Posted: 2013.03.06 (Wed) by うちゃ in
意見など
慰安婦問題について否定論者が必ずといっていいほど言及してくるのが、「戦前の日本では売春は合法であった。」である。確かに当時、売春自体を禁止する法律はなかった。では好き勝手に売春業を営んでも良かったかというと、もちろんそんな訳はなかった。
話は明治5年に遡る。この年発生したマリア・ルス号事件の裁判過程で、当時の公娼制度が奴隷制であり人身売買に当たるという指摘を受けた明治政府はこれに抗弁できず、廃娼令を出して江戸時代から続いた公娼制度を終わらせる。
いわゆる遊女の年季奉公、借金で縛って売春をさせるという行為は1872年の時点で奴隷労働であり人身売買であるという見解が出され、日本政府もそれを受け入れたという事だ。
だがこの時は公娼制度の廃止にとどまっており、廃業後の生計なども考慮されなかった事もあって事態の改善に至らなかった。日本政府としては、さすがに国内に人身売買が横行しているという状況を放っておくわけにはいかず、1900年に娼妓取締規則を発布する。これは売春業を禁止するものでは無いが、それが人身売買や奴隷労働になる事を避けるため、幾つもの規制をかけている。最も大切なポイントは娼妓となるのには本人の意思である事を証明する必要がある事、そして本人の廃業の意思を妨げてはならないとした事である。
当時売春を合法たらしめていた法律とその精神は上記のようなものであった。であれば軍慰安所が当時において合法であったと主張するのであれば、上記の法律もしくはそれに準じる法の元に運営されていたということを証明する必要がある。
最低限、本人の意思の元に就業したことが証明されていること、廃業の自由が守られていたことの二点は、「性奴隷ではない、商行為だ」と主張する以上不可欠である。
だが、私は今までその証拠を見た事が無い。本当に合法的に運用されていたなら、大量に残ってなくてはならないのだが、いったいどこに消えたんだろうね?