情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

菅家事件でDNAが違うとの毛髪が本人のものとの裏付けがないと再審を認めなかった裁判所の「正しさ」

2010-02-04 04:31:31 | é©æ­£æ‰‹ç¶šï¼ˆè£åˆ¤å“¡ãƒ»å¯è¦–化など)
 昨日、あるところで、えん罪で17年間も身柄を拘束された菅家さんの事件及びその報道について検討する機会があった。この事件は、DNA鑑定の精度の問題と低い精度の鑑定に頼ったことの問題性がクローズアップされているが、個人的に最も重要なことは、再審請求の際、弁護団が菅家さんの毛髪を取り寄せ、被害者の遺留物に付着した体液と菅家さんのDNA型が一致しないとの鑑定結果を提出したにもかかわらず、宇都宮地裁が、毛髪が請求人のものという裏付けがないとして再審請求が退けられたことだろう。

 皮肉なことだが、この宇都宮地裁の判断こそが、今後の刑事裁判のあり方を解く鍵だと思う。

 この宇都宮地裁の判断に対しては、「じゃぁ、自ら毛髪を鑑定するべきだった」という批判がなされるわけだが、その点を除けば、つまり、本人の毛髪かどうか分からないとした判断自体は、誤ってはいない。弁護団には申し訳ないが、正しいというほかない。

 だって、だれの毛髪かなんて、毛髪を抜くところから鑑定するところまでビデオで撮影し続けるとかでもないと客観的には明らかではないからだ。

 宇都宮地裁もそう考えたのだろう。

 で、ポイントはまさに、ここ。客観的に明らかかどうか?ってこと。

 たとえば、菅家さんの自白、これは検察官、警察官が本人から聞き取りをしたうえで、作成した調書という形で提出される。末尾に本人の署名がなされる。

 その調書がある一方、裁判では、菅家さんは自白は強要された、と主張したわけだ。

 そうすると、自白調書があっても、その作成過程が明らかではないのだから、やはり、その調書に書かれた自白の内容が本当に菅家さんが話したものかどうか、を裏付ける証拠はないというほかなく、宇都宮地裁の判断に従えば、自白した裏付けがないから無罪、ということになるのではないだろう。

 どうして、弁護側が出した資料についてだけ、厳しくその由来を問題とし、捜査側が出した資料については、スルーできるのか?捜査側こそ、厳しい目で監視しなければならないのではないか?

 自白調書はどういう経過で作成されるのか?それは、逮捕されて何日も身柄を拘束されて一日十時間以上も取調べが続けられる中で作成される。

 いわば、監禁されて強要される中で作成されるわけだ。

 そんな調書の内容を無邪気に信じること自体に問題があるというほかない。

 民野検事の石川議員女性秘書取調べ事件からは任意捜査でさえも不当な自白の強要がなされていることが分かるが、これが逮捕されている場合に行われていたら、その強要ぶりがさらに過酷なものとなることは容易に想像できると思う。
 
 問題は、調書だけではない。

 たとえば、捜査側から出される鑑定については、時々、資料について、「全量消費」という記載がなされることがある。たとえば、ある現場に残された液体に何が含まれているかを鑑定した場合に、その液体を鑑定のためにすべて使ったから残っていない、というようなことがあり、そういう場合に「全量消費」と記載される。

 検察はこの結果を堂々と裁判所に提出し、裁判所はその判断を容易に認める。

 しかし、二度と検証できないような鑑定結果が正しいとなぜ、裁判所は判断することができるのだろうか? 裁判所はもしかして「神」なのか? それとも裁判所は、捜査側が全員、「善良で絶対に不正などしない信用できる人」だと信じているのか?



 そう、宇都宮地裁の判断に従い、今後は、検察から提出された証拠が客観的に本人のものと裏付けられない限り、信用できないという取扱いをするべきだろう。

 調書については、取調べの過程が全て録画されていない限り、そして、取り調べ室に出入りする間は、警察官ではなく、拘置所の職員が付き添うということにしない限り、それが本人の話した内容であるとは認められない。

 鑑定については、その最終過程をきちんとビデオに撮影し、いつでも、検証できるように資料が保存されていない限り、事件に関連する資料を鑑定したものとは認めない。

 弁護士が作成したものなんて認められない、っていう以上、捜査側についても同じように懐疑的になってよね。弁護士が、検察官・警察官よりも信用できない特段の理由があるのなら別だが…。 



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