今のところ中流どころか、ロウアーミドル(lower middle中流の下)の気分にすらなれないので、衝撃を受けないし、「
中流崩壊」にある話も等の昔から気づいていたので、最近話題になるのがおかしいと思いますが、これらの本で衝撃を受ける人もいるでしょう。
日本人に根付く「一億総中流」の意識とか、それに派生する「平等」という意識はとっても嫌なものです。本当の意味の平等とは、選挙権とか教育を受ける権利とか「法の下での平等」くらいでないと、訳がわからないものになりがちです。実際、政治家も混乱しています。
民主党の前原代表が言っていました。教育の機会平等が失われていると主張する文脈で、「親の所得と学力に相関関係がある」 => 「いい大学に入れない」=>「いい会社に入れない」=> 「所得が低くなる」、「このことについて小泉首相はどうお考えですか?」。 小泉さんから何を引き出したいかもわからない、とてもお粗末な質問の仕方なのですが、それよりも、いい大学 => いい会社 => 40代で給料のピークが来てしまった => 甘い起業の誘惑に手をだして失敗(士族の商法のように) という方々がたくさん出てきているのに、その甘い認識では、小泉さんに「学歴がすべてではない」と交わされてしまうのも無理はありません。
話はそれますが、「学歴が低くても政治家にはなれる」と豪語できる小泉さんの神経が不思議です。法律を作る能力のない人、世界だけでなく日本の歴史すら知らない人ばかりが政治家になるのがいいとは思えません。マスコミは「庶民」の感覚を持った人を褒めちぎりますが、そのような無能な人が政治家になるばかりで、大胆な政策は取れず(庶民の感覚だけでは無理です。知に裏打ちされた政策でないと他を説得できません)、結局、損をするのは、増税され年金の割が低い低所得の国民。役人は効率の悪い仕事、不要な施設拡充(世界最高水準の電子化といいながら、結局は窓口に行かなくては何もできない住基ネットや各種届出)で、税金をむさぼっている状態だというのに。
教育の機会均等って、親の仕事に従事しなければならない子の学習時間まで保護するようなものでもないでしょう。修学旅行の資金を出せない家庭に支援をとか、そういう話でもないのでは。中学や高校の3年間より、数日の修学旅行の方が印象に残ってしまうような学校の現場の方がおかしい。これも、学校内では「皆平等」に修学旅行まで行かなければならないという偽善が根底にあります。
そもそも、東大ブランドが通用するのって、日本だけですし、東大を出ても英語を話せない人はたくさんいますから、国際的な評価は相当低いものです。「いい大学」に入る機会が失われているというなら、「いい大学」を増やしてあげればいい。なぜ、それができないかというと、大学が東京にお伺いを立てないと新しい学部も作れないような中央集権型になっているから。
大前さんの本には、この辺りの問題への答えとなる魅力的な提案がいくつもあります。
まず、所得税をやめて、資産課税にする(アメリカの方式ですね)。
せっかく稼いでもそれに応じてたくさん税金をとられるのでは、稼ぐ意欲もなくなるというものです。
(配偶者の103万円ラインもこの例。これを超えると税法上の扶養家族になれないんですよね。なんともばかばかしい話です。)
サラリーマンの方は源泉徴収されているから、さらに税金に無頓着・無関心の人が多い。でも、公務員とか第一次産業従事者に比べて、税金が高いわりに保護が少ないのもサラリーマン。でも、無関心ゆえに、不平等な税金の使い道に怒りの声を上げようともしない。
そして、道州制による地方分権。日本を現行の都道府県よりもっと大きな単位で分割して、それぞれに自治性を持たせること。いい大学、地方独特の産業を育成するには、中央政府のスリム化ではなく、分権こそが必要だという論点には、納得できるものがあります。このままでは、中央政府の東京中心の視点に他の地域が引きずり回されて共倒れするような気配が漂っていますから。予算をとるためだけに、烏合の衆を集めて目新しい名前の学科の創設を申請するようでは、長期的な発展が見込めません。
ロウアーミドルが多くなっても、それに気づく人が増え、ハングリー精神が生まれるならいいのです。でも、それを挽回しようと、勉強もせずに安易に株や資産運用に飛びついてお金を増やそうとするのはいただけないです。株などによるキャピタルゲインは所詮取引で得るもの。取引そのものは、中身のあるものを創り出すわけではないのです。企業を育てるような中身のある投資は、自分自身がちゃんと資金を持つようにならないとできません(機会が廻ってこない)。
この本を読むまで全然知らなかったけれど、大前さんって東京都知事選に立候補してたようです。でも、そのとき当選したのはあの青島さん。それで現職は石原慎太郎。結局、選挙って著名人が勝つようです。石原さんは強気の外交ができるから、都知事なんかではなく政府側にまわって欲しい人なのですが。東京都から、対中国発言している様子をみると、とてもむなしく響きます。
改革といっても、自ら企画して大なたを振るえる人がまだ要職に付いていないのが悲しい。それなのに、知名度にだまされやすく、本質を持った人を国民が支持できる状態になっていないというところが、ますます悲しい。小泉さんは旧派閥を壊すという大きな成果をあげたけれども、彼自身、有意義な政策は練りだしていないのです。
プランを練れる人が実権についたときに、どれほどスピーディに世の中がいい方向に変わるのかを見てみたいのです。ここ数年間の様子を見る限り、これまでの人では、些細な方向(テーマとして大きく取り扱われてはいるけれど)に足をつっこんでばかりで、大事なところ(国民の利益に結びつくようなところ。食費が安くなるとか、給与が上がるとか)に結びつくところへの議論がなかなか進んでくれないのでがっかりなのです。