フジテレビに迫る「負のスパイラル」 元テレ東局員の教授が懸念

タレントを引退した中居正広さん(52)による女性トラブルを巡り、社員の関与が報じられているフジテレビ。10時間超にも及ぶ「仕切り直し」の記者会見を開いたものの、スポンサー離れは止まらず、混乱収束の見通しは立たないままだ。
一連の対応で、何を間違えたのか。テレビ業界には今後、どんな影響がでるのか。元テレビ東京プロデューサーの田淵俊彦・桜美林大芸術文化学群教授(メディア論)に尋ねた。【聞き手・千脇康平】
<主な内容>
・番組は「人間が創り出す」
・経営陣に染み付いた「タブー視」の姿勢
・「視聴者から見放されてしまう」
「公共電波の私物化」では
――27日に開かれた「フルオープン」の記者会見をどう見ましたか。
◆フジテレビによるスポンサー、外資系ファンド、総務省の3者に向けたパフォーマンスだった、と受け止めました。第三者委員会の調査に委ねることで何とか乗り切ろうとしたのでしょうが、冒頭説明から明らかに準備不足でした。
――会見は10時間超にも及びました。
◆長くなった原因は、フジテレビ側の準備不足にあると思います。質問者の資質を問う声はありますが、しっかりと答えないから何度も聞くわけです。
中居さんを番組に起用し続けた理由など、会見で突っ込まれていた質問は、23日に開かれたフジテレビの社員説明会でも問われていた内容です。社員の声に真摯(しんし)に耳を傾けていたら「フルオープン」の会見までに答えを準備できたはず。
フジテレビの関係者から「あれほど言ったのに……」といった失望の声が私の元に届いています。
テレビ番組は「人間」が創り出すもので、機械に代わりは務められない。経営陣は大事な視点が抜けている、と思いました。
――フジテレビは、予定していた番組を飛ばして、会見を深夜まで放送しました。
◆途中から「公共電波を私物化している」と感じました。テレビ局は国民みんなのものである電波を預かって商売している。
フジテレビは、「丁寧に答えた結果」と弁解するかもしれませんが、想定される質問に対する答えをしっかりと準備しておけば、もっと短時間に収められたはずです。無為無策のまま10時間超も自社の会見を放送するのは電波の私物化。皆さん、もっと怒っていいんじゃないでしょうか。
「日枝体制」の一掃は不可避
――フジテレビで影響力を持つとされる日枝久・取締役相談役(87)は会見に姿を見せませんでした。日枝氏について、責任を追及する質問が飛んでも、登壇した役員は、かばうような発言に終始しているとも感じました。
◆経営陣に染み付いた習性…
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