収束
「収束」とは・「収束」の意味
「収束(しゅうそく)」とは、国語としては「集めて束ねること」や「まとまって収まりがつくこと」といった意味を持つ。多様な意味合いを持つ語で、数学や海洋学などさまざまなジャンルで広く用いられている。収束は「終息(しゅうそく)」や「集束(しゅうそく)」との使い間違いなどで誤用が目立つ語だ。使い方には注意が必要である。「収束」の主となる意味は、まとまって収まりがつくことである。これは、分裂していたものや、混乱によって勝手な行動を取るようになったものが、一所に集まることだ。収束の例としては「秘められた力を解放するだけでなく、それを自分の意思で収束できるようになること。これが重要だ」「事態は収束へと向かい、やがては穏やかな終焉にたどり着くだろう」「この事件をきっかけにその男が現れることは一切なくなった。事件は犯人が不明のまま収束したのだった。」のようなものが挙げられる。
「まとまって収まりがつくこと」を意味する収束は、誤用が多い。例えば、「感染症にようやくしゅうそくの目途が立った」と言ったとき、この「しゅうそく」は「収束」と「終息」のどちらを用いるべきなのだろうか。収束は「収(おさ-まる)」と「束(たば-ねる)」という、物事をまとめる意味を持った2つの語が結びついてできた言葉だ。そのため、状態がまとまる様子、あるいは一定の形に収まる様子をニュアンスとして持つ。
対して終息は「終(お-わる)」と「息(や-む)」という2つの言葉が結びついている。言葉が持つ印象通りに「(物事が)やむこと、終わること」あるいは「絶えること」を終息は示す。つまりは、完全に終わることを表す言葉だ。「感染症にようやくしゅうそくの目途が立った」とある場合、収束と終息のどちらをあてるべきかは「しゅうそく」が何を指すかで考えるとよい。
「感染状況が安定した」あるいは「ほぼ事態がおさまりつつある」というなら「収束」が適しているだろう。もし、「感染症を完全に撲滅した」もしくは「もはや問題とならない状況になった」というなら「終息」がふさわしい。終息の例文には「スペイン国内における戦闘が全面的に終息したのはその年の末のことだった」「起訴猶予となり事件は終息した」などが考えられる。これらを「収束」とすると「すっかり終わった」というニュアンスが崩れてしまう。誤用しないように注意しなければならない。
収束は「集束」との使い分けにも注意がいる。ただし「終息」とは違い、どちらを使っても誤りとはいえないことも多い。集束は「(光線が)1点に集まる様子」を意味する言葉で、収束と意味を同じにする部分がある。例えば「集束ビーム」という言葉は、光を集めて一点に絞りビーム状にしたものを指す。これは「収束ビーム」としても誤りではない。しかし、集束には「おさまりがつく」といった意味合いはない。上述の「感染症にようやくしゅうそくの目途が立った」の「しゅうそく」に「集束」を入れると誤用と捉えられるだろう。
数学的意味での収束は、主に3つの意味がある。1つは数列における収束である。無限数列が特定の値に近づくことを収束と呼ぶ。無限数列とは、数列の項が無限に並んでいる数列のことを意味する。無限数列{an}において、添数の「n」が限りなく増大するとする。anが特定の値αに近づくのであれば、{an}はαに限りなく近づく。これを収束すると言う。例えば、{1/n}の場合(つまりは1,1/2,1/3,1/4,1/5,……,1/nとなる数列)、nを限りなく増大させると、第n項である「1/n」は限りなく「0」に近づく。
2つ目は関数値の収束である。実変数の関数f(x)においてxがaに限りなく近づくとき、f(x)は値αに向かって限りなく近づく。このように、xの変動により関数f(x)がαへと近づいていく状態を収束といい、lim[x→a] f(x) = αと表せる。αはxがaに近づくときの極限値という。
3つ目は関数列の収束である。関数列とは規則性を持って順番に並べられた関数の列を指す。ある集団D上に、任意のxによる関数列f1(x), f2(x), ……, fn(x)が存在するとする。数列{fn(x)}が常に任意の値へと近づいていくなら、その極限値はf(x)と表せる(極限関数)。このとき、前述の関数列はf(x)と近づていく。この状態を収束と呼ぶ。関数f(x)へと近づく状態は、lim[n→∞] fn(x) = f(x)で表せる。
また、光が集まり一点に集まる様を指して「収束」と呼ぶ。「集束」とも書く。光線は屈曲レンズを用いることで、屈折させ、一定の場所に集めることができる。これが収束である。光の収束には、中央が膨らんだ凸型の屈曲レンズを使う。収束させた光が通過する収束点を焦点と呼ぶ。光の収束はさまざまなものに応用されている。虫眼鏡の集光による点火は、収束のわかりやすい例といえるだろう。写真のフィルムは外部からの光を収束させ、フィルムに感光させることで像を焼き付ける仕組みだ。このほかにもレーザーやホログラフィなどさまざまな応用例が光の収束には存在している。
気象学や海洋学など流体を扱う学問では、流体が一点に集まる様子を指して「収束」が使われている。例えば気象学においては、気圧などによって生まれた気流が、一点に集まる様子を指して収束と呼ぶ。風が周囲から集まってくる様子を「方向収束」という。方向収束が感じやすい状態は台風であろう。台風は中心部に向かって地上付近の風を巻き込む。この中心部に向かって風が集まる状態が方向集束だ。前方の風が遅く後方が速いとき、一点に気流が集まる状態が起きる。これを「速度収縮」と呼ぶ。偏西風で起きる気圧の谷の西側などで観測できるだろう。
流体における収束は一点を過ぎ去ったあとは、必ず拡散に転じる。台風は低気圧の周辺から風が中央に向かって集まり収束した後、集まった気流は行き場を失い上昇気流に転じる。上空に行くほど収束する力は弱まり周囲へと気流は発散されていく。なお、上昇気流が最も強くなり、収束と発散が逆転していく辺りを非発散面と呼ぶ。
「収束」の熟語・言い回し
「収束」は、一般的に「収束した」「収束する」のように使う。熟語では、集まっていく状態を指したものが多い、例えば、光を一点に集める「収束レンズ」、超音波を照射する治療方法に使う「収束(集束)超音波」などである。また、数学の数列において、特定の項が任意の値へと近似となる様を表す「数列収束」のように、近づいていく様子を表している熟語も少なくない。条件付き収束とは
経済仮説の1つである。経済学では、第二次世界大戦以降の経済成長を説明するにあたって、ソロー・スワンモデルが広く用いられてきた。これは、日本の戦後復興や先進国と途上国の経済格差を理解する上で、非常に有用で強力なモデルである。しかし、1980年以降、経済学で内生的成長論が唱えられるようになった後の実証研究において、ソロー・スワンモデルから導き出される結論は「無条件収束(Unconditional Convergence)」ではないとの主張が起きるようになった。
その中心人物であるマクロ経済学者ロバート・バロー(Robert Joseph Barro)は、すべての経済が同様の均斉成長へと徐々にたどり着くわけではなく、貯蓄率等の変数によって決まる各国それぞれにおける定常状態に到達する、という仮説を主張した。これが「条件付き収束仮説(条件付き収束)」である。バローは研究の結果、アメリカの州別データや日本の県別データにおいて、条件付き収束仮説が確認できたことを報告した。なお、バローは経済成長に大きな変化を与える変数として初等教育の水準を挙げている。
収束
収束とは、収束の意味
収束とは、日常生活においては混乱していた物事がいったん収まるという意味。収束の収は、ものごと決着すること、ある範囲内に入りきることといった意味を持ち、束は、たばねる、ひとまとめにするといった意味を持つ。英語では convergence と表現する。なお、高校数学などで学ぶ数列における収束は、一定の値に限りなく近づくという意味である。新型コロナウィルス感染症における収束とは
新型コロナウィルス感染症における収束とは、新規感染者数が一定期間減少傾向にあり、医療機関が落ち着いた状態にある時である。一方、新型コロナウィルス感染症の終息といった場合には、ワクチンが開発され、新規感染者がほとんどいない状態を指す。しゅう‐そく〔シウ‐〕【収束】
収束
収斂
(収束 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/13 08:46 UTC 版)
収斂(収㪘、収れん、しゅうれん)または収束(しゅうそく)(en:convergence)とは、複数の物が互いに異なる性質・指標などを持っている状況から変更・移行を起こし、同質化・同等化・相似化(互いの性質等の差を無くす方向)が進むこと。散布的に位置していた複数の物を一箇所に集める(集まっていく)こと。一般的な意味では、広がっている何かが一点に集まる(集める)こと。
- 1 収斂とは
- 2 収斂の概要
収束
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/11/22 22:36 UTC 版)
格子幅を限りなく0に近づけたときに、離散化方程式の解が元の微分方程式の厳密解に収束することである。数値解析をするときに求められる正しい解とは、この意味での収束解のことである。
※この「収束」の解説は、「ラックスの等価定理」の解説の一部です。
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「収束」の例文・使い方・用例・文例
- 私は地震が収束するのを待ったが、なかなか収まらなかった。
- この問題は収束した。
- 我々はこの問題が収束したと見なしてよいか?
- 私はこの事態が早く収束して欲しい。
- それは収束する。
- 私はその争いが収束する事を望む。
- その被害は収束する気配を見せていない。
- 大地震の発生から、応急対策の収束までの避難の流れです。
- 同地の混乱が収束するまでにはもうしばらくかかるだろう.
- 収束性の斜視があるさま
- 委員会は集会を収束した
- 中心点で、または、それの方へ収束させる
- 線は、この点で収束する
- 2つの収束レンズシステムを持つ軽い顕微鏡:対物レンズと接眼レンズ
- 両端が収束するやすり
- 安定恐慌という,インフレ収束時に生ずる恐慌
- 一つに収束する
- 光線を収束させる光学レンズ
- 電子レンズという,電子の流れを収束させる装置
- 変数の値が収束する
収束と同じ種類の言葉
品詞の分類
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