ラーメン二郎の経営戦略についてジロリアン歴10年の僕が考察する。

ラーメン二郎の経営戦略についてジロリアン歴10年の僕が考察する。
月1回の楽しみ。
僕にとってそれは「ラーメン二郎」に通うことです。
ニンニクと茹だったキャベツの香り、トロトロの背油がのったチャーチュー、そしてモチモチの太麺。これらが絶妙なバランスで奏でるカロリー満点のハーモニーは、麻薬的です。
本当は、毎日でも食べたいところですが、健康のことを考えて月1回程度の楽しみに温存しています。
ここ数年、インスパイアの店舗がたくさん出てきたり、コンビニでも模倣商品が発売されたりと、二郎の影響力がより拡大していることを感じますが、やはり本家の人気やクオリティには全く至りません。
日本の飽和しているラーメン業界の中でも、「二郎」というジャンルを確立し唯一無二の存在感を放っていると感じます。
その理由はどこにあるのか?
ということをジロリアン歴10年になる僕が考察していきたいと思います。
ラーメン二郎とは?
ラーメン二郎は関東で絶大な人気をほこり、「ジロリアン」と呼ばれる熱狂的なファンがついている超有名ラーメン店です。
創業は1968年(昭和43年)、東京都目黒区の東京都立大学近く。
現在はのれん分けの支店を多く展開し、
北は北海道、茨城、福島、湘南と、その数40店舗越えています。
創業店主の山田拓美の長年の功績を称え、「慶應義塾特選塾員」に表彰されていたり、イギリスの高級紙・ガーディアン紙の「世界で食べるべき50の料理」に選ばれるなどの実績もあります。
顧客戦略
「学生時代からファンを育てる」
ラーメン二郎は、創業当時から学生をメインターゲットとした大学付近という立地で店舗を展開しています。
30代40代になっても、駅前立地ではない不便な立地条件であっても客足が絶えないのは、学生時代に食べた味を忘れないという心理からだと言えます。
僕自身も、二郎に出会ったのは学生時代です。
お金はないけれど、でも美味しいものがっつり食べたい。そんなニーズを満たしてくれるのが二郎でした。
二郎の各店舗では、新規顧客である大学生と、二郎を食べて育った卒業生たちが列をなしているわけです。
提供価値
「達成感」
多くの人が二郎に魅了される理由は、味はもちろんですが、ボリューム満点の大盛ラーメンを食べきった時のなんとも言えない「達成感」にあると感じています。
二郎での食事には、ある種のプレッシャーがあります。
それは、カウンターに着席してラーメンが運ばれてきた瞬間から、順番を待つ人々がまるで格闘技の試合を観戦しているギャラリーのごとく視線を送ってくるのです。
どの量のメニューをどんなトッピングで、どのくらいのペースで食しているか?
というのを見られている感覚があるのです。
食べきることができなかったり、周囲よりペースが遅いということは、二郎という食の格闘技で「負けた」感覚に陥ります。
一方、それを完食できた時の達成感は、想像以上に大きなものがあります。
二郎の客を見ていると、完食をして立ち去る時は、皆一様に「寡黙なドヤ顔」をして少し胸を張って店を後にするのです。
ケイパビリティ
量と価格のバランス
二郎のラーメンには、量と価格に驚くほどのギャップがあります。
基本的には1000円以下の予算で、他の店で食べたら1500~2000円はするであろう量が出てくるという点です。
しかも、ただ単純に多いだけではなく、質も非常に高いのが特徴です。
一般的な二郎インスパイアの店舗では、「野菜」と言った基本もやし。
そして「チャーチュー」も申し訳程度の薄切りのものが2枚程度。
これが普通です。
しかし、本家の二郎では、「野菜」はしっかりとしたキャベツ。
「チャーシュー」も厚切りでたっぷりと背油の乗ったものが出てきます。
両者の価格は同じくらいか、前者の方が少し高いくらいかもしれません。
それだけ強烈なコストパフォーマンスの高さを感じます。
暗黙の文化
二郎には数回は足を運ばなければわからない暗黙の文化があります。
コール
「野菜、ニンニク、アブラ、カラメ、マシマシ」と言った呪文のような言葉が存在します。
これは、トッピングとその量を伝える用語です。
自分の麺が茹で上がったくらいのタイミングで、店員から「ニンニク入れますか?」と問いかけられますが、これがニンニク以外も含めたトッピングや量の内容を伝える質問だと理解するのは相当難易度高いですよね。
その「知っていて当然」と言わんばかりの挑戦的な世界観も、二郎らしさの一つと言えます。
独自マナー
・食後のカウンターは自分で拭く
・丼は自分で下げる
・麺切れの案内は最後尾の客に任せる
二郎では、かなり客まかせの運営が行われていますが、これに対して文句を言う客は誰一人としていません。
むしろ、積極的に片付けをしたり、客同士で案内を行うということが自然に行われています。
ここから感じるのは、ラーメン二郎の客同士の一体感です。
お互いに二郎という挑戦に挑む同士。という謎の連帯感が育まれているように感じます。
ビジネスモデル
「独自のコストカットノウハウ。」
安い価格で、質・量ともにクオリティの高いラーメンを提供する二郎ラーメンの原価率は、決して低くありません。
しかし、いくつか点で他のラーメン店とは異なる手法を用いることで、しっかりと利益を確保できる経営を行っていると言えます。
メニューは1種類に絞る。
ラーメン二郎では、いわゆる「二郎ラーメン」1種類しか提供していません。
あとは、量とトッピングによる金額の違いだけです。
これにより、ムダな仕入れはほとんどなく、仕入れた分がそのまま利益に直結するという構造になっていると言えます。
二郎ではほとんどの場合、閉店時間前に麺切れをすることも多く、非常にロスの少ないメニュー構成であると言えます。
人員とサービスは最小限
二郎の従業員は非常に少なく、店主とアルバイトが一人というケースがどの店舗でもほとんどです。
それで店が回る理由は、枝葉のオペレーションはすべて客に委ねているからだと言えます。
しかし、二郎の独自の世界観によって生み出されているもので、他の飲食業にとってはなかなかマネが難しいものだと言えます。
まとめ
二郎の経営戦略はかなり特殊です。
しかし、それを実現しているのは、圧倒的な商品力とその世界観に他なりません。
修行を経てのれん分けをするという二郎の世界観を維持しながら拡大していくという、手間のかかるプロセスは、大規模な飲食チェーンではできないことだと思います。
二郎のように規模は小さくても、その独自性を貫くようなビジネスモデルが、今後はより一層支持されていくことは間違いありません。
僕自身もこの記事を執筆していて、より一層二郎への愛が深まり、食欲が湧いてしまいました。このまま、二郎の店舗に足を運ぼうと思います。