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国旗損壊罪の創設案 息苦しい社会にするのか

日章旗=東京都千代田区で2025年8月15日、武市公孝撮影 拡大
日章旗=東京都千代田区で2025年8月15日、武市公孝撮影

 人々を萎縮させかねない動きである。息苦しい社会にするつもりなのか。

 自民党と日本維新の会の連立合意で、刑法に日本国旗損壊罪を創設する方針が打ち出された。来年の通常国会での法改正を掲げる。

 高市早苗首相が取り組んできたテーマである。自民は野党時代の2012年に同様の刑法改正案を提出した。廃案になったが、提出を主導したのが高市氏だった。

 現行の刑法には、侮辱する目的で外国の国旗を燃やしたり汚したりした人を罰する条文があるが、日本国旗については規定がない。バランスが取れていないというのが、創設しようとする理由だ。

国会前で国旗・国歌法案の衆院内閣委採決に抗議する市民グループ=1999年7月21日午後6時、岩下幸一郎撮影 拡大
国会前で国旗・国歌法案の衆院内閣委採決に抗議する市民グループ=1999年7月21日午後6時、岩下幸一郎撮影

 ただ、外国国旗を損壊する行為を処罰するのは、外交関係に悪影響を及ぼし、日本の国際的信用を損ねる恐れがあるためとされる。

 日の丸の旗が傷つけられることに、不快感や反発を覚える国民が多いのは確かだ。だからといって刑罰まで科す必要があるのか、慎重な検討が求められる。

 懸念されるのは、憲法が保障する表現の自由や思想の自由が脅かされる可能性があることだ。

 政府や政党に異議を申し立てる手段として、国旗を焼く、印を付けるといった例は、これまでもあった。罪に問えば、そうした意思表示を抑え込むことにつながる。

 戦前、軍国主義や植民地支配の象徴となった歴史から、日の丸に否定的な思いを抱く人もいる。

 日の丸をモチーフにした芸術作品や広告といった表現活動が制約を受けることも心配される。

 米国では、政権への抗議で星条旗を燃やした行為に関し、罰則を設けた法律が憲法に違反するとの判断を連邦最高裁が示している。表現の自由の侵害に当たるとの考えからだ。

 日本国旗損壊罪を設けるに当たっては、過去の政府答弁との整合性も問われる。1999年に成立した国旗・国歌法の審議過程で、当時の小渕恵三首相は「国旗に対する侮辱罪の創設は考えていない」と述べている。

 安全保障などを巡り、個人の権利よりも国家の利益を優先する主張が目につく。そうした中、刑罰をちらつかせて国旗への敬意を強制しようとすることには、危うさを感じざるを得ない。

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