2024-12-31

コードの向こうに潜む闇

第1章: 不具合か、陰謀

朝のオフィスはいつもとは違う緊張感が漂っていた。主人公佐藤太郎オフィスに着くなり、リーダー中島からすぐにミーティングルームに呼び出された。彼が所属するテック企業「エクスプラネット」は、日本国内トップクラスシェアを誇るクラウドサービス提供している。その中でも佐藤が手掛ける基幹システムは、日々膨大なデータを扱い、企業にとってまさに生命線とも言える存在だった。

「遼太郎緊急事態だ。今朝、基幹システムが停止した」

中島の低い声が静まり返った会議室に響く。

「停止…ですか?」佐藤は一瞬言葉を飲み込んだ。

「そうだ。顧客データ管理しているクラスタ全体が応答しない状態になっている。障害発生時刻は午前3時15分。サーバー自動復旧も失敗している。原因の特定を急いでほしい」

佐藤はすぐにノートPCを開き、障害発生時刻のログ確認するためにキーボードを叩き始めた。慌ただしく動き回る他のエンジニアたちの姿を横目に、彼は集中する。

ログが語る不審挙動

サーバーログファイルには、大量のリクエストエラーが記録されていた。その内容を精査する中で、奇妙な点が一つ目についた。それは、午前3時12分、つまり障害発生の3分前に発生した、大量の異常なトラフィックだ。IPアドレス海外のもので、アクセス元は分散されていた。

分散DDoS攻撃可能性がありますね」

佐藤の隣で作業を進めていた後輩の田中がそう呟いた。

「確かにトラフィックパターンはDDoSに似ている。ただ、問題はその後だ。障害が発生する前の数秒間、アクセス元が突然ゼロになっている」

佐藤スクリーンを指差しながら説明した。

通常、DDoS攻撃は持続的に負荷を与え続けることを目的としている。しかし、このケースでは突然すべてのリクエストが消え、直後にシステムが停止しているのだ。この不自然な動きに、佐藤直感が働いた。

攻撃だけじゃない。内部の何かが連動している可能性が高い」

そう呟いた瞬間、中島電話を片手に入ってきた。

「追加情報だ。サーバールームに設置されている監視カメラが、午前3時10分に一瞬だけ途切れていたらしい。そのタイミング物理的な不正アクセスがあった可能性も出てきた」

佐藤の頭の中で複数ピースが繋がりかけていた。不自然トラフィックの急増と消失、そして監視カメラ遮断。これが単なる偶然であるとは考えにくい。

プレッシャーの中の調査

その日の午後、佐藤たちは原因の特定を急ぐため、緊急チームを編成した。セキュリティ担当桐生ネットワークエンジニア矢島、そして佐藤の三人が主要メンバーとして動くことになった。

「まず物理的なアクセスがあったかどうか確認しましょう。サーバールームの入退室記録は?」

桐生質問すると、中島資料差し出した。

「入退室ログには異常はない。だが、カメラが途切れたタイミングでの動きがどうも怪しい。業務時間外だから特定は難しいが…」

「つまり、何者かが監視カメラ無効化して侵入した可能性が高いですね」

矢島が口を挟む。

一方で佐藤は、引き続きシステム上の問題を追っていた。彼が注目したのは、停止直前に実行されたスクリプトだった。その中には、普段運用では利用されない不審コマンドが記録されていた。それは、システム全体のシャットダウンを引き起こす可能性のある致命的なもので、通常アクセス可能範囲を超えたものだった。

「誰がこれを実行した?」

佐藤は思わず声を上げた。

疑惑と動揺

犯人は外部の攻撃者なのか、それとも内部の関係者なのか。現時点ではどちらとも言えない。佐藤の頭をよぎるのは、最近プロジェクトを巡って対立していた別のチームの存在だ。特にリーダー篠田は、佐藤のチームがリソースを独占していると不満を漏らしていた人物だ。

だが、同僚を疑うのは容易ではない。佐藤は一つ深呼吸し、気持ち落ち着けると中島に言った。

明日の朝までに、可能性のある全ての原因を洗い出します。それまで少し時間をください」

中島は無言で頷き、会議室を後にした。

夜明け前の一歩

深夜になっても、佐藤オフィスに残っていた。モニターの青い光が彼の顔を照らし続ける。キーボードを叩く手が少しずつ疲れを感じ始める頃、ふと別のログファイルが彼の目に留まった。それは、3か月前に削除されたはずの古いアプリケーションの実行記録だった。

「なぜこれが今、実行されている…?」

その瞬間、彼の背筋に冷たい汗が流れる。古いシステム再起動したのは誰か。そして、その意図は何だったのか。佐藤は、次第に明らかになりつつある陰謀存在直感した。

———

全部で第12章くらいまでになりそうなので、一旦ここまで。ニーズがありそうなら残りも順次投下します。

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん