関数値の収束
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/03 14:13 UTC 版)
「イプシロン-デルタ論法」の記事における「関数値の収束」の解説
限りなく近付くという極限の概念は、以下に示す、有限の値をとる変数の論理式だけで定義することができる。 実関数 f: R → R に対して、極限の式 lim x → a f ( x ) = b {\displaystyle \lim _{x\to a}f(x)=b} とは、 (もし)x を a に限りなく近づけさえすれば、f(x) は(必ず)b に近づく ことであった。これを ε-δ論法で定義すると ∀ ε > 0 , ∃ δ > 0 ; ∀ x ∈ R [ 0 < | x − a | < δ ⇒ | f ( x ) − b | < ε ] {\displaystyle {}^{\forall }\varepsilon>0,\;{}^{\exists }\delta >0\;;\;{}^{\forall }x\in \mathbb {R} \;[0<|x-a|<\delta \Rightarrow |f(x)-b|<\varepsilon ]} となる。これは 任意の正の数 ε に対し、ある適当な正の数 δ が存在して、0 < |x − a| < δ を満たす全ての実数 x に対し、|f(x) − b| < ε が成り立つ。 という意味の条件である。ε-δ論法による極限値の定義の妥当性は次のようになる。 f(x) が b にいくらでも近づくとは、有限値で表現すると、任意の ε> 0 に対して、f(x) が b の ε近傍に属するようになっていくということになる。そこで、ε の値に応じて δ > 0 が存在し、x が a の δ 近傍に属していれば、それを満たすということになる。 ε, δ は無限小でなく有限の値であるが、それぞれいくらでも小さい値を取れるということが極限の概念を明確に定義している。ε > 0 の一つを ε1 とするとき、ε1 に対応する δ1 を選べば 0 < |x − a| < δ1 ⇒ |f(x) − b| < ε1 を成り立たせることができるが、ε1 よりもさらに小さい ε2(例えば ε1/10)を考えると、成立しなくなりうる。しかしその分より小さい δ2 を適当に取ることで、0 < |x − a| < δ2 ⇒ |f(x) − b| < ε2 が成り立つようにできる。 否定である、極限が存在しないとは、ある ε で δ が存在しないとなる。 条件を満たすとき、正の数 δ は ε に依存する変数である。ε に対する δ は一般に1つとは限らず無数にあるが、1つでも見つければ存在を示したことになる。例えば lim x → 3 x 2 = 9 {\displaystyle \lim _{x\to 3}x^{2}=9} を ε-δ論法で考えると次のようになる。任意の ε に対して δ = √ε + 9 − 3 と取れば 0 < | x − 3 | < δ = ε + 9 − 3 {\displaystyle 0<|x-3|<\delta ={\sqrt {\varepsilon +9}}-3} ならば | x 2 − 9 | = | x + 3 | | x − 3 | < ( δ + 6 ) δ = ( ε + 9 + 3 ) ( ε + 9 − 3 ) = ε {\displaystyle |x^{2}-9|=|x+3||x-3|<(\delta +6)\delta =({\sqrt {\varepsilon +9}}+3)({\sqrt {\varepsilon +9}}-3)=\varepsilon } なので ∀ ε> 0 , ∃ δ > 0 ; x ∈ R [ 0 < | x − 3 | < δ ⇒ | x 2 − 9 | < ε ] {\displaystyle {}^{\forall }\varepsilon>0,\;{}^{\exists }\delta >0\;;\;x\in \mathbb {R} \;[0<|x-3|<\delta \Rightarrow |x^{2}-9|<\varepsilon ]} が成り立ち、x → 3 のとき x2 → 9 となることが ε-δ論法により示されたことになる。
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