく或いは無愛想で、まるで「好きな奴らだけに聴いてもらえればいいんだ」とでも宣言しているかのようなある意味「独善的」なサウンドです。
例えば冒頭曲や4曲目が典型的なのですが、1960年代Blue NoteのTony Williams、Andrew Hillあたりの新主流派サウンドをさらに先鋭化した感じで、特にJason Moranはいつも以上にアブストラクトに攻めてきます。Nasheetのプレイは「バラバラ」感というか、ドラムセットのあちこちから音が出てくるのですが、結果としてそれらが調和して強烈なリズム、ビートになっている、そういう印象です。このあたりはなんともうまく表現できませんが、自身のリーダーアルバムですので、このような彼のドラムの持ち味が充分に露出しています。
このリズム陣が叩き出す個性的で尖ったサウンド~好き嫌いが分かれるところですが~と、意志の強さを感じさせるLogan Richardsonのアルトとの相性はバッチリです。
なお1曲目の"Tough Love"は「Andrew Hill / Dusk(1999年、Palmetto)」収録曲、4曲目の"Mrs. Parker of K.C."はよく知られた「Eric Dolphy / Far Cry(1960年、New Jazz)」の冒頭曲、6曲目の"Emil Danenberg"は「Stanley Cowell / Illusion Suite(1972年、ECM)」の収録曲です。"Mrs. Parker"は別にしても、よくもこんなマニアックな曲を持ってきたものですね。
この記事を書く前は、Logan Richarsonをフォーカスした文章にしようと思っていたのですが、改めてじっくり聴いてみて、もちろんLoganも素晴らしいけれど、やはりこのアルバムの魅力は曲者三人の「Jason Moran Trio」による強力なリズムだな、と再認識した次第です。
Rec. Date: May 2008
Personnel: Logan Richardson (as), Jason Moran (p), Tarus Mateen (b), Nasheet Waits (ds)
1. Tough Love [Andrew Hill]
2. Shine [Richardson]
3. Hesitation [Waits]
4. Mrs. Parker of K.C. [Jaki Byard]
5. The Summit [Moran]
6. Emil Danenberg [Stanley Cowell]
7. Smoke Stance [Moran]
8. King Hassan [Mateen]
9. Kush [Waits]
Tony MalabyやラッパのAvishai Cohen、Jason Moranらのアルバムに参加するドラマーNasheet Waits(1971年生まれ)の現時点で唯一のリーダーアルバムです。彼の父はやはりドラマーのFreddie Waits(1940-1989)で、私の大好物である晩年のLee Morganとの共演や、1960年代のMcCoy Tyner、Andrew HillのBlue Noteのアルバムなどに参加していました。
本アルバムは若手アルトLogan Richardson(1980年生まれ)のワンホーン・カルテットの編成です。Logan Richardsonは、現時点で既に以下の3枚のリーダーアルバムを出しています。
①「Cerebral Flow(2006年、Fresh Sound New Talent)」
②「Ethos(2007年、Inner Circle Music)」
③「Shift(2013年、Blue Note)」
①のライナーノーツにはGreg Osbyがコメントを寄せており、また②のInner Circle Musicは確かGregが興したレーベルだったと思います。①と②を聴いて非常に気になりましたので、③は「縁遠い」Pat Methenyさんが参加しているにも関わらずちゃんと聴いています。なお①と②では本アルバムのリーダーNasheetがドラムを叩いています。
Logan Richardsonのアルトの深く美しい音色はとても魅力的です。そして息の長い個性的で少々ひねくれたフレーズを力強く吹き切ってしまうタイプで、このあたりは(もしかすると師匠である)Greg Osbyとの親密な関係性が窺えます。
一方Jason Moran、Tarus Mateen、Nasheet Waitsのリズムは、ゴツゴツと生々しく或いは無愛想で、まるで「好きな奴らだけに聴いてもらえればいいんだ」とでも宣言しているかのようなある意味「独善的」なサウンドです。
例えば冒頭曲や4曲目が典型的なのですが、1960年代Blue NoteのTony Williams、Andrew Hillあたりの新主流派サウンドをさらに先鋭化した感じで、特にJason Moranはいつも以上にアブストラクトに攻めてきます。Nasheetのプレイは「バラバラ」感というか、ドラムセットのあちこちから音が出てくるのですが、結果としてそれらが調和して強烈なリズム、ビートになっている、そういう印象です。このあたりはなんともうまく表現できませんが、自身のリーダーアルバムですので、このような彼のドラムの持ち味が充分に露出しています。
このリズム陣が叩き出す個性的で尖ったサウンド~好き嫌いが分かれるところですが~と、意志の強さを感じさせるLogan Richardsonのアルトとの相性はバッチリです。
なお1曲目の"Tough Love"は「Andrew Hill / Dusk(1999年、Palmetto)」収録曲、4曲目の"Mrs. Parker of K.C."はよく知られた「Eric Dolphy / Far Cry(1960年、New Jazz)」の冒頭曲、6曲目の"Emil Danenberg"は「Stanley Cowell / Illusion Suite(1972年、ECM)」の収録曲です。"Mrs. Parker"は別にしても、よくもこんなマニアックな曲を持ってきたものですね。
この記事を書く前は、Logan Richarsonをフォーカスした文章にしようと思っていたのですが、改めてじっくり聴いてみて、もちろんLoganも素晴らしいけれど、やはりこのアルバムの魅力は曲者三人の「Jason Moran Trio」による強力なリズムだな、と再認識した次第です。