「これが、あの優しかったお姉さんなのでしょうか」。やつれ切った姉ウィシュマ・サンダマリさん(享年33)の遺体を、泣きながら見つめていた。名古屋出入国在留管理局(名古屋市)で3月6日に亡くなったウィシュマさん。母国スリランカから来日した2人の妹たちが5月16日、市内の葬儀場で死後に初めて対面した。妹で次女のワユミさん(28)は「いまだに死因も分からない。収容中を記録したビデオを見たい」と絞り出すように話した。【和田浩明/デジタル報道センター】
「本当のこと隠されている」遺体と対面の遺族
毎日新聞は遺族のワユミさん、三女のポールニマさん(26)らの許可を得て、対面の様子を取材した。
2メートルほどの長さの白いひつぎの中に、灰色の服を着て目を閉じたウィシュマさんが静かに横たわっていた。ポールニマさんが知人女性の腕にすがるようにして傍らに立ち、姉の様子を確かめた。
「歯や足を見ることはできますか」「この服は亡くなった時に着ていたのでしょうか」「なぜかつらをつけているのですか」。ポールニマさんが周囲の日本人支援者に通訳を通じていくつも質問をする。変わり果てた姉の姿に「本人なのか、にわかには信じられない」のだ。
娘の死で健康が悪化した母スリヤラタさん(53)からは「八重歯と脇腹のあざ、足裏のほくろがあれば本人だから、確かめてほしい」と言われてきたのだという。
ワユミさんはぐったりと椅子に座り込んでいる。慰める夫の手を握りしめて、時折おえつを漏らした。「亡くなって2カ月もたったのに、理由も分からない。亡くなった当時の写真も見せてもらっていない。本当のことが隠されている。ビデオを見たい」と涙声で話す。
ビデオとは、健康状態が悪化していたウィシュマさんの「容態観察」のため、入管側が1月下旬に単独室に移した後の監視カメラの映像だ。入管を管轄する上川陽子法相は「ご本人の名誉・尊厳や保安上の理由」などから開示を拒んでいる。遺族らが求める面会も、ウィシュマさんの死亡状況に関する調査が進行中であることなどを理由に受け入れていない。
DV被害も訴え
ウィシュマさんは日本で子供に英語を教えることを夢見て、日本語学校の留学生として2017年6月に来日した。しかし学費が払えず学校に通えなくなって在留資格を喪失。20年8月、同居男性からのドメスティックバイオレンス(DV)被害を訴えて静岡県内の交番を訪れ、不法残留容疑で現行犯逮捕され名古屋入管に収容されていた。体調悪化の末に入院や点滴を求めていたが受け入れられず亡くなった。
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