12道府県で計5億6300万円=旅費が最多-補助金不正経理で検査院指摘(時事通信)
国から支給された補助金などの不正経理が12道府県で発覚した問題で、各道府県は20日までに、会計検査院から不適正と指摘された額を公表した。2006年度までの5年分の合計額は国費で5億6342万円。検査対象となった3費目では、旅費が2億6114万円と最多で、事務用品の購入などに充てる需用費は1億7161万円、臨時職員などの賃金が1億2074万円だった(旅費、需用費は内訳非公表の群馬分を除く)。
不適正とされた手法は、(1)旅費で、県単独事業での出張に補助金を充てる(2)需用費で、年度内に支出した分を翌年度に納品させる(3)賃金で、事業本来の目的以外の部署に臨時職員を配置する-など。これまでのところ、私的流用は確認されていない。ただし、愛知で不正経理分とは別の公金が300万円、使途不明となっていることが分かった。
今さらではありますが、こちらの話題です。要は「使い切らないと次年度からは予算を減らす」運用を改めて未消化分の次年度への繰り越しを認めたり、また使途に関しても自治体の裁量を認めるなど、より実態に即した形にすれば消滅する問題のようにも見えるのですが、とにかく現行のルールに外れるものは不正として扱われるようです。
まぁ町や村でこの金額ならいざ知らず、全都道府県の合計で5億円ですから予算全体から見れば誤差にすらならないものでもありますが、金額が小さければ小さいほど取り沙汰されるのが世の常です。公務員叩きの「きっかけ」を探していた人にとっては慶事なのかも知れません。
それはさておき、私の勤務先は官公庁との取引も多々ありまして、支払いに不安のない優良顧客である一方、事務手続きの面では細かい注文の多い、五月蠅い客でもあったりします。役所は融通が利かない~、というのが一般のイメージでしょうね。私もそんな風に思っていたわけです。しかるに今回の不正経理問題を見ていると、役所側にも相応の事情があったのであろうことがわかります。
例えば、請求書に「保守契約料」などと印字されているとしましょう。この点をどうこう言ってくる民間企業には幸か不幸か出会ったことがありませんが、これが役所ともなりますと、本当にどうでも良さそうな理由で請求書が突き返されるのです。曰く「保守契約料、とあるが契約では支払いが出来ない、業務委託料(あるいは点検整備料とか)に書き換えてくれ」等々。
何じゃそりゃ、と思いつつも、「支払いに回せない」ままでは話になりませんから、課長に承諾をもらって請求書を改竄するわけです。いかにもお役所仕事、融通の利かないイメージそのままではありますが、こうでもしないと不正経理になってしまうのでしょうね、きっと。外部の業者に業務を委託する、その料金を払うための予算で「保守契約料」を支払うと不正経理になりますから、そこで杓子定規にルールに従う役所の場合、制度に合わせて請求書の項目も書き換える必要があったようです。
他には「修理代」で請求書を出したら、「今回は物品を購入したことにしたいので、○○部品代で請求書を出してください、それから物品の購入なので、納品書も作ってください」などと言われたこともありました。これも同様の理由でしょうね。「つべこべ言わずにさっさと払えよ」と請求側としては思うわけですが、物品購入用に使途の限定された予算で修理代を支払ってしまうと、これまた不正経理になってしまうはずですから。
予算が年度で区切られているために、これまた請求書を改竄することになったこともありました。3月末に修理をして、その代金を4月頭に請求したわけですが、例によって役所から電話が掛かってきまして「昨年度の修理に対して、今年度の予算からお支払いすることは出来ません。修理日を4月以降に書き換えてください」と。「保守契約料」を「整備委託料」と書き換えるくらいなら解釈の違いで済まされそうなものですが、さすがに架空の修理日を記載するのは会社としても問題になりますので、断らざるを得ません。そうなると向こうも多少は譲歩して「では修理日を記入しないでいただけますか」となりましたけれど。こうでもしないと「(2)年度内に支出した分を翌年度に納品させる」ことになってしまうのでしょう。
「今月中に支払えないと困るんです」なんて言われたこともありました。「支払ってくれないと困る」ならわかりますが「支払えないと困る」って何ですか? これから伝票を回して、それから請求書を出しますから、翌月末までに支払っていただければ結構ですよと、それが普通の流れなのですが、時にお役所からは「どうしても今月中に支払いたい」と頼み込まれることがあります。ふ~む、来月になってしまうとたぶん、使い切れなかった予算を返還しなきゃいけないのでしょう。そのせいか役所としては、請求書が届く前から払う気満々でした。そう言えば担当営業が見積書を出しただけで、社内で伝票が回るより早く支払われたこともあったなぁ……
もちろん、融通の利かない役所ばかりじゃありません。請求書を送れば、特別なことはせずとも黙って支払う、融通の利く役所もたくさんあります。ただ、そうした融通を利かせてきた役所が、今こうして糾弾されているのだと思うと、まったくいい気はしませんね。
契約書を作ったりすることは私はないのですが、そういった話は関係者からよく聞きます。
物品や役務の発注があり、「正当な」金額のお金が支払われたとしても、予算科目の違うところから支出されると、不正と見なされます。
なお、会計検査院の指摘の中にもいろいろあって、明らかに不当な「不当事項」の他、指摘したけれどそれをうけて改善されたことも報告書には上げられます。そうゆうのをひっくるめて、不正と記述するマスコミもいかがなものかと思います。
以前とある国立研究施設でバイトしていた時、下訳のような仕事をしていたのですが「原稿料」になったり「事務補助」だったり、色々工夫している様子がうかがわれました。しかし一度だけとは言え「消耗品費」で扱われたときには、複雑な心持ちになったものです。
お役所は頭が固いから、と思いきや、向こうも色々な制約のある中で工夫してやっているようですね。その頭の固さは個々の役所ではなく国の制度に起因するようですが、この融通の利かない部分が日頃は非難されているのに、融通を利かせた結果が不正経理として糾弾される、まぁ何をやっても叩かれるのが役所でもあるのでしょうけれど。
>freitagさん
そう言えば大学の研究費も、色々と制限がありましたね。余った研究費を使い切るように事務室から指示があって、じゃぁプリンタが壊れているので新しいのを買いませんかと提案したら、余っているのは出張費であって物品購入費は余っていないと却下された記憶があります。そう言えば、非常勤の人件費は「消耗品」のカテゴリーだとか聞いたような……
>また使途に関しても自治体の裁量を認めるなど、より実態に即した形にすれば消滅する問題のようにも見えるのですが
そんな裁量の拡大をしたら、それこそマスコミや国民が非難の大合唱を始めると思います。
それと、少し別問題ですが、財政の苦しい自治体で既に、裁量の範囲内で、教育関連予算の流用が生じているようですので、あまり裁量を拡げすぎると、教育や社会保障が圧迫されかねません。只さえ少ない生活保護費がさらに減額されたりとか。
①請求書の日付を空けてもらう
②「工事請負費」を「修繕料」に、「備品購入備」を「消耗品備」に書き換えてもらう。
③1月から3月の請求を、年度が変わった4月以降の請求にしてもらう。
こういうことは日常的にやっております。現場を抱えるものとしてはやむを得ないことだと、自分に言い聞かせています。
この財政難の時代、補正予算もよほどのことがないと認めてくれません。しかしどの役所でも聖域があり、予算の査定が極めて甘いセクションも確かにありますね。
そこがメディアと国民の勝手なところですよね。日頃は役所を「融通が利かない」と責め立てておきながら、かといって役所の判断で融通を利かせるとバッシングに走るわけですから。そう言えば宮崎の東国原など「改革派知事」は道路特定財源の一般財源化に反対するわけですが、逆に教育や福祉の分野では、別の用途への流用に大賛成でしょうから、そういう面での規制が必要になる部分はありますね。
>悪家老さん
始めて役所を相手に請求書を切ったときは、どうしてこんな細かく指定してくるのか、無駄な手間を増やしているばかりではないかと不満に思ったものですが、まぁ物事にはそれなりの理由があるのですよね。大型投資や公共事業関係はどんぶり勘定のイメージも強いですが、大半の部門は事細かな制約の中でやりくりしなきゃいけないものなのでしょうかね。