別名義ですけれど「夏見正隆」名義で刊行された『たたかう! ニュースキャスター』の姉妹版といって良いでしょう。
水月センセ自身もそう仰っているので。
んー、でもなぁ……。
あちらに比べて今作の主人公である戸田夏子嬢の気質が合わないかなぁ。
世の中を斜めに見すぎているというのももちろんですし、彼女自身に世界をどうしたいのか、あるいはどうあるべきなのかの信念が無いところが。
そもそも斜に構えて見せているところですら受け売り感があって、彼女の言葉とは思えないという。
オビのコピーでは「論客女子高生」とあるのですけれど、べつに論破するわけではなく場当たりの感情を押しつけているだけに思うのです。
正しさとか理屈とか、そういう理性的なものではなくて相手の隙を見つけて壊すだけの舌鋒というかー。
加えて言うなら「図書委員」であることに意味はなかったので、タイトルは「女子高生」にすべきだとも思いました。
学校の中をイメージする「図書委員」なのに、活動の大半は学外ですし。
斜に構えているのは主人公だけでなく、社会そのものを誇張して描くアクの強さはセンセらしいなーと思います。
受益者の権利が尊重され、搾取される側の主張は風に飛ばされる理不尽さ。
そういう社会をシニカルに描いてブラックな笑いを取るのは作風だと思いますけれど、そうした流れの中で読み手の視点となる主人公サイドにはあくまで一般的な感性が求められるのではないかと思うのです。
主人公までもがそんな社会に染まって皮肉めいた感性の持ち主であっては、ただただ社会が壊れていると言うだけであってどこにも救いが無くなってしまいます。
センセの既作ではそういう弱者の視点が活かされていたと思うのですけれどー……今作では違う、みたい、で。
宇宙人ウィノアと組んで戦うことになるまでが今作ではとても時間かかっていますし、本格的なそれは今後……ということなのでしょうか。
しかし仮に第1巻とするなら展開にまどろっこしい遅さを感じましたし、またウィノアとの絡みに描写不足でもあったように思います。
なんちうか……いろいろとモヤモヤ感を抱いてしまった作品でした。