一番驚いたのが、昔読んだときと今読んだときとで印象がまったく異なっていること。この本の内容を十分に咀嚼するには、読む側にもレベルアップが必要なようです。
1.まず冒頭の科学用語の英語表現をどれだけ知っているかのテストで、高校や大学で学ぶ、文学・哲学・社会学中心の英語が、理系の学問では役に立たないことに気付きます。(大学1年生の頃、初めてこの本を読んだ僕はこのレベルでした。英語そのものを教える人ってどうしてもいわゆる理系分野を知らない人になることが多いので…)
2.自然な英語を書くとはどういうことか(英語で論文を書くようになった今は、ここで説明されていることがよくわかる)
3.英語でコミュニケーションをとること。(学会などのプレゼンテーションで英語のトークをするようになったので、うなずけることがたくさん)
辞書の使い方、簡潔な英語の書き方なども参考になりますが、巻末の永久保存版「論文を書くための論文」もお勧め。ここには、科学の分野で認めてもらうためには、メディアで名声を得るのではなく、「良い論文」を書かねばならないと断言されています。科学の世界ってそういうものなので、テレビで紹介されている部分だけでは決してわからない。
本書のいたるところに、研究の面白みや、独創的な研究をしていくためのエッセンスがちりばめられています。タイトルを「英語入門」とするには惜しい内容で、「科学への入門」「研究者入門」と呼ぶ方がふさわしいです。そこに気付かずに、理系英語の入門書としてだけとらえると相当にもったいない。けれども、読む側としても「科学」や「研究者」の世界に一歩足を踏み入れてないと、大学入学当初の僕のように、この本に書かれた大切なメッセージを受け取り損ねてしまいます。
これは「科学」の世界へ入っていくための「英語」入門書です。