もはや犯人が誰であるかなどということは物語において瑣末なことになっているところがすごい……。
むしろ本来は味方であるハズの小佐内さんのホワイダニットな推理小説になっている倒錯状態(!?)が面白いわー(笑)。
ある意味、フーダニットからホワイダニットへ変化していく推理小説の歴史において、自陣営?である側の人物の行動理由を探るというさらに一歩進んだ革新的作品なのかも!?……なんちて。
で、そんな小佐内さん。
さすがと言うべきかやっぱりと言うべきか、人を操るその手腕に衰え無し……というところでしょうか。
結局、登場人物のほとんど(すべて?)が彼女の影響を受けて動いているんですもん。
その気になれば高校のひとつくらい掌握できるんじゃないかしら、この女傑(笑)。
対する小鳩くんは今回も名推理を披露してくれますが(本人としては遺憾かもしれませんけれどー)、その推理にも一分の隙があるところがまたなんというか。
その甘さ?が中学時代に彼の鼻っ柱を折ってくれたのでしょうけれど。
推理の全体像から細部まで把握しているにもかかわらず、しかし解決に関係ない部分のひとつやふたつが謎のまま。
それを小鳩くんは「自分のミス」とか言って曖昧に済ませてしまうんですよねー。
その甘さから小佐内さんには一枚上を行かれているのではないかって気が。
しかし小佐内さんが「恐い」だとすると、小鳩くんは「酷い」かもですなー。
フリをするなら徹底的に!
相手に一分の隙も見せてはいけないのに、その努力を怠るんですもん。
相手が仲丸さんでなければ、一方的にオトコの株を下げていたところですよ。
とりあえず今回の裁定はドローってトコロでしょうか。
小佐内さんと瓜野くんは、最終ラウンドまでもつれこんだところで見事KO勝ちというカンジ。
もちろん小佐内さんが!
しかもその最終ラウンドまでもつれ込んだのだって、小佐内さんが手を抜いてくれたから……というかワザとそこまで接戦にしたワケですし。
「この子、他愛ないなって」 ヒロインの台詞じゃないーっ!(><)
ところで。
今作を読み終えてから『春期限定』と『夏期限定』を読み直したのですけれども。
堂島健吾くんと瓜野くんの違いがまさに描かれていたので驚きですよ。
健吾くんは小鳩くんが堂々として推理を披露しても、その裏付けを取る手間を惜しまなかったのですよね(『春季限定』の最後の事件で)。
これでは「迂闊」と言われてしまっても仕方がないです。
すぐそこに学ぶべき師匠がいるのに、彼はそれに気づきもしなかったのですから。
あと、見たいモノしか見ない、という瓜野くんの姿勢は
「『当然ナントカだ』と言うとき、それは大抵当然ではない」 と主張したあと同じクチですぐさま――
「誰の台詞だよそれ、ありきたりで通俗的な、つまらない警句だね」 と言ってのける小鳩くんには影すらも追いついていないなーという印象(笑)。
聡明さも狡猾さも人の動かし方も猜疑心も、足りていないという証明が。
それでいて行動力だけあるのですから、興味のあることだけ騒ぎ立てるという、まさに<小市民>……ということなのかなぁ。
今作のラストで小鳩くんは、埋もれている「ように見える」人の中にも才能ある人が居ることを知りましたけれども。
シリーズの終わりには、やぱし、<小市民>に生きることと<小市民>になることが別だと知ることになるのかなー。
ところで、これも読み返していて気付いたんですけれど。
小鳩くんってば、高校の一年生から三年生まで、その夏を彼女持ちで過ごしたことになるんですよね!
なんてリア充!!(≧△≦)
もう、<小市民>とか言えるレベルじゃない気が……。